表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ゴートの一生  作者: ケバブ
一章
15/73

外伝 農園のおやっさんは元冒険者

農園のおやっさんです。

俺の名前はギース。元四級の中級冒険者で今は農園を経営していて、皆からはおやっさんと呼ばれている。冒険者を辞めて農園を経営している理由は、とある依頼で油断から生死をさ迷う大怪我をしてしまったからだ。幸運な事に手足に障害は残らず、目立った後遺症といえば多少視力が落ち、目が霞むようになったこと位だった。そういった経緯もあって冒険者時代の蓄えを使って農園を始め今ではそれなりの規模の農園に成長した。

ただ園長が元冒険者だからか従業員も元チンピラや何かしら問題を抱えた奴が多くなったのには少し困ったが、


心の何処かで冒険者に未練があったのかもしれない。農園の経営が軌道に乗り、人手が足らなくなることが増えてきたこともあって、冒険者見習い用の依頼を出すようになった。


それからは色んな若い冒険者を見てきた。働きっぷりも様々で、一生懸命働く奴もいれば農作業なんてとてを抜く奴もいた。どちらにせよ俺は一依頼人、そいつらと深く関わる事なんてないと思っていた。ゴートに会うまでは。


そもそも初めて会った時から印象的な奴だった。冒険者には見えない格好。元農奴という経歴。働き始めればベテランさながらの手つきと人一倍の力と体力。思わず農園にスカウトしたくらいだ。

その後もゴートは結構な頻度でうちの依頼を受けてくれた。大抵の冒険者は薬草の採取とか外に出る依頼をやりたがるもんなんだが。


ただゴートと仲良くなるにつれ同時に違和感も感じていた。話すときに微笑んではいるものの思い切り笑っている所を見たことがない。一見社交的に見えるから最初は気が付かなかったがゴートは心の何処かで凄く固く分厚い壁を張っているような気がするんだ。

勿論他人がでしゃばる問題じゃないのはわかってる。わかってたんだがな。装備の相談を受けた事、あれが決定打だった。もう従業員と同じで仲間にしか思えなくなっていた。まあだからどうしたって話ではあるけどよ。

そんな最中ゴートが昇級の報告にやって来た。俺らに報告してくれたことが嬉しくて柄にもなくはしゃいじまったがな。従業員の奴らも自分の事のように喜んでたな。


宴会当日一切の問題なく進んでいた。ゴートもうまそうに飯食ってる。見ていて気持ちの良い食いっぷりだ。徐にホッブがゴートの皿に肉を馬鹿みたいに盛り始めた。そして向かいのモリーに怒られてる。あの夫婦も今でこそ立ち直っているが昔子供を無くし荒れていた。あいつらの子供が生きてればゴート位か。重ねている訳では無いだろうが無性に世話を焼きたくなったのだろう。そんなことを思っているとふと周囲が静かになっているのに気付いた。ゴートだ。ゴートが腹を抱えて思い切り笑っている。こんなに感情を表に出すゴートは初めてだ。何がきっかけなのかはわからないが確かにゴートは心の底から笑っていた。

腹を抱えて思い切り笑う。そんな当たり前の事をするゴートに無性にうれしくなった。



もしかしたらこの農園の奴等は自分の失ったなにかをゴートに重ねてるのかもしれないな。青春の時間であったり、子供の成長であったり。かくいう俺も冒険者としての何かを託してるのかもしれん。それはゴートが純真で一生懸命だからなんだろうな。ただその重ねている想いがゴートの負担になっちゃいけねえ。

だからこそ、これからも同じ街の仲間として楽しくやっていこうかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ