第11話
「もう……、あのヘイデンって人どこ行ったの?」
ゴウレ村は狭い村なので12歳のルミでもあっという間に回る事が出来た。
しかし、ヘイデンの姿はどこにも見当たらない。
「やばっ、雨降ってきた!」
ルミは急いで近くの教会まで走った。
教会はボロボロであまり人が利用している雰囲気ではない。この教会はアナテマ大陸でもっとも信仰されているホーリー教のものである事は明らかだ。
中から人の話し声が耳に入ってきた。
「ヘイデンの妹メイアは不治の病に侵されまもなく死ぬだろう」
「それで、ヘイデンは何をしているのだ?」
「彼はメイアの病を治すため盗賊団に入り、使いっぱしりをさせられてるよ」
「なぜ盗賊団で活動する事がメイアを治す事に繋がるんだ」
「盗賊団のおかしらがどんな病気でも治してしまう秘法のポーションを持っているらしい。そいつを買う為に盗賊団で働いているんだ」
ヘイデンの妹?不治の病?盗賊団?
ルミはひらめいた。まさか、その為にわたしの短剣を?
「その盗賊団というのは例の?」
「ああ。最近ここらで幅を利かせてるガントバシ団だ」
「この村の近くの洞窟をアジトにしてるたちの悪い奴らだな」
図らずも重要な情報をつかんだ。ヘイデンはその洞窟にいるかもしれない。わたしの短剣も。
「それにしてもヘイデンは……」
声が聞こえなくなった。話者は別の部屋に移動したのだろうか。でも必要な情報は手に入れた。この村の近くの洞窟を探せばいい。
雨はやまないがルミは教会を後にした。
「きっとあれね。盗賊団のアジトって」
村はずれの小さな山にぽっかりと口を開けている洞窟を見て、ルミは慎重に近づいていった。見張りはいない。いつでも戦闘が出来るように集中しながら、中に入っていった。
酒樽が並び瓶が散乱している。人の気配は感じない。さらに奥へと進むと広間にたどり着いた。椅子やテーブルがいくつか設置されているが、やはり誰もいない。
「どこかに出掛けてるのかな?」
だが好都合だった。戦わないですむならそれに越したことはない。
ルミはどこかに父さんの短剣がないか探し回った。宝箱の中やツボや樽の中をしらみつぶしに調べてみたが、どこにも見つからない。
「もしかしておかしらって人が持ってったのかな。それとももう武器屋に売っちゃったとか?」
だがあきらめるわけにはいかない。もう一度広間を捜索した。
ふいに、嫌な気配を感じる。ルミは短剣を探す手を止めて神経を研ぎ澄ませた。
足音が聞こえた。しかも複数の。ルミは急いで近くの樽の中に身を隠した。
ガヤガヤと賑やかな喧騒が響き渡り、盗賊達が続々と広間に入ってきた。皆それぞれ適当に席についてわけのわからない会話をしながら、ある者は酒をあおり、ある者はカードゲームに興じる。
ルミは見つからない様にそーっと外の様子を伺った。いかにも悪そうな人相の盗賊達がうじゃうじゃいて、中央の一番目立つ人物が満足げに盗品をあらためている。
「あれがおかしらかな」
おかしらとおぼしき人物を樽の隙間から可能な限り観察してみると、腰の所に見慣れた短剣が見えた。
「あ!父さんの短剣だ」
ルミはじっくり確認しようとして身体を動かすと、樽を僅かに動かしてしまった。その時発せられた音を盗賊の一人が敏感にとらえた。
「おいっ!そこに誰かいるのか?」
賑やかだった広間の雰囲気が一気に殺気だった。盗賊達の視線がルミの樽に注がれた。
「ばれちゃった……、仕方ない」
ルミはゆっくりと樽の中から這い出た。
姿を現したのが女の子だったので、盗賊達はにやにやし始めた。
「迷子かい?嬢ちゃん。運が悪かったな、ここは俺たちガントバシ団のアジトだぜ」
「ル、ルミ!!」
ヘイデンの声だった。樽の中では気づかなかったけどヘイデンもこの場にいたのだ。
「なんだヘイデン。知り合いか?」
おかしらがヘイデンの顔を見る。ヘイデンはなぜこんな所にルミがいるんだという顔をしていた。
ルミは魔力を集中させていた。どうせすんなりと短剣を返してもらえないだろうから、実力で奪い取ってしまおう。




