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何を憚ることもない大胆な歩き方。
男は、使い古されたバンダナを額に巻き、そこから覗く金色の髪は、まるで獅子の鬣のように無造作に伸ばされている。
その顔立ちは、精悍でありながら、どこか少年のような危うさを残し、唇の端に浮かべた皮肉な笑みは、
世界そのものを嘲笑っているかのようだった。背中には、茨のように華美な金のレリーフが施された、
古めかしい長大な狙撃銃が、その存在を無言で主張している。彼こそが、あの祝祭を血に染めた、総督暗殺の実行犯。この反乱の首謀者だった。
男は、セダスタたちには一瞥もくれず、まっすぐにブクエツの前へと歩み寄る。そして次の瞬間、2人は、まるで示し
合わせたかのように、互いの拳を荒々しく突き合わせた。ゴツリ、と骨と骨がぶつかる鈍い音が響く。だが、その挨拶は、
すぐに形を変えた。固く握り合わされた拳は、そのまま力強く上へと引き上げられ、互いの体をぐっと引
き寄せ合う、男らしい握手となる。
「やったな」
ブクエツが、短く、しかし確かな熱を込めて言った。
「ああ」
この組織のボスらしい男も、その無骨な手を固く握り返しながら、短く応じた。その2人の間には、言葉以上の、共に死線を越え
た者だけが分かち合える、確かな絆が確かに存在していた。
セダスタは、リャチとメゼキラカフの担架に乗せられた女の子を一瞥して、その男――ボスへと向き直った。
「あんただろ、この子のペンダントをあそこで撃ったの。ありがとう」
その、率直な感謝の言葉に、しかし、ボスは肩をすくめてみせるだけだった。彼の瞳には、感謝を受け取ったことへの
満足感など、微塵も浮かんでいない。
「いや、礼をしたいのはこっちだ。全員死んでくるつもりの作戦が、俺含めて何人か生き残れる結果になった」
その声は、初対面の人間に対するものとは思えぬほど、実直な熱を帯びていた。
「……まあいい、話は俺の部屋でしよう。俺はザイオーロ」
「……セダスタ」
ザイオーロは、それ以上ここで会話を続ける気はないとばかりに、一行に背を向け、通路の奥を顎で示した。その時だった。
「俺も行っていいか?」
ブクエツが、まるで天啓を得たかのように、目を輝かせて言った。だが、その希望に満ちた提案は、ボスの飄々とした一言
によって、即座に打ち砕かれる。
「口を挟まず、聞き役だけできるならな」
「……ああ、外で待ってる」
ブクエツは、一瞬で目のいたずらっぽい輝きを失うや、一本取られたという笑みを浮かべて壁際に寄りかかり、腕を組んだ。
*
ザイオーロの部屋は、元はこの都市を築いた古代民族が、司祭の部屋か、あるいは祭壇として利用していたのであろう空間
で、その設えには今なお、往時の威厳が漂っていた。
壁には、神話の一場面を刻んだであろう豪奢なレリーフが残るが、そ
の神聖な装飾は、後から持ち込まれた民族風のタペストリーや、飾りものの仮面、無数の書き込みが加えられたホリハックの地上地図によっ
て無造作に覆い隠されている。
その神聖さと俗っぽさが同居する空間で、部屋の主が狙撃手であるという事実は、壁の一角
に並べられたライフルの部品が雄弁に物語る。そして、それらの殺伐とした道具と、使い古された革のソファをはじめとす
る重厚な家具群とが奇妙に調和し、さながら秘密組織の指令室のような独特の雰囲気を醸し出していた。
一行は、その部屋のただならぬ緊張感の中で、互いの腹を探り合うように対峙していた。やがて、沈黙を破ったのは金色
の髪を持つ男の方だった。彼は、まるで値踏みをするかのようにセダスタたちの顔を順に見回すと、その唇に皮肉な笑み
を浮かべた。
「……あらためて、ザイオーロだ。この地下街『ヒーモギ』で、しがない自警団『カオッカアンフ』のまとめ役をやってる。
まあ自警団っつうのは自称で――人によっては愚連隊とかマフィアとか散々な呼び方をするけどな」
その声には、自嘲と、しかし隠しきれない自負が滲んでいた。彼はセダスタへと右手を差し出す。それは、幾多の修羅場
をくぐり抜けてきた者の、硬く、節くれだった手だった。セダスタはその手を、王族の気品を傭兵の無骨さの奥に隠しな
がら、力強く握り返した。
「セダスタだ」
「メゼキラカフと申す」
「リャチ」
「ダヒシールです」
メゼキラカフの老練な目、リャチの警戒を解かぬ鋭い視線、そしてダヒシールの無言の圧。ザイオーロは、彼らがただの
傭兵ではないことを一瞬で見抜いたようだったが、そのことには触れず、視線をソファの上へと移した。
「……それで、この嬢ちゃんは?」
ソファの上では、意識を失った少女が、人形のように静かな寝息を立てていた。彼女の存在だけが、この殺伐とした部屋
の中で場違いなほど穏やかだった。
セダスタは、どこから話すべきか言葉を選ぶように一度息をつくと、ゆっくりと口を開いた。
「いきさつを話す前に、まずこっちの説明をしないとな。俺たちは『クイバル冒険公社』。”バンガリャン
https://ncode.syosetu.com/n7119lt/9 ”のギルドだ。
あんたたちの作戦と鉢合わせたのは、誓って言うが、まったくの偶然だよ」
彼は、ザイオーロの目をまっすぐに見据えながら続けた。
「俺たちの狙いは、あんたたちが仕留めた総督じゃない。その来賓席にいた、ドゥアピーズの高官……カドローって男だ。
いや、正確に言えば、奴が連れてた『この少女』こそが、本当の狙いだった」
「ただし」とセダスタは言葉を切る。「依頼主からは、この子の正体について何ひとつ知らされてない。雛壇で見せたあ
の異常な魔力が何なのかも、俺たちにはわからない。あんたがあの時、咄嗟にペンダントを撃ってくれなければ、
作戦も、俺たちの命も、どうなってたかわからなかった。その点については感謝するよ」
ザイオーロは、セダスタの率直な言葉に、面白そうに眉を上げた。彼は腕を組むと、芝居がかった仕草で頷いてみせる。
「ほう。つまり、お前らは俺に命を救われた、と。……なら、貸し借りはなしだよな。ほっとしたぜ」
その抜け抜けとした物言いに、ダヒシールが思わず眉をひそめたが、セダスタはそれを手で制した。今は、目の前の男と
の間に、無用な波風を立てるべきではない。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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