待ちに待ったゴールデンウィークです2
「ご注文を確認致します。地獄の肉盛りが1つと特製サラダが1つ、生ビールが4つ、以上でよろしかったでしょうか?」
注文を受けた俺は客に確認をとると、厨房の方へと向かう。
「地獄の肉盛りが1つと、特製サラダ1つね!」
「はいよ!」
そう答えたのは厨房に入っている妹紅だった。
地霊殿で働いているのはさとりとこいし、燐、空、妹紅、俺の6人だ。
この少ない人数だが、店内は総勢80人が座れる程の広さがある。
今はほぼ満員なので燐とさとりでは間に合わないが、普段のこの時間は半分程度らしく、その時は燐だけでホール仕事が出来るらしい。
燐はよく働くなぁと感じながら客の注文を取っては料理や飲み物を運んでいった。
「いらっしゃいませ!あ!先生!」
客に飲み物を運んだ時、燐の言葉に俺はそちらを見る。
そこには幻想郷学園の先生たちが入って来ていた。
「は~い、予約していた教員15名ね!とりあえず生を15個先に頼んどくわ」
紫が燐に注文をした。
「かしこまりました!岳さん、案内お願い!」
燐がそう言うと、厨房の方へと入っていった。
「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」
「あら、岳ってここで働いていたのね。これはサービスして貰おうかしら」
「無茶言わないでください。それにしても、どうして先生方が?」
「歓迎会だよ」
萃香が答えた。
「学園長、歓迎会とは?」
「今年新しく入った咲夜先生と美鈴先生の歓迎会さ」
「あぁ、なるほど」
そう答えながら俺は先生たちを席に案内する。
案内した席に先生たちは座っていき、その先生たちの中に腰まで伸びる青いメッシュが入った銀髪で青い服を着ている先生が居た。
彼女は上白沢 慧音。リアの担任の先生である。
「慧音先生、いつもリアがお世話になってます」
俺が声をかけると、慧音はこちらを見た。
「あぁ、リアちゃんのお兄さんか。リアちゃんはとても良い子だから私も助かっているよ」
「岳~!とりあえず地獄の肉盛り5つ!」
「あと、唐揚げと枝豆、それと特製サラダを3つずつ!」
神奈子と諏訪子が注文した。
「あと、きゅうりの漬物!」
購買部の担当である河城 にとりが追加で注文する。
「はい、かしこまりました」
「お待たせしました!生ビールです!」
燐がビールジョッキを10個運んで持ってきた。
「残りもすぐに持って来ますね!」
燐は行った後、すぐに5個のジョッキを持って来た。
「以上でよろしかったでしょうか?」
「とりあえずは良いわ。また後で頼むだろうけど」
そう言う紫に俺はかしこまりましたと伝えると厨房へと向かった。
「それでは、今年新任してきた咲夜先生と美鈴先生の歓迎会をはじめま~す!かんぱ~い!」
『乾杯~!』
先生たちの席からそのような声が聞こえた。
「なんだ?先生たちが来てんのか?」
妹紅が俺に尋ねる。
「あぁ、事務の先生たちまでな。とりあえず注文のやつ頼む」
「了解!」
「岳~!」
先生たちの席から声が聞こえた。
「は~い!ただいま!」
俺は先生たちの席へと向かった。
「生4つと、ロックワイン2つ、あと熱燗が2つね」
「かしこまりました」
俺は先に生ビールとワインを運び、その後に熱燗を運んだ。
運んで来る間にもおつまみなどの注文を受けた。
「岳~!」
「は~い!ただいま!」
「岳~!」
「は~い!ただいま!」
このやり取りをどれほど繰り返しただろう。
「岳~!」
「は~い!」
「岳さん大変だね・・・」
注文を受けにいく俺を見て燐が呟いた。
「ご注文は・・・」
「あぁ、注文じゃないのよ」
紫が答える。
「・・・じゃあ何で呼んだんですか?」
「岳って誰か好きな人居るの?」
「・・・何でそんな事を聞くんですか?」
「だってぇ、学園での恋愛は学園長の判断で自由でしょう?あんなに選り取り見取りの女子が多い学園で好きな人居ないのかしら?」
「確か流は1年の鍵山 雛と仲良いよな?あの2人は付き合ってるんだろ?」
「えぇ!?そうなのですか!?知りませんでした」
諏訪子の言葉に1年の副担任である華扇が驚きの声を上げる。
「仲は良いでしょうね。昔からの知り合いらしいですし。まぁ、流はどう思っているかわかりませんがお似合いなのは確かですね」
俺の言葉に先生たちから「きゃ~!」と返答が返る。
「真は・・・」
「真はいいわ。全員が俺の嫁とか言いそうだから。問題は岳よ。ねぇ、誰か居ないの~?」
「「早苗だろ?」」
神奈子と諏訪子の声が重なった。
「そういえば岳!婿入りの件はどうなった!あれから話の答えを聞いてないぞ!」
あぁ・・・始まった・・・
俺は思わず頭を抱えた。
てか、どうして先生たちでコイバナが始まってるんだ・・・
いや、最悪話をするのは許すが、俺を巻き込むな。
「え?え~と・・・」
頼む!どこからか注文が来てくれ!
「すみませ~ん」
俺の思いが通じたのか客のどこからか注文の声が聞こえた。
俺はその注文を受けようとしたが
「はい、ただいま!」
燐がその注文を受けてしまった。
おりぃぃぃん!!
「おい、岳!どうなんだ?婿入りする気になったのか?」
「え、その・・・」
「何?その話」
気になった先生たちが神奈子と諏訪子に尋ねようとするが、それを止める先生がいた。
「まぁまぁ、彼も働いているんだから私たちが彼を独占するわけにはいかないだろ?ほら、先生たち、酒が空いているよ」
先生の中で唯一の男性である霖之助が他の先生たちに言う。
クセ毛が目立つ白髪でメガネをかけている霖之助は半妖であるらしく、見た目とは違いかなり長く生きているらしい。
彼は事務担当教諭であり、何か困ったときには度々彼の元を訪れていた。
主に霊夢や天子などの女関係の相談であるのだが、親身になって聞いてくれる彼を俺は兄として慕ってもいた。
「・・・お酒のおかわりは?」
「頼むわ」
「私も!」
酒のおかわりが欲しい先生たちが手を挙げる。
「かしこまりました」
俺は言うと先生たちから離れた。
離れる時に霖之助と目が合い、俺はこっそり会釈をすると、彼は小さく手を挙げて応えた。
先生たちはそのまま飲み続け、ほろ酔いになりながら帰って行った。
「ふぅ・・・」
客も落ち着いて、俺はスタッフルームで休んでいた。
「お疲れ様、岳さん」
スタッフルームに燐が入って来た。
「あぁ、一部の客のせいで酷く疲れた。でもお燐程じゃないけどな。やっぱり休日とかはこんなに大変なの?」
「いや、今日は特に忙しかっただけだよ。岳さんや妹紅さんが手伝ってくれて助かったよ」
「妹紅はともかく俺は手伝いみたいなものだからな。正直それでも働かせてくれるお燐たちには感謝だよ」
妹紅と違い、俺は働いていても週に1日出れるかといったことが多い。
燐から手伝って欲しいと言われた時は手伝っているが、その場合は燐でも対応できない時などが殆どなのであまりない。
「いいよいいよ!だって岳さんを地霊殿に招待したのはあたいな訳だしね!」
俺に地霊殿で働いてみないかと言ったのは燐だった。
当時、生活には困らなかったが、親の仕送りに頼りっきりになるのが嫌だと思った俺はバイト先を探していた。
しかし、放課後は剣道、さらに長い間妹を1人にするわけにもいかなかったので学園が休みの日で決めようと考えていたのだが、それだと遊ぶ日がないだろと真に言われてどうしようか悩んでいた時に、たまたま通りかかった燐が求人雑誌を見ていた俺に声をかけ、そこから俺は地霊殿で働き始めたのであった。
妖怪のお客が殆どで、初めはここで働いていけるのかと心配したが、その心配は杞憂に終わり、こうして今も働いているのである。
「さて、休憩も終わり!再開しようか」
「了解」
その後、俺は燐やさとりと共にホールの仕事に取り組んだ。




