第一話 リュースケ、異世界に立つ
それはある日、突然に彼の身に起こった。
男子高校生「日比 隆介」はいつものように授業を受け、クラスメイトとバカ話をし、放課後は所属している模型部でプラモを組んだり(その日はMGガ〇キャノンを組み立てたが最終的に実寸大ゲー〇キューブになった)、部活仲間と雑談しあったりと平凡ながらも満足感を感じる毎日を送れていた。
そしてその日も夕暮れを背に下校していた。
今日一日を振り返り満足感を感じつつもある一点を思いだして苦々しい顔になる。
昼休みの時だった。
クラスメイトと談笑していたら、ある一人がスマホを差し出し言った。
「面白いショートサスペンスだから読んでみろ」
言われるがまま読み進めるリュースケ。
内容がホラーよりでは?と思いつつ、どんでん返しがあるのかなと思い画面をスクロールしていく。どんどんホラー寄りの内容になり涙目になるリュースケ。怖いが続きが気になり指が止まらない。
とうとう最後の文を読み終えた。怖いが中途半端な終わり方だった。だが、まだ下にスクロールできる事に気づき、スクロールしてしまう。
突然だった。
急に画面が黒くなり、おどろおどろしい幽霊が叫びながら画面いっぱいに現れた。しかもバイブレーション付きである。
普通の人ならビクッとする程度だろう、しかしリュースケは違う。
大声で驚きながらスマホを地面に落として尻餅をつき、ガチ泣きするのであった。
リュースケは超がつくビビりだった。後ろからただ大きな音が鳴るだけで地面を転げ回り、小学生向けの怪談話で夜中にトイレに行くのに苦戦する。夏に誰かがガチの怪談話をしようものなら、お漏らしで地面に水たまりを作るレベルであった。もちろんホラー映画などもってのほかである。
リュースケは意外とこいつってイケメンだよな枠に入れるレベルの容姿をしてはいる。何も知らなかった女子達から熱い視線を送られることもあった。しかし彼のビビり具合を知るやいなや一気に幻滅される残念な少年であった。本人も分かってはいるので治そうとしているが治らず現在に至る。
今や、クラスメイト達から時折このような悪戯を仕掛けられ反応を楽しまれている状況である。なお、クラスメイト達もやり過ぎは良くないと分かっているので、加減はしているのだがこの始末である。
昼の出来事を思いだし、クラスメイトに怒りを募らせながら足を進めるリュースケ。目の前の十字路を右手に曲がれば家に到着するところで異変が起こった。
右の道に足先が入った瞬間、光に包まれた。車のライトなんて比では無いくらいに眩しいものだった。目も開けられず三十秒たったくらいだろうか、光が収まったように感じて恐る恐る目を開けるリュースケ。そこで目に飛び込んできた光景に絶句する。
先程まで確かに住宅街に居たはずだった、それなのに今は謁見の間のような所に居たのである。今まで直接目にしてきた建物のどれとも建築様式が異なる、石造りの空間だった。
リュースケは混乱しながらも何か既視感を感じていた。そして思い至った。これはISEKAIというやつでは?と。部活仲間とは異世界に行けたらこんなことがしたい、と会話を頻繁にしていたのを思い出し、更に周囲をよく観察する。
見ると部屋の奥の方には玉座があり、そこにはでっぷりと太った王様らしき人物が腰掛けていた。さらにその周囲には貴族のような出で立ちの人物らの様子も見え、部屋の所々には騎士の姿も見える。
リュースケは期待してしまっていた。ここから俺の無双ライフが始まるのか、異世界での大冒険が待っているのかと。
しかし、リュースケは気づいてしまう。誰も一言も発していないことに、よく見るとどの人物も顔色が異様に悪すぎることに、全員が怒髪天をついたかのような表情をしていることに。どの人も半透明で、いかにも幽霊ですという見た目であった。
更に周囲がかなりのボロボロ具合で、手入れされているとは思えない廃れ具合である事にも気づく。
嫌な予感がしつつ、恐る恐るリュースケは王様に声を掛ける。
「あ、あのすみません……ここはどこでしょうか?」
「…………………………」
ガン無視である。しかしよく耳を澄ますと周囲の人物らは何かを小声で言っているようだった。聞き取れ無い上に状況が分からないので再度王様に声を掛ける。
「あ、あの~……すみません……よろしいですか……?」
ようやく王様の口が開いた。
「許さん……許さん許さん許さん許さん許さん許さん! 許さん! 許さん! 許さん! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…………」
ぶち切れである。
どの人物も人間のものとは思えない牙むき出しの険しい顔になっていた。ふよふよと浮き出し、地面も揺れてきた。
急な揺れと王様達の変貌に驚いて、思わず尻餅をついてしまうリュースケ。この世界に来てから初めてのお漏らしもついでにしてしまう。そして目の前にいるのは幽霊の大群であると分からされた。
リュースケのそんな様子をあざ笑いながら霊達は瓦礫をリュースケ目掛け飛ばして来る。ビビりなお陰か、以前から回避能力だけは異様に高かったリュースケは紙一重で避ける。
なんてこった!もう助からないゾ♡
そんな危機感がリュースケを起き上がらせて、背面にある扉に走らせた。
その後を追う霊達。瓦礫の攻撃を躱しながら、殺意を背中にひしひしと受けリュースケは扉に手を掛けた。訳も分からないままではあるが、とにかくこの建物からの脱出を決意したリュースケは謁見の間から飛び出た。
リュースケと異世界の幽霊達との戦いの幕が上がった。
本文中にあるスマホドッキリは私の実体験をベースにしています。
その時はガラケーでしたが同じく怪文書を読み進め、画面の一番下まで行くとワッと驚かせるものでした。その時は驚いて思わず地面にガラケーを落としてしまい持ち主に怒られました……流石にリュースケほどはビビり散らかしてはいませんよ?ホントだよ?
第一章までは毎日同時刻に投稿します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後の執筆の励みになりますので是非とも”☆”や評価をよろしくお願いします。




