最後はハッピーエンドに
「何よ!なんなのよ!?どうして私じゃないの?なんで悪役令嬢であるあんたがフィリベルト様に抱かれてるのよ!」
とても可愛いとは思えない形相で私をフィルから剥がそうとする。
「私がフィリベルト様と結ばれるのよ。あんたみたいな悪役は断罪されて死ぬ運命なのよ!」
私に伸ばした手をフィルにはたかれる。すると彼女は端にあるテーブルへと走った。そして何かを掴んだかと思ったら凄い勢いでこちらに向かってきた。
「君なんかにエラを傷つけさせるわけがないだろう」
魔王のような低い声で笑うフィルが、いとも簡単に彼女をいなす。そのまま彼女に手刀を落とすと、彼女は持っていたフォークを落とした。すかさずフォークを蹴り上げるフィル。
彼女は怒りがおさまらない様子でわなわなと身を震わせていた。
「ねえ、パルミナ様。あなたに夢見心地で付き従っていた彼らは、魅了が溶けた途端、誰一人としてあなたの元には残らなかったわね。それどころか元婚約者の所へ一目散だったわ。これでもあなたが一番可愛いと言えるのかしら?
魅了なんて卑怯な手を使って、ただ贅沢がしたいからと男性たちを侍らせるなんて事をしているからこうなるのよ。いくら顔が可愛いからって心が腐っていたら、それは可愛いとは言わないのよ」
フィルから離れて彼女の目の前で言ってやりたかったのだけれど、全く離れてくれないフィル。この体勢で牽制しても迫力は出ないのだけれど。仕方がないので諦める。
悔しそうに私を睨み続けるパルミナ嬢に、私は黒い笑みを浮かべた。
「ふふふ、残念だけれど、あなたはこの会場で一番可愛らしくないって事だわね。本当に残念だけれど」
「悪役令嬢め!」
睨みながら言うパルミナ嬢に、私は更に微笑む。
「ねえ、その悪役令嬢って何かしら?」
「あんたみたいなあくどい女の事を言うのよ」
「ふうん、そうなの。気に入ったわ」
キョトンとするパルミナ嬢。どうやらこの言葉は、本来は喜ぶべき言葉ではないらしい。
「ふふ、そんな悪役令嬢に負ける主役なんて……みじめね」
「このお、許さない!絶対に許さないわ!」
自分が被害者であるかのように許さないなどと言い張る彼女が、再び私に飛び掛かろうとするが、いつの間にか傍に寄ってきた騎士の二人に羽交い絞めにされた。
「こんな大変な状況に主役がなっているのに、もう誰もあなたの事なんて眼中にないようよ」
周りを見る。一瞬何事かと目を向けるが、彼女が捕まるのはわかっていたとばかりにすぐに目を逸らす。
「じゃあね、可哀想な主役さん」
その言葉に反論するように何やらキーキー騒いでいたけれど、私は丸っと無視して手を振った。
「悪いエラもいいね。なんだかたまらない気持ちになるよ」
腰を掴んだまま、私の手を取って掌にキスをするフィル。
「ふふ、気に入ったならいつでも披露するわ」
「じゃあ、夫婦になったらベッドでお願いしようかな?」
ベッドで?その言葉に真っ赤になってしまった。
「もう!」
思わず腰を掴んでいる手をつねる。
「ふふふ、ベッドで悪役令嬢が見られるのは当分先になるかなぁ」
ちっともこたえていない彼を睨むが、その表情さえもニコニコと受け入れる彼に拍子抜けして私も笑ってしまう。
「どちらに転んでも、皆様が最終的に幸せになれるといいわね」
「そうだね。私たちみたいにね」
しばらく様子を見て落ち着いた頃、いつの間にか退出していた国王様が再びやって来た。
「さあ、子ども達よ。これでこの事件は終焉だ。ここからは気持ちを新たに、舞踏会を楽しむがいい!」
国王の言葉を合図に楽団が音楽を奏で出した。
「エラ、一曲お相手願えますか?」
「ええ」
私たちは中央まで行って、誰よりも先に踊り出した。
その波に乗るように、他の方々も踊り出す。
「エラ、もしまた君の記憶から私が消されても、私は絶対に君を諦めないよ。だから何度だって私に恋して」
「フィルが私を忘れてしまうかもしれないわよ」
「私は絶対にエラを忘れない。どんなに私が君を愛しているか、この愛がどれだけ凄いか、これからじっくり教えてあげるからね」
「私だって、フィルを愛しているわ」
フィリベルト王子が周りをキョロキョロした。
「どうしたの?」
「ん?ちょっと確認。団長の稲妻が一直線に飛んで来たら堪らないからね」
そう言って顔を近付けたかと思ったら、そっと私の唇にキスを落としたのだった。




