第十幕
今日は土佐藩邸で会合がある。
龍馬さんと武市さん、以蔵、慎太さんを見送る。
「あ、武市さん腕を出してもらえますか?」
「?」
出された腕に昨日作ったミサンガを結ぶ。
「これは?」
「昨日作りました」
「ナナさんが?」
「はい。もし会合で我慢出来なくなったら、このミサンガを見て仲間たちのことを思い出してください」
「わかった。ありがとう」
微笑んで寺田屋を出る。
どうか上手くいきますように。
夕餉は武市さんの好物にしよう。
買い物に向かう。
「あ!ナナさん」
声をかけられる。
「沖田さん、こんにちは」
浅葱色の羽織を来た沖田さんが近づいてくる。
「お買い物ですか?」
「はい」
少し話をして別れる。
八百屋さんに向かって歩いていると、何だか町が活気に溢れている。
不思議に思っていると
「明日祭りがあるんだよ」
と八百屋のおじさんが教えてくれる。
買い物を終えて、寺田屋に帰る。
女将さんに祭りのことを聞いてみると、花火も上がるらしい。
「行きたいなぁ」
「誰か誘って行ってきたらええよ」
誰を誘おうかな。みんな忙しそうだし。
「ただいま戻りました」
みんなが帰ってきたようだ。
「上手くいったぜよ」
龍馬さんが教えてくれる。
「そうですか」
ホッと安堵する。
夕餉を食べながら
「今日は武市さんの好物を作りました」
「ありがとう。君のおかげで平常心を保てたよ」
武市さんが笑う。
夕餉を食べ終えて、縁側で涼んでいると
「ナナさん、隣空いてるかの?」
「どうぞ」
龍馬さんが隣に座る。
「明日、一緒に祭り行かんか?」
「え!行きたいです!」
嬉しくて龍馬さんの手を握る。
「行きたいなぁって思ってたんです!」
「ほ、ほうか」
何だか龍馬さん顔が赤い。
おやすみ、とお互いの部屋に戻る。
今日は朝から洪庵先生のところで薬の研究をしていた。
「……出来た」
やっと効果の出る薬が出来た。
「あとは、同じものを作るだけです」
「もう一息ですね」
「はい!頑張りましょう!」
夕方になるまで薬を作り続けた。
「今日はここまでにしましょう」
「はい、ありがとうございました」
洪庵先生の家を出て寺田屋に向かう。
途中で浴衣を着た女の子たちを見かける。
お祭りに行くのだろう。
寺田屋に着いて、女将さんから借りた浴衣に着替える。
玄関に行くと龍馬さんが待っていた。
「お待たせしました」
「それじゃ、行くかの」
お祭りをしている場所へ向かう。
着くと、色んな出店が並んでいた。
「わあ~すごい!こんなにたくさん!!」
色々見て回りながら歩く。
飴細工屋で立ち止まり眺める。
「わー!!すごい!生きてるみたい」
職人さんが手を動かすと飴が猫になる。
「一つもらおう」
龍馬さんが飴を買ってくれる。
「ありがとうございます」
受け取って
「何だか食べるのがもったいないです」
と大事に持つ。
「食べないと腐ってしまうぜよ」
そう言われて少し考えてから飴を舐める。
少し行くと、座れるところを見つける。
「ここで花火を見ようかの」
腰を下ろして屋台で買った食べ物を頬張る。
すると、
ドーンッ!
花火が打ち上げられる。
「わああー!綺麗」
「ほうじゃな」
花火に夢中になっていると
「ナナ」
と龍馬さんに呼ばれる。
「日本の夜明けが来るとき、わしの傍にいてほしい」
真っ直ぐに見つめられる。
胸がトクン。と鳴る。
「…はい」
ドーーン。
と一番大きな花火が上がる。
花火の光に照らされた龍馬さんの嬉しそうな顔が今も胸に焼き付いている。
祭りから帰る途中、危ないからと手を繋いでくれる。
この時代では、女は男の三歩後ろを歩くのが普通だ。でも、龍馬さんはそんなことも気にせず手を握ってくれる。
寺田屋に着いて自室に戻る。
「今日は楽しかったなー」
ーー傍にいてほしい。
さっき言われた言葉を思い出す。
わたしはこの時代の人間じゃない。それでも傍にいていいのかな。
明日は高杉さんの様子を見に長州藩邸に行こう。
そして眠りにつく。




