第44話
ひいてはよせる波の音に目を覚ましたルミは、自分が砂浜にいることに気付いた。
「こ……ここは……?」
ルミは周りを見渡した。すぐ傍にヘイデンとロゼッタ、それからイーサンが倒れている。ルミは三人の身体を順番にゆすって起こした。
三人とも目を覚まし、ルミと同じように辺りを見回した。
船でエルヴァーン大陸に向かう途中、嵐か何かで船が遭難したようだ。ルミ一行は船から投げ出され、この浜辺に流れ着いたのだ。
自分たちは一体どこにいるのか。辺りを見ても何も分からなかった。
ルミ達は、とりあえず近くの町まで行くことにした。
ヘイデンが向こうを指差して3人に知らせる。
「あそこに町が見えるぞ!」
その男はイライラしていた。
自分達が出来もしなかった事をさも「俺たちはキッチリやってきたぞ」と言わんばかりにデカい顔をしてうそぶき、「最近の若いモンは……」と、カビが生えたお決まりのセリフで若者批判に明け暮れる老人どもに。
いや、老人という言葉すら手ぬるい。
彼に言わせれば、腰が曲がって顔がしわだらけになり、社会に何の貢献もせず不快な騒音をまき散らすだけのその存在は「人間の形をした何か」である。
男は憎悪の念を込めてその存在をこう呼んだ。
「老害」と……。
「準備が出来ました。サリヴァン殿」
「うむ、すぐ行く」
若い兵士が部屋を退出し、サリヴァンと呼ばれた若い男は立ち上がると、冷徹な笑みを浮かべた。
「これでまた一匹、老害を駆逐出来る」
若い才気に溢れたつやのいい顔が冷ややかな表情へと変貌した。
彼が町長を務めているここ「ディエリの町」は、深刻な高齢化に悩まされていた。
町の近くにある鉱山に大量の金塊が眠っているという調査結果が出たのは今から30年程前だろうか。それ以来大陸の各地から一攫千金を夢見た多くの若者がこの町に集った。
空前のゴールドラッシュである。
当時の町には老人などほとんどいなかった。老人が来たところで鉱山の仕事にはほとんど役に立たなかった。
なので、この町は若者達で賑わい、エネルギッシュな雰囲気が町全体に充満していた。
だが時は流れ、一攫千金を夢見た若者達も歳をとり、鉱山の金もほとんど掘りつくされ、あれほどまでに明るく若々しかったディエリの町はすっかりさびれ、閑古鳥が鳴く辛気臭い老いた町となり果てた。
この町で生まれ育ったサリヴァンは、かつての若々しくエネルギッシュなディエリの町を取り戻したかった。
だが、老人達が幅を利かすこの町を地元の若者達は嫌い、次々と故郷を捨て去っていった。
サリヴァンの両目が復讐の炎で燃える。
「老害は一人残らず駆除する」
ルミ達がたどり着いた町は、そんな町であった。
「とりあえず宿をとりましょう」
ロゼッタが言った。
ルミ達は早速宿屋に入った。
「おや、いらっしゃい。こんなさびれた町に旅人とは珍しい。ゆっくりして行きなされ」
親切そうな老婆が出迎えてくれた。
「ありがとう。おばあちゃん」
ルミは笑顔で老婆にお礼を言った。
すると、その老婆は、何故が両目からボロボロと涙をこぼした。
「ど、どうしたんですか?おばあちゃん」
「す、すまんのぅ、つい、家を出ていった孫娘の事を思い出したのじゃ」
老婆の話によれば、つい5年程前までこの宿屋は息子夫婦が経営していたらしい。だが、息子夫婦はこの町での生活が嫌になって孫娘と共に都会へと行ってしまったという。
「そう、だったんですか……」
「ごめんなさいね、辛気臭い話をして……、さあ、こちらへどうぞ」
老婆に案内されて、ルミ達は寝室に入った。




