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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
夏は花火に海水浴
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32. 山の子供達


 ――明来達が軽自動車から降りる頃。


 桜の神様に目を付けられた事で()()()()浮遊霊となった真琴は、神田山に棲む少年少女の遊び相手になっていた。

 真琴の相手である彼等も勿論、霊。

 幼稚園から小学生の風貌の彼等は、見た目こそ幼いが彼女よりも幽霊歴は長い。

 死んでからの年も数えると、年上になってしまう程である。

 それなのに未だ隠れんぼや鬼ごっこ等の遊びを求めるのは、実際に脳が発達していなかったからか。


 この世に留まっている子供達の未練の中に、「もっと遊びたかった」というものがある。

 それが満たされた時に成仏する事ができるのだが、それを確認するのも一苦労。

 ただ隠れているだけなのか、本当に成仏したのか。食事も睡眠も必要のない彼等ならば、延々と隠れ続ける事が出来るだろう。

 それを見極める為に総出で山中を掻き分け、それでも見付からなかった二人が成仏したのだと結論を出した。


 これで残りは後五人――

 真琴が初めて神田山を訪れた時と比べ、半分以外となった子供達を眺めて、嬉しい様な悲しい様な複雑な表情を浮かべるのは彼等の兄貴分、梅宮洋平だ。


 日頃から「成仏出来るヤツはさっさと成仏しろ」と発言している彼だが、いざ居なくなってしまうとそれはそれで寂しいのだろう。


 長い事傍におり、そんな彼の気持ちが分かった東城周は一人肩を竦めた。


「みっちゃん、いなくなっちゃったね……」

「さみしいよ!」

「……きっとまた会えるよ。みっちゃんもたくちゃんも、先に逝って待ってるだけ。泣かないで、笑って会いに行こう?」

「……うんっ! わたしも、はやくじょーぶつできるようにがんばるっ!」


 瞳に涙を溜めながらも、それを落とさぬ様に笑ってみせる少女に、真琴は優しく頷いた。


 ――その時だった。


「ひぃっ!?」

「うっ、うわぁぁあん!!」


 背筋が凍る様な気配が走り抜けて行った。

 子供達は泣き出し、大人達は咄嗟に体に力を入れた――真琴以外は。

 辺りに緊張が走る中、彼女だけは何が起こったのか分からずにキョロキョロと様子を伺っていた。


「……チッ、どうやら()鹿()が居たみてぇだな」

「え? 馬鹿?」

「周、子供達を頼む。お前は……まァ今のが大丈夫っつーなら大丈夫だろうが、今日はもう帰れ。絶対ェ、寄り道すんじゃねぇぞ」

「う、うん」


 何が起きたのかは不明ではあったが、洋平に真剣な声で念を押され、おずおずとした調子で頷く。

 そんな彼女の様子に何やら考え込むと、「やっぱ――」と口を開いた。


「――明るくなるまで、ここに居るか?」

「え?」

「いやその、あのだな……」

「……うん? よく分かんないけど、真っ直ぐ帰るよ」


 何故かガックリと肩を落とす洋平に首を傾げると、家路につくべく足を踏み出した。


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