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夢に手が届いても価値を知らない方が幸せな事もある

前回までのあらすじ:

いよいよ原稿の販売登録をする段階になって、表紙画像のアップロードがエラーになる。

トライアンドエラーの結果公式仕様が嘘だったという驚愕の事実が判明する。


 

「ではいよいよ販売登録をする」

「わくわく」

「さて、価格情報の項目だここで値段を決める。

 ページ数が491ページだから……3300円が相場というところか」

 

「は?」

「3300円」

「ちょっ……どこの専門書よ! 愛蔵版豪華装丁なの?」

「まあ利益を全く考えないなら2770円までなら値下げ可能だ。

 売れても純利益は3円だが」

「3円って…そこまで下げても高い! 売れるわけないじゃない!」

 

「もともと売れそうに無いんだからいいじゃないか」

「何でそんなに高いのよ!」

「前も言っただろ? POD出版は1冊のみの発注生産、割高だって」

「言われたけど……ここまで高いとは思わなかった」

「販売手数料と印刷費で原価となる。

 ページ数で価格が上がるから薄い本は価格が抑えられるな」

 

「売れるとは思ってないけどせめて千円台に収まらないかな」

「簡単だ、分割すればいい。

 作品が4章構成だから4つに分けて全4巻にするんだ」

「あ、なるほど」

 

 実際の所は分けたところで、その分きっちり安くなる訳ではない。

 しかしページ数が少なければ印刷代はその分低くなる。

 単価を抑えることは出来るのだ。

 

 問題は、紙本が4巻構成なら電子書籍も4巻構成にしないとうまくない。

 元々「電子書籍と紙の本どちらでも選んで買えますよ」

 と並べることに意味があるからだ。

 そう、次に問題になってくるのは電子書籍の価格なのだ。

 

 電子書籍の最適価格は諸説ある。

 沢山の人に読んで欲しいと安く設定すると、買う方は安物として読む。

 内容に価値を認められたいならそれなりの価格を設定する。

 だがもし購入者が商業小説と比較したらはたして正当な価格なのか?

 これが[価格設定のジレンマ]である。

 

 そしてここに、紙本が存在して避けようのない高価格があった場合。

 紙本として買いたいが手が届かない。

 手の届く価格の電子書籍ならとギャップ買いが生じる可能性がある。

 いやまあそんなにうまく行かないだろうけどね。

 

 別の問題としてWEB小説界隈では、PV(PageView)数ばっかり気にする。

 伸びなければ続けず、伸びれば果てしない長期連載で読者を楽しませ続けるという傾向がある。

 無駄に長く展開がそれほどでもない作品となれば、出版する上で価値と価格にまた違った意味で適切さが変わってくるのではないだろうか。

 

 サトリが分割したPDFをそれぞれ書籍化し、表紙は全て同一にする。

 

 

「できた」

「ネクパブ側でのチェックが通れば販売開始だ」

「電子書籍は?」

「とっくに販売開始してるぞ」

「これであたしの作品が誰でも買えるのね!」

「まあな」

 

 これで晴れて彼女は女子高生にして、電子書籍を4巻、紙本を4冊出版した作家という事になる。

 作品はたった一つだが。

 ただし、彼女の手になにが残るというわけでもない。

 今回は絵師へ依頼したのでむしろ大赤字である。

 

 サトリはちゃっかりと夕飯を食べて、満足そうに帰っていった。

 全てが終わり、ありがとうの感謝を述べて。

 

 ―― 二週間後 ――

 

 作品執筆中から教えて貰っていたツイッターでサトリの帰宅を知る。

 ご近所さんとはいえ、いい大人が女子高生のツイッターを覗き見れるのはどうなんだと思うが今回は都合がいい。

 話があるので来てくれとメッセージを送る。

 

 

「作家先生ひさしぶりー! 話ってな~に?」

「先月に今日が誕生日っていってただろ」

「あっ! 覚えててくれたの? 何々? プレゼントくれるの?」

「ああ、これだ」

 

 amazonのダンボールをサトリに渡す。

 箱を開けた中には……

 

 

挿絵(By みてみん)

 

「やああああん! あたしの本だ~~!」

「自慢するにも現物があった方がいいだろ? 買っといたんだ」

「嬉しいいいい! 作家先生だいすき! あ、でもこれいくらだった?」

「それ聞くのか? しめて6182円でございます」

「!? たっか! 分割前より高くなってるじゃない!」

「見せながら作業してたのに……一冊あたりはかろうじて千円台だ。

 もし、一巻を購入して気に入らなかったら続きを買わなければいい。

 分割前より損はこっちの方が少なくてすむ。 揃えると高くつくがな」

「そんな高価なものを送ってあたしをどうするつもり!」

「何でやねん、サトリは絵師依頼料も出してるだろ。

 現物は手を出しにくかろうと思ってな。 作家の情けだ」

 

 自分が執筆した作品の書籍化を夢見る、これは流行病のようなものだ。

 やろうと思えば0円で電子書籍も紙本も販売する事は可能だ。

 表紙に拘れば、依頼料が。

 手間を惜しめばサービス利用料が。

 出版した本を手元に置き実感したければ、書籍代がかかる。

 

 売れて印税が入るかと問われれば、可能性はゼロではないとしか答えられない。

 だが素人作家の自己出版本で言えば本好きの目に止まること無く、止まっても価格で敬遠されるだろう。

 もしかしたら……。

 もしかしたら夢は叶えないまま、憧れ続けていた方が幸せなのかもしれない。

 

 夢は夢のままに。

 おやすみなさい。

 

挿絵(By みてみん)

 

 <完>



最後まで読了ありがとうございました!

たま異世界転生の裏表紙はカットとして入れるか迷いましたが、表紙も裏表紙も本屋で買わなくとも見れるからいいかなと思い締めに入れさせていただきました。

もし気に入ったら評価・ブクマ・レビューいただければ幸いです。

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