3. 家族の悲しみ
日が沈み、部屋の中が暗くなってもそのまま動こうとしない桜庭家の面々。
真琴の父、大輔は少しでも情報を得ようと、同じことばかり報道するテレビに噛り付き、母の弥生は定まらない視線で宙を見つめている。
優希は泣き疲れてそのまま眠ってしまったようだ。
そんな弟に、真琴は心配の表情を浮かべると側へと寄った。
「おーい、優希? 風邪ひくよー?」
「……んん…………?」
「目も冷やさないと。起きたときにすごく腫れていると思うよー?」
「……ッ!?」
「やっと起きた」
勢いよく身を起こすと、そのままきょろきょろと周りを見回す優希。そして姉の姿がないことがわかると、再び頬に涙が伝う。
「今ッ、姉ちゃんが……!」
「…………」
「っ!? な、なあ、誰か俺の鞄触った!?」
「……いや?」
(あ、それ私が触った。)
優希の問いに不審がる大輔に変わり真琴が手を上げるが、もちろん彼らには見えない。
綺麗に整頓され、部屋の端に寄せられた鞄とその中身。それを見つけた大輔が目を見開いた。
ここにいた三人、誰も飛び出した教科書類など気にしなかった。いや、そんなことを気にしている余裕などなかったのだ。
それなら考えられることは、と三人が顔を見合わせる。都合のいい考えかもしれないが、今はそう思いたかった。
「これ、もしかして姉ちゃんが……?」
「そうよー。勉強道具は大事にしないと!」
「……あいつは、昔から綺麗好きだったからな…………」
「そこにいるの? 真琴……ッ」
「いるよ。って、そっか。こういうときは――」
窓をがたがたと揺らしてみせた。
家に帰るまでの間に道を聞いた者の中に、こういうことに精通した者がいたのだ。
何かの役に立てば、といろいろと教えてもらっていた。
その現象に三人の目が見開かれると、その後弥生が泣き始めた。
「真琴……そこにいるのね!」
「本当なのか!? 真琴!」
「わんっ! わん!」
両親の言葉に答えるように、愛犬のモコが真琴の方を向き嬉しそうに吠えた。それで確信したのか、今度は深く頭を下げて謝り始める。
「ごめんね、真琴ちゃん。ごめん……」
「ええ!?」
「お母さんが帰ってきてって言ったから……」
「自分を責めるな。それを言うなら、あの子が遠くで働くのを許した俺にも非がある」
悪いのはハイジャックの犯人だ。二人が謝る必要などない。
それをどうやって伝えようかと悩んでいると、ふと花瓶に刺さったガーベラが目に入った。それを浮かせて母の前まで移動させると、上下左右に動かしてみせた。
「大丈夫だよ」
「お、おい今、真琴の声が……!」
「ええ!」
「姉ちゃん!?」
「あれ? 聞こえた?」
声を出した瞬間、今までと違う感覚だった。
それは三人にも聞こえたようで、それぞれ顔を見合わせている。もう一度、同じように声を出してみたけれど、今度は聞こえなかったみたいだ。




