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moment  作者: しん
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第二十一幕

ナナ―side


「ナナはん、お使い頼んでもええやろか?」

「はい」

「ほな、お願いします」

「分かりました。行ってきます」

お使いのために町へ向かう。

頼まれたものを買い終わり、休憩がてら茶屋に入る。

お茶を飲んでいると、見知った顔が入ってくる。

「あ!」


土方―side


「土方さん!」

声のする方を見る。

お茶を飲んでいたらしいナナがこちらに手を振っていた。

「使いか?」

「はい」

あ、と以前買っていた簪を取り出す。

「これ、やる」

「え?」

簪を受け取り困惑するナナ。

「総司の礼だ」

「でも、お高いんじゃ?」

「簪の一つくらい何でもない」

「あ、ありがとうございます!」

嬉しそうに胸に抱いて微笑む。

「貸してみろ」

簪を受け取り髪に挿してやる。

「どうですか?」

「よく似合ってる」

「ありがとうございます。大事にしますね」

少し恥ずかしそうに笑う。

ああ、この顔が見たかったんだ。

「この後空いてるか?」

「はい」

「良かったら、総司を見舞ってくれねぇか?」

「はい!ぜひ!」

ナナを連れて屯所へ戻る。

ジロジロと見てくる隊士たちを一喝しながら、総司の部屋に向かう。

「入るぞ」

「お邪魔します」

机に向かっていたらしい総司が振り返る。

「ナナさん!?」

物凄い勢いでこちらへ迫ってくる。

「会いたかった」

そう言ってナナを抱き締める。

「お元気そうで良かったです」

「ナナさんのくれたお薬のおかげです」

ニコニコと抱き合いながら微笑み合っている。

何か、気に食わねぇな。

「おい、離れろ」

無理やり引き剥がすと恨めしそうに総司に睨まれる。

「ナナさん、お団子でも一緒に食べませんか?」

「わぁ!いただきます」

「茶入れて来いってか」

「あ、わたしもお手伝いします」

「いい、待ってろ」

お茶を入れるために部屋を出る。


総司―side


久しぶりに会ったナナさんは、綺麗になった。

「綺麗になりましたね」

「へ!?何ですか?急に」

「そう思ったから言ったんです」

「そういうことは心の中で思っていてください」

「言わないと伝わらないじゃないですか」

ハッとしたような顔になるナナさん。

「どうしました?」

「いえ、何でも」

首を振って微笑む。

「病気になってから、ずっと外にも出られなくて退屈だったんです」

「ナナさんにも会えないし」

「それなのに、土方さんはナナさんと会ってお茶したって言うんですよ!酷いにも程があります」

「安静にしなきゃ治らないですから仕方ないですよ」

「それに、こうして一緒にいるじゃないですか」

「はい!」

またギュッとナナさんを抱き締める。

抵抗することも無く僕の背中に手を回すナナさん。

このまま、口付けして…


土方―side


「持ってきたぞ」

障子を開けると、また抱き合っていた。

「ったく、病人が発情すんじゃねぇ!」

ベリっと引き剥がす。

「良いところだったのに」

と言う総司のボヤキは聞かなかったことにして、入れて来た茶と団子を広げる。

「美味しそう!」

目を輝かせて団子を頬張るナナ。

「ふ、タレ付いてんぞ」

「え!どこですか?」

「ここだ」

と言って口元に付いたタレを指で拭い舐める。

「甘いな」

「!」

「土方さん!」

「何だよ」

「年頃の娘に何てことするんですか」

「別に普通だろ」

「全くこれだから遊び人は」

と言ってナナの口元を手ぬぐいで拭っている。

何だってんだ。

団子を食べ終え、ナナを送ろうと立ち上がる。

「もう帰ってしまうんですか?」

「はい、お使いの途中でしたので」

「そうですか」

「また、お邪魔しますね」

「はい!お待ちしてます!」

屯所を出て、会った茶屋まで送っていく。

「今日はありがとな」

「いえ、こちらこそ。総司さんとお会いできて嬉しかったです」

「そうか」

茶屋に着いて別れる。

「気をつけて帰れよ」

「はい、ありがとうございました」

ペコっと頭を下げるナナ。

総司はあいつのことが好きなんだろうな。

総司が誰かに興味を持つなんて初めてだ。

応援してやるべきなんだろうが、何か引っかかる。

「何だ、このモヤっとしたもんは」

その正体が分からないまま屯所へと戻る。


ナナ―side


「ただ今戻りました」

お使いのものを届けに台所へ向かう。

「あら、遅かったね」

「すみません、お友達に会って」

「そうかい、まあ急ぎじゃないからええよ」

夕餉の支度をする。

「ただ今戻りました~」

玄関に行き出迎える。

「お帰りなさい」

「ただいまです」

「お迎えありがとう」

「あれ?龍馬さんは?」

「龍馬さんは少し遅くなるそうです」

「そうなんだ」

「腹が減った」

「もう夕餉の準備出来てるよ」

「そうか、では広間に行ってるね」

「はい、すぐお持ちしますね」

台所に向かう。

龍馬さん遅くなるんだ。

「言わないと伝わらないじゃないですか」

総司さんの言葉を思い出す。

「今日こそ伝えなきゃ」

広間に夕餉を運ぶ。

夕餉を食べ終えても龍馬さんは帰って来なかった。

縁側でぼんやり庭を眺めていると

「まだ起きとっとんか」

「龍馬さん」

今帰ってきたらしい龍馬さんが笑う。

「少しお話したくて」

「わしにか?」

「はい」

「何かの?」

「あ、でも疲れてるようなら明日でも」

「何ちゃーない。言うてみぃ」

「あの」

「ん?」

「わたし…これからもずっとここに居たいです」

「それは、元の時代には帰らんちゅーことか?」

「…ダメでしょうか?」

「そりゃあ、わしは嬉しいがおまんは本当にそれでいいがか?」

「はい、わたし…」


龍馬ーside


「わたし、龍馬さんの傍にいたいです」

潤んだ大きな目に見つめられる。

「…!ナナさん、それは」

と言いかけたところで、

「皆さんと一緒にいたいです」

次の言葉でがくんと項垂れる。

「龍馬さん?」

心配そうにナナさんが尋ねてきた。

「なんちゃ〜ない」

「わしだけじゃのうて皆んなち言われて、少し残念じゃっただけじゃ」

ま、わかっちょったけんど…

「龍馬さん、わたし…!」

ナナさんが何か言いかける。

「龍馬、いるか?」

部屋の中から武市に呼ばれる。

「おう。ちくと待っちょれ」

「すまんの。何じゃったかの?」

先ほどの話の続きを促す。

「あ、いえ。また今度で…」

そう言って足早に行ってしまった。

何を言いかけたんじゃろうか。

もしかして…

「…いや、まさかの」

自分勝手な思い込みを吐き捨て、武市の待っている部屋へと向かう。


つづく。

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