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薄明を告げる鐘の音  作者: 桐谷瑞香
番外編 日常の穏やかなひと時
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旅立ちのお供 (300字SS)

「じゃあ、行ってくるな。まとめて休みが取れたら、また戻ってくる」

 そう言ったお兄ちゃんはボストンバックを片手で背負って、家から出ていった。

 その大きな背中が今でも鮮明に覚えている。筋肉がしっかりついた背中が。


 あの背中を私も追いかけようとした。

 けど――



「では、行ってきます」

「行ってらっしゃい。お願いだから、戻ってきてくれよ」

「……うん」


 曖昧な返事をして、私は鞄を両手で持って家を出た。

 兄が戻らなかった中で、娘を外に出すのは両親としては不安があるのだろう。


 でも、私は行くべきだと思っている。

 自分のため、そして兄のためにも。

 兄の背中はもうない、だけど歩くのは一人でもできる。


 鞄をしっかり持って、歩き出した。

2020年4月、第63回Twitter 300ss参加作品。お題『鞄』。

本編開始直前、テレーズ視点です。

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