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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
10/59

10. 柏木雄太


 柏木雄太。それが藤井が言っていた少年だった。

 彼の通う学校へ着いてすぐ、学校に憑く霊たちへの聞き込みを始め、彼女のそれが杞憂でなかったことを知る。


 話を聞き終え、彼の側にいた短い時間だけでも、目撃したいじめは酷いものだった。

 毎日続くそれに、雄太は精神を病んだ。寝れていないのだろう、目の下の酷い隈に、ふらふらと覚束ない足取り。授業中も何を考えているのか、ぼうっと焦点の定まらない瞳で黒板を眺めるだけだった。


(このままじゃいけない)


 雄太の様子に、早まらないといいけれど、という片桐の言葉が頭を過ぎる。


 一人決意した真琴はその場を後にすると、近くの神田山へと向かった。



 ◇◇◇◇



 神田山の山頂付近。

 昼間だというのに薄暗いそこで、真琴はある男を探していた。


「梅さーん。こんにちはー。桜庭ですー!」


 大きな声で呼ぶのはこの山に憑く梅宮(うめみや)洋平(ようへい)。真琴に窓を揺らす方法を教えたその人だ。


 彼女の声につられてか、山で死んだ者が集まってくる。


「ねぇねぇ、梅さん知らない?」

「梅さんは今の時間寝ていると思いますよ?」

「でもシュウ兄ちゃんだったら、さっき見かけたから呼んでくるね!」

「ありがとう。ここで待ってるね」


 職場で出会った浮遊霊のアキと同じくらいだろうか、幼い女の子が東城とうじょうしゅうを目撃したという方向へと走って行く。

 大人しくその場で待つことにした真琴は、周りに集まった霊たちと話を始めた。


「ごめん、待たせたね」

「周くん。久しぶり」


 女の子の霊に連れられてやってきた周は、未だ幼さの残る少年だ。前に会ったときに年を聞いたところ、十八という答えが返ってきた。


「それで、今日はどうしたの?」

「うん…今、悩んでる子がいて、その子を励ましたいんだけど、どうしたらいいのかわからなくて…」

「そっか。……俺が相談乗ってもいいんだけど…とりあえず、今から洋平くんのとこ行こうか」

「うん? 梅さん寝てるって聞いたけど」

「真琴ちゃんが来たって聞いたらすぐ起きるって。この前もどうなったか心配してたみたいだったし」


 寝ているのに悪いと言う真琴の手を取り、山の奥へと進んでいく周。

 完全に日の光の届かない洞窟へと辿りついた真琴は、その暗さに息を呑んだ。


「ちょっと待ってて」


 そんな真琴に気を使ったのか、洞窟の外で待たせると一人暗闇へと進んでいく。

 肌寒い空気に、心細くなる。


 待つこと数分。暗闇から姿を現した洋平に、真琴はほっと息を吐いた。


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