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風の涙
七
深い青い空の下。
風に撫でられ、とりどりの色を波打たせる花園は、誰に踏み荒らされることもなく、かつてそこで育まれた愛を包み込んでいた。
封を切られた手紙が、花々に囲まれ、風に揺れる。
果てた生命がやがて土に還るのならば、この花園の花は、一体どんな生命を糧として、美しく優しく、そして誇らしく咲いているのであろう。
そこにいるべき少女の姿は、どこにも見当たらなかった。
天使も、堕天使もいない。
花園に建つ『地獄門』もまた、黙して語らない。
ただ――
風に揺られる手紙の隅に、誰かが落とした涙の跡が、一粒、二粒――残っていた。
―了―