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最終話

 真夜中に目を覚ましたヘイデンは、身体中が汗でびっしょりになっているのに気付いた。

 悪い夢でも見たのだろうか。夢の内容は思い出せないが、あまりいい気分とは言えなかった。


「少し、夜風に当たってくるか……」


 宿から一歩外に出ると、心地よい風が全身に染み渡った。


「メイア……。無事なのか……」


 故郷の村に置いてきた妹のメイアの姿が脳裏に浮かび上がってきた。あれから妹がどうなってしまったのか分からない。普段は平静を装っているが、心の中では常に気掛かりだった。

 ふと、前方に人影が見えた。背の高い端正な顔立ちの青年だ。青年はヘイデンの姿を認めると悠然と歩み寄ってきた。


「旅の方ですか?」


 青年は尋ねてきた。ヘイデンがうなずくと青年は笑顔で話を続けた。


「どうです?この町は。かつてあれだけ若い活気に満ちあふれていたのに、今となっては老人ばかりですっかり干からびてしまった。それもこれも全部老人達のせいだ」


「どうしてですか?」


「老人達は若者が気に入らないんですよ。時代は刻一刻と変わっていってるというのに、いつまでも自分達の価値観が絶対的に正しいと思い込んでいる。だからこの町の若者達はそんな老人達に嫌気がさして出て行ってしまったんですよ」


 青年はいまいましそうに語った。


「だから私は……」


 青年の両の眼が鋭く光った。

 ヘイデンはその眼の輝きに驚いた。何かよからぬ事を企んでいるかのような、危険な色を帯びた眼つきであった。


 次の日、宿屋を出たルミ達はこの町で情報収集をすることにした。取り敢えず今自分達がいる場所がどこなのか、知る必要がある。

 ヘイデンは昨晩の青年の事を考えていた。この町で何かが進行しているのではないか。嫌な予感がする。

 ここディエリの町を回っていてヘイデンは、改めて昨晩の青年が言っていたことが真実だと知らされた。この町の住人のほとんどは老人であった。若者はまったくいない訳ではないが、その数は非常に少なかった。

 宿屋の前に再び集まったルミ達は情報交換をした。今自分達がいる町はウドガルド大陸にあるディエリの町であることが分かった。


「エルヴァーン大陸ではなかったのね」


 しかし、この大陸にもジュエルがあるはずである。ルミ達はこの町から北にあるという大きな町を目指すことにした。


 ルミ達の行く手には様々な困難が待ち受けている。

 しかし、きっと乗り越えていける。

 ルミはそう思った。

 何故ならここまで一緒に戦ってきた仲間がいるから。

 自分はひとりじゃない。

 だから大丈夫。


 いつか父に会える、その日を信じて……。



 ルミの旅は、これからも続く――。


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