待ちに待ったゴールデンウィークです
パシンッ!パシンッ!
幻想郷学園の剣道場で竹刀の音が響く。
「止め!」
審判をしている真の言葉に俺と流の動きが止まる。
俺と流の勝負は1対1と均衡しており、延長戦もお互いに有効打を与えられず決着がつかないまま終えてしまった。
「流の判定勝ちだな」
「はぁ!?」
真の発言に俺は驚きの声を出した。
「おい、今俺は審判だぞ?そんな口聞くと即退場だぞ?」
「くっ・・・」
とりあえず勝負がついたのでお互いに礼をする。
「おい!なんで流の勝ちなんだよ!?」
勝負が終わり、俺は真に詰め寄った。
「岳より流の方が気迫を感じられた。もう少しだったけどな~」
「そんなしてやったぜみたいな顔されて言われても納得いかないっての!流、お前も何か言えよ!こんなんで俺との勝負をつけるつもりか?」
「ん?判定勝ちであれ勝ちは勝ちだ。俺は嬉しいよ」
そう言う流に俺はため息を吐いた。
「流石です!古郷先輩!大王路先輩!」
ヨシキは感動したのか拍手をしながら俺たちの元へ駆け寄ってきた。
「2人の竹刀さばきが速くて僕、見てるだけで感動です!」
「ははは、そうだろうそうだろう」
満更でもないのか流がヨシキの頭をポンポン叩いた。
「古郷先輩、次は私とひと試合お願いします」
見ていて自分もしたいと思ったのだろう。妖夢が俺に試合を申し込んだ。
「妖夢、俺じゃなくて流に頼んでくれ。アイツを勝たせたまま終わらせてたまるか」
「おい!?岳に頼んでるんだ。岳がやれよ!」
「後で大王路先輩もお願いします」
「お、おう、わかった」
妖夢が流にも頼んだので俺は妖夢と試合を始めた。
「やっぱり強いな、妖夢は」
流に1本を入れて勝負を決めた妖夢を見ながら俺は呟く。
俺も健闘したが1本入れられてしまった。
「まぁ、妖夢ちゃんは半人半霊だからな。身体能力も俺らとは桁違いだ。逆にその妖夢ちゃんと勝負になる岳と流がすごいと思うぞ?」
流に頭を下げた妖夢はこちらを見る。
「村岡先輩、私とひと試合お願いします」
「お?良いぜ。じゃあサクッと決着つけてくるわ」
サクッと妖夢に1本入れられた真に俺は思わず笑ってしまった。
「そういえば、顧問って結局どうなんだ?」
幻想郷学園の剣道部員は俺と真、流、妖夢、ヨシキたちの十数人だ。
前までは幻想郷学園の教頭である勇儀が顧問の代わりをしていたが、今年は顧問が変わると言うのを聞いている。
星熊 勇儀、彼女は星熊童子と呼ばれる鬼であり、赤い1本の角が特徴的だ。
背が高く、金髪ロングで体操服のような服に赤いロングスカートを履いている。
かなりの怪力を誇り、その力は学園長で同じ鬼である萃香以上と言われている。
実力と見た目から真は姐さんと呼んでいるが、俺も勇儀を姐さんとして見ている。
その勇儀であるが、今年からは顧問が変わると言うことで今剣道場に居なかった。
ただ、新しい顧問も来ないのでさっきのように勝手に試合をしていたのである。
他の部員も自主トレをしていた。
「姐さんじゃないのか~。かぁ~!姐さんが良かったのになぁ~!」
「とか言ってるけど真、お前教頭先生の胸元見てなかったか?」
「それは見るだろ!なんだよあんな大きな胸で着てるのが体操服だぞ!ボディラインが凄すぎるんだよ!あんなの反則だろ!!」
「村岡先輩、教頭先生のことそんな目で見ていたんですか?最低です」
妖夢が引き気味に言った。
「なんでだよ!?男なら惹かれるぞあれは。な?」
「なんで俺に振るんだ・・・」
俺に話を振った真だが、去年の大会では素晴らしい結果を出した。
個人戦だったので最終的には準決勝戦で流と試合をして敗れたがそれでもベスト3と、いつもベスト8くらいだった真がそこまでの成績を出し、俺と流と共に表彰式に並べたのは勇儀のおかげだろう。
「まぁ、去年真が表彰式、俺らと一緒に並べたのは教頭先生のおかげでもありそうだからな・・・」
「真は何故か好きなことになると実力を発揮するからな。あの時は真の気迫に俺も驚いたよ」
俺の後に流も続けて答えた。
「村岡先輩も凄かったんですね!」
「どうよヨシキ!俺を尊敬したか?」
「そうですね。古郷先輩と大王路先輩ほどじゃないですが」
ヨシキが真にそう言うと同時に剣道場の戸が開いた。
戸が開かれた先にいたのは、メイド服を着ている先生こと咲夜だった。
「あれ、咲夜先生、どうしたんすか?」
「貴方たちが剣道部員ですね?今日から剣道部の顧問をすることになりました」
「えぇ!?マジですか!」
真が驚いた声を出した。
「それでは部員たちを集めてください」
俺たちは新しい顧問になった咲夜の前に並ぶ。
「知っている方も居ますがとりあえず紹介を。今日から剣道部の顧問をすることになった十六夜 咲夜です。各自準備運動は行なっていますね?それでは早速素振りから行っていきましょう」
俺たちは剣道部の練習を始めた。
「確か今日バイトだったよな?」
剣道の練習が終わり、道具を片付けていると真が話しかけてきた。
「あぁ。そうだな」
俺は焼肉屋地霊殿でバイトとして働いている。
ただ、週に数日と言うよりは燐が手伝って欲しい日があったら手伝うと言った形になっている。
「3日連続だっけ?大変だな」
「ちょうど忙しいみたいでな。まぁ、ゴールデンウィーク始めだからだと思うけど・・・と、それじゃあ先に帰るわ」
「おう!じゃあな!」
「またな」
片付けを終えた俺は真たちと別れると、バイト先へと向かった。
焼肉屋地霊殿は学園から30分程歩いた所にある。
俺たちがよく行くショッピングモールとは違う所にあり、地霊殿の周りには居酒屋が並んでいた。
俺は地霊殿に入る。
「いらっしゃい・・・あ、岳さん!」
時刻は昼頃だからか、客が多くいた。
人間よりも妖怪の客が目立つ焼肉屋の店内では、2人の少女が注文を受けとり、料理を運んでいた。
その少女の内、肉が盛ってある皿を運んでいる燐が俺に気付いた。
深紅の髪を両サイドで三つ編みにして焼肉屋のユニフォームを着た少女、火焔猫 燐は皿をテーブルに置く。
名前は燐だが、皆からはお燐と呼ばれている中等部の少女だ。
「岳さん、早く着替えて来て!あたいとさとり様だけじゃ間に合わないよぉ!」
さとりも客から注文を受けており、俺も早く手伝った方が良さそうだった。
「了解!」
俺は地霊殿の奥へ入ると、バイトのユニフォームに着替えて燐とさとりを手伝った。




