13. 話し合い
翌日、朝早くホテルを出た雄太とその母は、寺を訪れていた。
昨夜の件を相談する為だ。
本来なら互いに仕事や学校に行っている時間だが、時間が経っても落ち着きを取り戻さない雄太を心配して、休みを取ったのだ。
「あの…、息子は、雄太は大丈夫なんでしょうか?」
息子の肩を抱きながら、不安そうな表情を向ける雄太の母。
相談を受けた飛鳥は、ちらりと二人の後ろへと視線を向けた。
「いや、違うんだよ。元気付けようとしたら、怖がらせちゃったみたいで」
はは、とばつが悪そうな顔で笑っているのは真琴だ。
柏木親子が飛鳥の元を訪れたと、街の霊に聞いた真琴は急ぎ駆け付けたのだった。
元気付ける? と、飛鳥が不思議に思ったのがわかった真琴は「実は、」と事の顛末を話し始めた。
話を聞くに連れて、段々と苦い顔になっていく飛鳥。それは母親にも連鎖する。先の質問に答えていなかった為、勘違いしたのだ。
ハンカチを目に当て涙を拭うと、力を込めて雄太を抱き締めた。
そこで親子を放ったらかしにしていたことに気付いた飛鳥。わざとらしく咳払いをすると、口を開いた。
「…柏木さん。まず、その霊についてですが、特に害をもたらす者ではありません」
「そ、そうなんですか!?」
「はい。ただ、その霊が現れた理由なのですが――」
デリケートな問題だ。
それに自分が関わっていいものかと、一瞬思考する。
しかしここで隠したら、彼女の努力は無駄になる。そして雄太のこれからも……
一度目を閉じ、心を落ち着かせると、飛鳥は「単刀直入に言うと」と切り出した。
「息子さんは学校でイジメにあっています」
「ええっ!?」
「今回霊が息子さんの前に現れた理由ですが、自殺を考える雄太くんを…踏みとどまらせたかったからです」
「自殺…そんな…そんな……」
ショッキングな話に、母の声が震える。
母親にだけは知られたくなかったのだろう。雄太も膝に顔を埋めて泣き始めた。
「息子さんは、まだ生きています。どうか…これからのことを考えてあげて下さい」
「これから……」
信じられないといった風に呆然と呟いた雄太の母であったが、その言葉を理解すると同時に、その瞳に強い光が灯る。
「はい!」
強く頷いた母親に、ようやく真琴もホッとした表情を見せる。
そんな母の様子に、俯いていた雄太も怖々だが顔を上げた。
「何も心配しなくて大丈夫よ。お父さんにもちゃんと話して貴方にとって一番いい道を探しましょう」
「……ん」
小さく頷いたその瞳には、先程とは違う涙が浮かんでいた。




