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まこらみみらせ  作者: しげしげ
41/42

第四十話 「ナオイちゃん。」

第四十話 「ナオイちゃん。」



「ミケツ様っ! もっと、もっと離れてください! こっこの娘はっ、きっ危険ですッ!」


「え〜っ! なんでや〜!」


オレの部屋に、全員集合だ!


だが、何でお前がオレの部屋に普通に上がり込んでんだ?

幸詠さんや春名先生、ソフィーさんは良いとしよう、だが、何でお前はいつもいつもそんなに図々しいんだ!? 毎度、ビックリだよ。


「玉江ちゃん、なんでそんなにビビってんの? ナオイちゃんだろ? 怖くないよ。」と言う上島。


猫娘はなぜかナオイちゃんを露骨に警戒している。


だが、上島! おまえは何なんだ!?


「⚫⚫上島、お前は座布団運びだ! 座布団持って来い!」と、仕事を与えてやった。


「!? 何だよ、座布団運びって?」


「おまえの仕事だよ!」


「なんで座布団な⚫⚫」オレの部屋には今、ナオイちゃんがいる、そしてみんな揃ってこう言う、「ナオイちゃんですよね、もちろん知ってますよ。」と、だ。


「オレの部屋には座布団な⚫⚫」そして、オレがみんなにナオイちゃんの事を聞いて回った事、その時はナオイちゃんの事などこれっぽっちも憶えていなかったのに今になって憶えている。


記憶が昼間とは逆になっている。「おい!聞いてんのかっ!城し⚫⚫」


「座布団一枚持ってこい、山田くん。」


だが、その記憶はこのクリスマス柄の手袋など、貰ったあの日からだ。


「おいっ!山田くんてだ⚫⚫」それと、なぜ、今ここに、ミケツ様や幸詠さんまでもが居ると言う事なのだが⚫⚫「お前っ!山田くんて、」


ただの偶然だろうか? では何しに来たのだ? まさか遊びに来たのか!? そーなのか!? ⚫⚫じゃあ、何して遊ぼうか? やっぱりトランプかな?


「座布団一枚! トランプも持ってこい!」「はあ〜っ!? 笑点のこ⚫⚫」幸詠さんはトランプをやった事あるのかなぁ⚫⚫、いや、まて、なんの話だ!?


何だっけ?⚫⚫あ! そうだ! ナオイちゃんだよっ!


幸詠さんはナオイちゃんの事を初めから分かってるんじゃ!?


みんな猫娘のコタツを囲んで座っている。


くつろいでいる。


「⚫⚫幸詠さん、あの、ナオイちゃんの事なんですけど⚫⚫」と、オレは聞いてみた。


「何かしら?」といつもの感じに答えてくれた。


「幸詠さんは、ナオイちゃんを知ってますか?」


すると幸詠さんは「ええ、以前から知ってるわ。」


なんと!


幸詠さんは以前から知っていると言うのか!?


「じ、じゃあ、アンドレさんの事も知ってますか?」と聞いてみた!


「ええ、もちろん知ってるわよ。」


なんとっ! 驚いた事にアンドレさんまでも知っている!


さすがです、⚫⚫幸詠さん。


⚫⚫⚫幸詠さんは、知っていた。


「じゃあ⚫⚫、」


「何かしら?」


「じ、じゃあ、⚫⚫⚫ナオイちゃんはもしかして⚫⚫」


「何かしら?」


「もしかして、⚫⚫そのぉ、幸詠さんやミケツ様と同じでは、」と、ゆっくり慎重に、ちょっぴりドキドキしながら聞いてみた。


「わたしやミケツ様と?」と、聞き返す幸詠さん。


まだ、言葉が足りないというのか!? 察してほしいところだがっ!


「そ、そのぉ、ナオイちゃんは神様ぁ⚫⚫的なぁ、方だったりするのかなぁ〜、と、思うんですけどぉ⚫⚫,」


「ナオイちゃんはね、⚫⚫⚫えっと〜、 そおなのぉ? 知らないわあ!」と、言う幸詠さん。


⚫⚫⚫どゆ事?


違うってーの? じゃあ、ナオイちゃんは普通の人!?


「じゃあ、アンドレさんは!? ⚫⚫普通の人なんですか?」


「アンドレさんはね、⚫⚫⚫えっと〜、 どこのどなたでございましょうか〜?」と、おフザケぎみに答える幸詠さん。


「幸詠さん! ⚫⚫ぼくは真面目に聞いてるんです!」


「あれ〜!? おっかしいわね〜、知ってると思ったんだけど〜、不思議ね〜、知らないわ〜、どーしてかしらぁ〜?。」と言う幸詠さん。


⚫⚫⚫これは!


大変な事なのかもしれない!


あの幸詠さんが⚫⚫


現在、この玉村で唯一、頼りになる神様が⚫⚫⚫


知らない。


どーゆう事だ? 幸詠さんを差し置いて、なぜオレはすべて憶えている? このオレだぞっ! 結構 馬鹿だぞっ!(自負しています。)


⚫⚫いいのだろうか!? でわっ、あのアンドレさんは、いったい⚫⚫⚫


幸詠さんは、この村では唯一、大人な会話が成り立つ神様⚫⚫


その幸詠さんの記憶までも消し去る事の出来る神様⚫⚫⚫、いや! 操作する事が出来ると言うのか!? アンドレさんはっ!!


⚫⚫⚫アンドレさん、


いったい何者なんだ!?


やはり神様⚫⚫、


⚫⚫神様と思いたい。


あの姿であの喋り方、妖怪!悪魔! なんて言われた日にゃあ、そりゃあんた!


怖いと言う以前の問題っ! いやっ! それ以前っ!! 問題と言う以前の問題だッ!!


なぜオレはあの、アンドレさんを前に会話が出来たのかっ!! 不思議なくらいだっ!!


まずっ、会話が通じる人には見えないっ!


例えるなら、海賊に捕まったオレが、懐中電灯一つを持たされ、真っ暗な大海原に 突き落とされたようなものなんだッ!!


わかるだろうかっ? 例えが悪いかな?


当然っ、懐中電灯を持たされたのだから、ライトをつけろと言う事だからライトをつける!


ポチっとな。


するとそこに映し出されたのは巨大なサメっ!! ジョーズだッ!! オレを見ながら数メートル目の前を泳ぐッ!! もう死んだッ!! おれは当然パニックをおこしっ、溺れてしまうッ!! もう死んだッ!! 生きててももうッ死んだッ!!


ハァハァハァハァ⚫⚫、ハァハァ⚫⚫、想像だけで溺れそうだった。


「城島ぁ、おまえ、発情期か?」山田くん。


「この変態っ!」と、猫娘。


⚫⚫分かるだろうか?


このヘンタイ、あ、いや、この恐怖。


アンドレさんとはそのような人なのだ。


⚫⚫これが妖怪だったらと思うと、


⚫⚫⚫想像を超えてしまっています。


「城島ぁ、おまえ、顔が変だぞぉ〜、アハハハー!」


⚫⚫どこかでバカがバカ笑いしている。


出来ることなら何卒何卒!か、み、さ、ま、でぇお願いしたいところでありまあーすッ!


アンドレ様ぁーッ!


「おい、今度は手を合わして拝んでるぞっ!」


「城島さん、城島さん、」と、幸詠さん、


「あ、⚫⚫は、はい!」


「わたしに願い事かしら? わたしに出来る事なら叶えてあげるわ。 だけどお安くないわよ。」


「え!?」お安くない?


⚫⚫お金、払うって事? おいくら?


⚫⚫マッチが一箱、千円するんなら、幸詠さんなら更にお高い?


⚫⚫え〜っ!! マジですかあ〜! ボッタクリはもう懲り懲りですよ〜!


「もうちょっとお安くなりませんか?」そんな話しをしているんじゃないだろ! オレっ!


「城島さん、城島さん、」


「は、はい、」


「さっき、わたしの家に行ったでしょ。」


「え!? はい、なんで知ってるんですか!? さっき、⚫⚫家に居たんですか!?」


「居ないわよ、さっきからずっとここに居るんだもん。」


⚫⚫⚫どゆ事?


「じゃあ、⚫⚫何でぼくが幸詠さんの家に行った事を知ってるんですか!?」


これもやはり神業なのか!?


「あと〜、三途の川に落ちかけたでしょ〜、フフフフ。」


「三途の川!? ⚫⚫虚化の淵、の事ですか?」


「あら! 虚化の淵なんて、そんな恐ろしい事、よく知ってるわね〜、さすが城島さん。」


「え!? いやあ〜、大した事ないっすよぉ〜! ハハハハハハ。」褒められたぞ!


「危なかったわね〜、一歩踏み出すとこだったものね〜!」


と、幸詠さん、⚫⚫⚫まるで見ていたかのように言ってるように聞こえるんだけど⚫⚫


「あ⚫⚫あの、⚫⚫もし、ぼくが一歩を踏み出してたら⚫⚫どうなってたんでしょうか?」


⚫⚫雨宮は、この世の崖っぷち、戻ってこれない⚫⚫と、言っていた、


⚫⚫幸詠さんがもし、神の力でその一部始終を見ていたとするなら、


⚫⚫⚫なぜ、危険だと教えてくれなかったのだ?


「わたしもよく知らないわ、だけど、」


「⚫⚫⚫だけど、何ですか?」


「城島さんは、初めからこの世に存在しない事になってたわ、フフフフ。」


フフフフって⚫⚫笑ってますけど、冗談に聞こえません。


だけどこのフレーズ、以前にも聞いたことがある、


⚫⚫それはアンドレさんの言った言葉だ、


あの人が、もし仮に幸詠さんの様に玉村に存在する神様と考えた場合、


⚫⚫あの川、あの虚化の淵を作り出したのはアンドレさんと言う事にならないだろうか⚫⚫、


⚫⚫⚫アンドレさんはオレを、


⚫⚫⚫落とそうとしたのでは「虚化の淵とはね、」幸詠さん、


「は、はい、」


「この世の終わり、最期に行き着く場所、三途の川は知っているでしょ、」


「はい、⚫⚫あの世とこの世の境にある川、」それは仏教思想の言葉で八百万の神にも当てはまることなんだろうか。


「そうよ、あの世に行くには川を渡らなきゃいけないの、渡れなかった人は、三途の川に流されて、虚化の淵へと向かうのよ。」


生きてても三途の川に落っこちるのか?


「だから、落ちなくて良かったわね、城島さん。」と、幸詠さんはニッコリと微笑んではいるが⚫⚫、


恐ろしいですよ。


「だけどオカシイわね〜、」と、幸詠さんが言う。


「え? 何がですか?」


「だってぇ、あのお屋敷はわたしのおうちよ、誰が門を開けたのかしら?」


春名先生が話しかけた、「あの⚫⚫、以前、幸詠さんの家の、門の前で、たまにですが見かける小さな男の人って事はないんですか?」


「⚫⚫ああ、それってぇ、コン太の事ですか?」オレ、


「あの子が開けていいのは小さな門だけよ、それに大っきな門はわたし以外は開けられないはずなんだけどぉ⚫⚫、誰かしら、失礼しちゃうわ。」


「泥棒かもしんねーよ!」と、上島のバカが幸詠さんにタメ口だ。


「無理よ、さっきも言ったけど、あの門はわたし以外は開けられないし、壁を乗り越えて中に入る事も出来ないのよ、フフフ、スゴいでしょ〜。」


「え!? そうなんですか!?」と春名先生、


幸詠さんにしか開けられない門、やはり神がかりか!


「ええ、そうよ、だけどあの娘なら開けられるわね、フフフ。」フフフ?


「⚫⚫あのこ?」春名先生。


「ええ、あの娘。」


「あの子って、誰? みんな知ってる人?」と、上島、お前は分かってて幸詠さんにタメ口なのか!?


と、その時! 「ガチャ!」 戸が開いた!? 途端に冷たい風が部屋の中に、入って来た!


戸口の方を見ると、小さな人影「⚫⚫コン太ぁっ!?」


「お〜い! 幸詠姫ぇ〜、迎えに来たぞぉ〜!」と、コン太。ビビってるくせしてお前もタメ口か。


「あ! そうそう、忘れてたわ! 今日、お客さんがうちに来るんだったわ!」


「市姫が腹減ったから、何か食わせろって言ってるぞぉ〜!」


「じゃあ、わたし帰るわぁ。」と、言ってその場から立ち上がった、


⚫⚫幸詠さん、クロっぽいスカート履いてる、それに黒の、なんて〜の、タイツ? ストッキング? オレは男だから分かんないけど、細い足だぁ⚫⚫、


幸詠さんはどこからともなくクロっぽいコートを出し、身に着け、どこからともなくクロっぽい帽子のようなのを頭に被せた。


あまりに自然だったから気づかなかったが、手品師みたいだ。


この前は、白の着物を着ていて全身真っ白だった。死に装束に見えて、おっかなきれいだったが今日は黒の帽子に黒のコート、スカート、それに黒のタイツ、これはまさに、電車乗って宇宙を旅するあのキャラ、


そう、メーテル! ああ! こんなにもメーテルしている!


⚫⚫メーテルさんだ。


「幸詠さんて、松本零士のメーテルだよな。」と、上島がためらわずサラッと言いやがった! さすがアニメオタク! それにしてもなんでタメ口なんだ!?


「城島さん、城島さん、」


「は、はい」


「市姫が三途の川を創り出したんだわ、きっとそうね! 城島さんはその川に落ちかけたの、危なかったわね城島さん、フフフ。」と、笑ってメーテルさんは帰って行った⚫⚫⚫、笑うとこですか? そこ。


どやって帰るんだろうか? 歩いてかな? 銀河鉄道かな? コン太、お前はサイズ的にもテツローだな、古すぎるかな。



「⚫⚫だけどその、市姫さんてぇ⚫⚫、誰?」とオレはつぶやいた。


「あんた、この前教えたでしょ!」ナオイちゃんにビビりながらもミケツ様に隠れて、上から目線の猫娘。


「市姫って言ったら、川の神、三姉妹でイッチバン大きな力を持つ女神様よっ!」


猫娘が言うには、「とっても怖い女神様よ!」 と、言う事らしいが、その前は幸詠さんにも同じ事を言っていた、こいつは女神様全般に怖いらしい、ナオイちゃんを見ててもそう思う。


⚫⚫コン太も幸詠さんを怖がっているが、獣系妖怪はビビる程に女神様が怖いらしい、態度に出る様だ。(何度も言いますが、猫娘は妖怪ではありません。コン太はもうどっちでもいいです。)


「市姫さんて、タキちゃんのお姉さんの事かしら?」と、春名先生、


「そうですよね! あの素直で可愛いタキちゃんのお姉さんなら、」


いや待てよ、じゃあなぜ、門を開け、その先に三途の川があったんだ?


あの時、雨宮が、黄昏さんがいなかったらオレは落ちていたもしれないんだ⚫⚫


それに幸詠さんは、オレが落ちかけた事を知っている、


⚫⚫オレはいなくても構わないって事なんだよな。


⚫⚫三途の川が流れ着く場所は、虚化の淵⚫⚫、


⚫⚫⚫蔑視や悪意がある、と思って


そんな事を考えていた時、ミケツ様の視線を感じ⚫⚫⚫


オレから目を離さないでいるミケツ様のその視線に、オレは魅入ってしまった⚫⚫⚫


⚫⚫八歳児の視線にだ。


その瞬間から時間が止まっているかのように、オレの心は穏やかとなり、そして集中力が保たれていった。


心の中がいっぺんに洗い流され軽くなっていく、⚫⚫気のせいにはなるのだろうが、花の香りと静かな風が体の中と外を通り抜けるような感覚を得ていた。


そうだ!


信じなければいけないんだ!


神を信じなければ、それは神でなくなる!


自分の事より、優先されるべきは神様だ! 何を疑う!?


オレはあの淵から落ちてなんかいない! 大丈夫、


それに、開かずの門が開いたのも、敷地に入る事も、それは幸詠さん側の判断にあるのであって、許可なく入ろうとしたオレの方が悪いんだ!


オレは冷静だった。


三途の川が市姫によるもので、虚化の淵が仮に、アンドレさんとしても、それはそうであって、オレが否定や批判をするものではない、なぜなら、その世界は恐ろしくもまた、神の世界の一部であるのだろうからだ。


⚫⚫⚫たぶん、よく捉えれば、オレは試されているのかもしれない。


何を?


,⚫⚫それは分かんない。


幸詠さんが帰った後、春名先生やミケツ様、ソフィーさんも帰って行った。



だかしかし!


⚫⚫⚫ここに小さなナオイちゃんがコタツに入ってオレを見ている。


⚫⚫眠たそうだ、


時計を見れば夜の九時を回っている。


ナオイちゃんは春名先生の家に行くのもソフィーさんの部屋に行くのも、首を横に振って拒んだ。


だからオレの部屋に泊めることになった。


何故だ!? 何故、オレなのだ!? ⚫⚫分からない。


オレはナオイちゃんに、オレの布団で寝るよう言った。


⚫⚫オレはと言うと、またストーブの前で丸くなって眠るとする。


猫娘はミケツ様からここにいる様にと言われ、「嫌ですっ嫌ですっ!」と、泣きながら懇願するも、あっさり「ここに居やし。」と言われ、すっかり燃え尽き、灰となっていたが、少し回復したのだろう、普段使わないキャットタワーの一番上で丸くなり、ナオイちゃんに睨みをきかしていた。


そのナオイちゃんはオレの、ずっと干していないぺったんこで冷たい布団の上で、もう眠っている。


⚫⚫ああ、パジャマを着ている、キリンとクマとネズミと向日葵なんかの小さな柄の入った黄色いパジャマを着て、ナオイちゃんは眠っている。


⚫⚫そのパジャマはどーしたんだろぉ? 春名先生から貰ったのかな?


静かに仰向けのままで寝ている、⚫⚫寝相が良い、

女の子とはこんなに寝相が良いものなのか!?

寝返りをうたないと眠れないオレとは偉い違いだ! 感心してしまう。


⚫⚫可愛い、ああ、お父さんとはこんな気持ちになるものなのか? いや、これが萌、と言うやつなのか!?


⚫⚫なんであれ、カワイイ。


と、思っていたら、「あんた、なに幼女をマジマジと見てんのよ、変態なんじゃないの!?」


と、猫娘は完全復活したのか、キャットタワー最上階からピョンピョンと降り、コタツの中へと潜り込んでいった。


「なあ、猫娘⚫⚫」


⚫⚫声はかけても返事なし。


「⚫⚫⚫アンドレさん、知ってるか?」と、もう一度、聞いてみた。


「⚫⚫⚫⚫」


あたりはもう、とっても静かだった。


そして、ナオイちゃんの寝息だけか聞こえていた。



まだ推測だけだが、ナオイちゃんとアンドレさん、この二人は神格だと思われる。


今分かる神格の神業(かみわざ)は、


⚫⚫アンドレさんには記憶の操作、もしくは全てを消し去る力があるものだと思われる。


それと、アンドレさん自身が言ってた事に、"初めから無かった事に出来る"、つまり、その人が生まれた事実や家族間の思い出、記憶、その人に関わる全ての事柄、物理的な事も、国へ届けられている戸籍や書類上の物までもがすべて、跡形も無く消えてしまうと思われる事。


⚫⚫⚫それは、とても悲しく、恐ろしい事だ。


オレが想像するアンドレさんの神業が本物なら、それはこの玉村に限られた範囲ではなく、日本全国規模、それどころか世界規模かも⚫⚫、いや、これは日本の神様だと考えるべきだろうから、それは考え過ぎかもしない。


よく考えなくても、雪の降る真冬の玉村に、裸足のまんま居ること自体がおかしい、普通なら数時間で凍傷になるだろう、だが、ナオイちゃんの小さな足には傷一つなく、キレイなものだった。


今、こうして眠っているナオイちゃんの寝顔に、しもやけの跡すらもまるでない、それは何処かのお嬢様のように健康的な寝顔だった。


仮に、ナオイちゃんも神格だった場合の神の力、⚫⚫それは今のところ、分からない。



次の日、月曜日、


⚫⚫そう言えば、


ナオイちゃんの枕元に、この前春名先生から頂いたダウンジャケットやクリスマス柄の手袋や靴下、全てが置かれていた。


⚫⚫これは一体? 誰が持ってきたのだろうか!?


いつ!?


⚫⚫鍵はかけていない、ないからだ。付けよう付けようと思って、年末となってしまった。


なんにせよ、村には泥棒がいない、代わりに上島がいるくらいだ。それと番犬代わりの猫娘がいるが、あまり役には立たないと思われる。



終始大人しいナオイちゃんと学校へ行くこととなった。


赤のダウンジャケットに赤の長靴、靴下とお揃いの手袋をつけて、小雪舞う登校となった。


ナオイちゃんは長い髪を後ろで束ね留めていた。


雪がナオイちゃんの頭の上に降りかかる、帽子が要るよな、と、思った。


少し緊張した面持ちで、オレの後ろ側へと隠れるように歩いてついて来た。


職員室に入ると、「あ! 先生が来た!」と、誰かが言った。


またも、ほぼ全校生徒が職員室に集まっていた。


春名先生は使い古しではあるが、ナオイちゃん用の教科書と新品のノート、鉛筆、消しゴムなどを用意してくれていた。ほんと、気のつく春名先生だ。


見るものすべてに目をキラキラ輝かせるナオイちゃんは、ほんとに素直で可愛い女の子だ。


そして、今日からナオイちゃんはオレのクラスの生徒となる。


席は、しっかり者の松本百合子の隣とした。


と、言っても今日はクリスマスイブ、明日は終業式、二学期もこれで終了となる。


で、いろいろ手順を無視する玉村には、まあ、ある程度は慣れたが、お父さんだろうアンドレさんを抜きに考える訳にはいかない、なので、


「今日、もう一度、ナオイちゃんの家に行ってアンドレさんに会ってきます。」と、言うと、ナオイちゃんが「居ないとかもしれない。」と言っていた。


この日は昼から公民館で明日のクリスマスパーティーの準備をする予定だったので春名先生には、「用事が済み次第、公民館に向かいます。」と言っておいた。


ナオイちゃんの家に行ってみると、この前、源さんと行った時と同じ様に、人が住んでるようには見えなかった、まるで廃墟だ。


ここへ来るとナオイちゃんの顔が頭に浮かぶ、ミケツ様同様に、神様とて人間と同じ感情を持ってるように見えるからだ、


ナオイちゃんが神様だったとしてもだ、ここでずっと寂しい思いをしていたのかと考えると、胸が締め付けられる思いだ。


足の取れたあの汚れた人形に、自分で作った紙の服を着せ、人形遊びをする、たった一人でだ。


あの人形はどうしたのだろか? 拾ったのだろうか? 貰ったのだろうか? その時のナオイちゃんの仕草や顔を思い浮かべると⚫⚫⚫、とても、寂しく思う。


アンドレさんには置き手紙をしておこう、この前も読んでくれたようだったし、


"ナオイちゃんは僕が責任を持って預かります、汚い小さな部屋ですが、暖かい部屋なので。"と。


そして、当分の間、ナオイちゃんはオレが預かる事になった。



第四十話 「ナオイちゃん。」



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