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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
14/59

14. 霊と除霊師


 帰り際、境内に咲く満開の桜を見上げる親子を見送りながら、今更ながら真琴は焦っていた。


 つい昨日、洋平から除霊師に関わるなと言われたばかりなのだ。

 雄太の事で一杯一杯だった頭が、すぅっと冷えていく。


 真琴自身、何かされた訳でもなく、飛鳥を嫌う理由など無い。が、蛇とマングース、ナメクジと塩といったように、霊と除霊師は相容れないものらしい。

 洋平も理由も無しに飛鳥に近付くななど言わないだろう。自身を心配しての言葉を守れなかった真琴は、ばつが悪いといった様子で顔を曇らせた。


 分かり易いその様子に、飛鳥は首を傾げる。

 先程までは先日の様に人懐っこい顔を向けていたのだ。それが急に曇った。特に思い当たることがない彼が不思議に思うのも当然だろう。


「どうした?」

「えっと…、その……ね?」


 言葉切れ悪く、しどろもどろな真琴を訝し気に見つめると、合点がいったといった風に声を上げた。


「他の霊に南雲の悪評でも聞いたか」


 疑問形でなく紡ぎ出された言葉に、びくりと肩が震えた。


「何を聞いたか知らねぇが、俺は除霊師だ。霊であるお前が近付くべき相手じゃねぇのは確かだな」


 自嘲気味に笑った飛鳥に、返す言葉が見つからない。


「柏木さんの事は、良くやったとでも言ってやる。だが、もう俺達(除霊師)に関わるな」


 そのまま立ち去ろうとする彼の後ろ姿を眺めていた真琴だが、ふとそれに気付く。

 他の霊が真琴に除霊師の悪評を告げたという事は、それを快く思っていないからだ。そんな霊から害される前に、と遠ざける言葉を放ったのだった。


「ありがとう」


 小さく呟いた言葉は、彼に届いただろうか。扉を閉める瞬間、微かに口元が上がっていた飛鳥を思い出す。きっと聞こえている。そう感じた真琴は、飛鳥が出た方とは反対側の壁から出ると、報告するために神田山へと向かった。


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