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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
3/59

3. 家族の悲しみ


 日が沈み、部屋の中が暗くなってもそのまま動こうとしない桜庭家の面々。


 真琴の父、大輔は少しでも情報を得ようと、同じことばかり報道するテレビに噛り付き、母の弥生は定まらない視線で宙を見つめている。

 優希は泣き疲れてそのまま眠ってしまったようだ。

 そんな弟に、真琴は心配の表情を浮かべると側へと寄った。


「おーい、優希? 風邪ひくよー?」

「……んん…………?」

「目も冷やさないと。起きたときにすごく腫れていると思うよー?」

「……ッ!?」

「やっと起きた」


 勢いよく身を起こすと、そのままきょろきょろと周りを見回す優希。そして姉の姿がないことがわかると、再び頬に涙が伝う。


「今ッ、姉ちゃんが……!」

「…………」

「っ!? な、なあ、誰か俺の鞄触った!?」

「……いや?」


(あ、それ私が触った。)



 優希の問いに不審がる大輔に変わり真琴が手を上げるが、もちろん彼らには見えない。

 綺麗に整頓され、部屋の端に寄せられた鞄とその中身。それを見つけた大輔が目を見開いた。


 ここにいた三人、誰も飛び出した教科書類など気にしなかった。いや、そんなことを気にしている余裕などなかったのだ。

それなら考えられることは、と三人が顔を見合わせる。都合のいい考えかもしれないが、今はそう思いたかった。



「これ、もしかして姉ちゃんが……?」

「そうよー。勉強道具は大事にしないと!」

「……あいつは、昔から綺麗好きだったからな…………」

「そこにいるの? 真琴……ッ」

「いるよ。って、そっか。こういうときは――」


 窓をがたがたと揺らしてみせた。

 家に帰るまでの間に道を聞いた者の中に、こういうことに精通した者がいたのだ。

 何かの役に立てば、といろいろと教えてもらっていた。


 その現象に三人の目が見開かれると、その後弥生が泣き始めた。


「真琴……そこにいるのね!」

「本当なのか!? 真琴!」

「わんっ! わん!」


 両親の言葉に答えるように、愛犬のモコが真琴の方を向き嬉しそうに吠えた。それで確信したのか、今度は深く頭を下げて謝り始める。


「ごめんね、真琴ちゃん。ごめん……」

「ええ!?」

「お母さんが帰ってきてって言ったから……」

「自分を責めるな。それを言うなら、あの子が遠くで働くのを許した俺にも非がある」


 悪いのはハイジャックの犯人だ。二人が謝る必要などない。

 それをどうやって伝えようかと悩んでいると、ふと花瓶に刺さったガーベラが目に入った。それを浮かせて母の前まで移動させると、上下左右に動かしてみせた。


「大丈夫だよ」

「お、おい今、真琴の声が……!」

「ええ!」

「姉ちゃん!?」

「あれ? 聞こえた?」


 声を出した瞬間、今までと違う感覚だった。

 それは三人にも聞こえたようで、それぞれ顔を見合わせている。もう一度、同じように声を出してみたけれど、今度は聞こえなかったみたいだ。


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