『黒楽町探索』
朝方になる頃
あの異様な、地鳴りのような足音は消えていた。
こんな状況を生きていると、何だか少し地球の平穏な暮らしが恋しくなって来た気がする。
あの頃は収入、お金などは考えるが、次の瞬間の死など頭の片隅にもない日常を過ごしていたが、今はいつどうなるか分からない。
すぐ隣に死というものが、常に横にいるような感じだった。
だが不思議とそのせいで、生という実感がより強くなってるのも、事実だった。
猛烈に生きてるとでも表現すれば良いのだろうか?
一刻一刻、瞬間瞬間が濃縮されたように色濃く突き刺さる、それは今までと随分違った感覚だった。
光堂が布団から立ち上がった時には、すでにみんな起床していた。
「光堂も朝食食べるウキ、美味しいフルーツウキ」
光堂は少し、白飯に焼き魚、味噌汁が恋しくなる、と言ってもそれは、こちらの世界でも毎日食べていたのだが。
どうにも何か、地球のものと味が微妙に違ったのだ。
「みんな、よく休めた?」ミサが言った
「ぐっすりウキ」
「まさか布団で眠れるとは」多村は布団で眠れた事が相当嬉しかったようで喜びの笑みを浮かべていた。
「昼間は、僕らも外歩いて安全なの?」とマサが質問する。
「一応服装は変えた方がいいわ、あなた達二人は大丈夫だけど」
光堂もマサも、昨日おじいさんに貰ったボロボロの服を着ていたがペレーと田村は普段着だった。
「街には盗人やら、ギャング、色んなのがいるから、目をつけられたらやっかいなの、と言っても あなた達はすぐにバレるだろうけど、この辺りの住人の顔くらい、やつらも把握してるだろうから」
「そんな、じゃあどうしたらいいウキ?」
「私も今、生きてるでしょ?手はあるわ」
「あなた達は昨日の話だと、こっちの世界の光堂を見つけて、二人はもとの世界に、そしてもう二人は黒楽町から無事に出る、それが目的なのね?」
「そうだ」
「君の目的は妹を見つけて、二人でこの町を出る、そういう事なんだな」多村が言った。
「そうよ」
「良かったら一緒に協力し合わない?」ミサは四人の顔を見る
四人の気持ちは、みんな一致した。
「そうしよう」
「俺たちは仲間だ」
みんなで握手を交わす
本当は今までよっぽど心ぼそかったんだろう、ミサは瞳に涙をためている様に見えた。
「しかし、みんなこの町にどうやって入ったの?」
「えっ、どうやってって普通にウキ」
「普通に入れたよね」マサも昨日を思い返しては言った。
「この町の入り口には監視がいるはずよ、出入りするものは常にチェックされてるはず、たいがい 外からくるもの 出るものは殺されるはず 」
たまたま監視の交代時間で運よく?
それとも、何か狙いがあってわざといれられたのだろうか?
「しかし、そうなるとミサはどうやって入って、今こうして無事に生きてるのは、何故なんだ?」多村が質問する。
「私は、この町のマフィアのボスに取引したのよ、彼らがこの辺りをしきってる、入り口の監視もその一味なの」
「ここに来る前に私が会った人、この場所を提供してくれた人こそ、今のこの辺りをしきってるマフィアのボスなの」
「私は彼と接触して、多額のお金を払う事によってここに来たの、だから今も殺されずに生きてる」
「彼らは妹を知らないのか?」光堂がたずねた
「うん 黒楽町は広大なの」
一同は、まだミサの言う、この広大の本当の意味を理解してはいなかった。
「でも俺たちにはそんな大金はないぜ、もし見つかったら殺されるんじゃないか?」多村のもっともな意見だった。
「たっ、確かに もう助かった気でいたウキ」
ミサは笑った
「大丈夫よ、私の仲間には彼らは手を出さない、そういう条件よ、私と一緒にいれば、彼らもあなた達の事を殺さないわ」
「じゃあ二人は、もう帰れるんじゃないのか?」光堂の声は期待から自然に大きくなる。
「それは無理、私が外に一緒に出ないのに、彼らだけ出す事は多分しないわ、試してもいいけど入り口で射殺されるだけだと思うわ 、私が出る時は妹と一緒よ」
「そうか話は分かった。それですべき事も分かった」と、光堂は言った。
「まず俺たちはミサの妹を探す、そして四人を外に出す、その後、俺とマサは自分たちで何とか出来る」
マサも頷く。
多村は納得のいかないようだったが、今はそれがみんなを危ない目に合わせない最良の事だ。
それに、ミサの妹を探してる間に、こっちの世界の自分(光堂)の手がかりもつかめるかもしれないし。
やるべきことが分かり、少し状況が動いた気がして良かった。
「ちなみに、これが私の妹の写真」
「可愛いウキっ」
「確かにベッピンさんだ」とマサ
「じゃ、準備は良い 外に出るわよ」
「これで、ギャングやマフィアには狙われないって事だな?確かだか分からないけど」小声で多村はつぶやいた。
「そうだね、黒楽町ゆっくり見れるね」とマサ
「光堂、マサ、お前らも妹探してる間に、こっちの世界の光堂を探しとけよ」
二人を心配してくれる多村の気遣いが言葉から伝わる。
「分かってるって」階段を上がり、一同は地上に向かった。
扉を開けると
地上の強烈な光が五人に降り注いだ
「うおっ 凄い」
こんなにも太陽の光が明るかったなんて 、それはとても幻想的な瞬間だった。
光の降り注ぐ先に出ると
目の前には、霧がかかる森林
「うわーっ」あまりに神秘的な光景に思わず声が出てしまう。
「おかしな人達」ミサは笑った
「こんな綺麗な森も、夜にはあんな足音が鳴り響くウキ、やだやだウキっ」
光堂は、まだペレーの語尾にウキがつくのには何だか慣れなかった 、いまだに可笑しくて笑ってしまう。
一同は地上に出る、大丈夫と言われても、ここは黒楽町、足はかすかに震えていた。まだ、緊張はおさまらない。
「しかし、この木は異様に高いな」
光堂は、随分高く、天までそびえ立つ様な立派な木に驚いている。
「登りたいウキ」
「登れるのペレー?」とマサ
「もちろん、得意ウキ」
「そういえば車使うのか?」光堂がミサに聞く
「そうしましょう、私が運転するわ」すぐに、五人は車に乗りこんだ。
「しかし、どこをどう探すつもりなんだ?」
「今は私についてきて」
車は走り始める。
ブゥゥウ~~ンッ
今、車が走っているのは、昨日ミサに会ったであろう場所付近。
ここは、予想以上に凄い場所だ
車の中から、見える景色は異様な光景だった
道にはたくさんの人間が倒れ、中には倒れてる人間を食ってるものもいる
頭を壁にうちつけてる者や、何やら発狂して叫んでる者
円になる様に立ちブツブツ言ってる者、人々が連なり横たわってヨダレを垂れ流している光景などもあった。
「ここは歩きたくないウキ」
そこの通りを過ぎた時、ミサは車をとめた。
「降りて」
そこは、真っ黒で塗られた異様な建物
ドアを開けて入った時、四人は、死を覚悟した。
沢山の武器、そして異様な鋭い目つきの男達、そして中心に座ってる何やら貫禄のあるスキンヘッドの男
「なんだ?」
四人の足は震え、正直立っているのがやっとだった。
一瞬、頭は真っ白になる。
俺達は騙されたのか?
真ん中の男は言った
「どうしましたか、ミサさん?」
「この人達の顔を覚えて、私の連れよ 殺す事は許さないわ」
「分かりました」
意外に律儀な対応に驚いた四人。
「じゃあ、行くわ」
五人はその場から出た。
「死んだかと思ったウキ、一言言ってくれウキ」
「ごめんなさい言ったら、怖がるかと思って、これで彼らもあなた達の顔を覚えたから、別行動もとれるわ」
「さあ、車にのって」ミサが言う
そこから、車を走らせ10分くらいした所だった。
四人は驚いた ウソだろ?
何と普通の町が、目の前に広がっていたのだ。
喫茶店、カフェ、スーパー、バーまである。
犬がスーツを着て、歩いてたり、ここら辺はここの世界の元いた場所と何ら変わらなかった。
「自分達が住んでた町みたいだウキ」嬉しさのあまりペレーは飛び跳ねた。
何て、平和な光景
人々、いや、そこに住んでる生き物達は、にこやかに暮らしている。
一本裏通りのさっきの道
来る間に通って来た町からは、想像もつかなかった光景が広がっている。
「黒いスーツを着てる男達、さっきのグループの連中よ、彼らがもし、何か言って来たら、あたしの名前を出して」
「これ妹の写真。二手に別れましょう、この町の何処かに妹がいる可能性が高いの 」
「分かった」
光堂と多村、ミサとペレーとマサの二グループに別れた。
「それから遅くなると帰れなくなるわ、四時にこの場所で、時計はある?」
多村が頷く
「それからこれ?」それは携帯電話だった
「何かあったら連絡して」
分かった。
「二人とも気をつけて」マサが光堂と多村を見て言った。
「そっちもな」
「むちゃは駄目ウキ」
四人は、がっちりと握手をした。
それを見たミサは、笑っている「ずいぶん仲の良いこと」
「しかし、この街じゃ逆にこのボロボロの服、目立つじゃないか」と多村がミサを見る。
「いや、いいのこのままで」
「じゃ、また後で」
「???」
「どう言うことだ?」
「さあ」意味は分からなかったが、二手に別れ行動が始まった。
こちらは光堂のほう
「おい光堂お前達も、妹さん探しをしながら、同時にこっちの世界の、お前の情報をきき出すんだ」多村はちゃんと二人のことも考えてくれている。
多村の優しさが伝わる。
「ああ、分かってるさ」
しかし、本当に普通の街だ。
「たまに、スーツの男が立ってるな」
普通の格好をしてる者が大多数だったが、中には自分達の今までしていた様な綺麗な格好をしてる者もいる。
すると光堂が
「おい多村 今、目の前の男が隣の人の財布すったぞ」
「そういう事か、だからミサは俺達にこの格好を、俺らみたいな素人が(この街を知らない者)歩いてたら 一時間後にはスッカラカンだったな」
「なるほど、ここで生き抜く術を学ばなきゃな」光堂は笑った。
しかし、一見普通の街に見えるのに、人々が騙し合い、奪いあってるのが、何だか、悲しくもあった。俺たちが居た地球も同じだろうか?搾取し、搾取され。
そんなことを考えていた、その時だった
スーツの男が近づいて来る
なっ、なんだ?
光堂はいきなり腹にパンチをくらい、地面に倒れこんだ
「貴様ら何者だ?」
場面は変わり、こちらはミサ達
「良い匂いが沢山ウキ 幸せ ウキ」
「ペレー、ちゃんと妹さん探さなきゃ」とマサ
「分かってるウキ」
ミサは一人の男に写真を見せては、何やら話を、聞いている。
そしてこちらに戻って来た。
「ちょっとした手掛かりが、ついて来て」
向かった、そこは小さい民家
急にミサは、ドアを蹴破り、銃を取り出した。
中には一人の男がいる
「この娘を知ってる、答えなさい」
男が部屋の奥を横目で、チラッと見た。
「マサ奥、見に行って」
マサが部屋の奥に行く
その時だった、男は銃をとりだし、ミサに銃口を向けた
瞬間
パアンッ
ミサは何事もなかったように、その男を撃った。
ペレーは床に座りこみ
「みっみさ 殺人罪にとわれるウキ ウキ」声は震えている
「いい、ペレー ここには法律なんてものは ないの」
マサも発砲の音にビックリした様子だった。奥の部屋には沢山の女の子達が監禁されていた。
ミサは部屋を覗き
「居ないわ 行くわよ」
「この子達は?」とマサが
「ドアを開けとけば、勝手に逃げるわ」
ペレーもマサも、しばし呆然としていた。
「こんなに人は簡単に死んでいいのかな?」
「ダっ ダメウキ」
目の前で人が簡単に死んで行く、そんな状況に二人は、やるせなさの様な感情を感じた。
「とりあえず、今は行こう」
「そうウキね」
その時、三人は誰一人 気づいていなかった。
少し離れたところで、何者かがずっと監視している事を。
その影は、どこまでも三人を不気味に追い続けていたのだ。




