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まこらみみらせ  作者: しげしげ
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第三十七話 「アンドレ」

第三十七話 「アンドレ」




眠れるまま夜明けとなった。


「ちょっとあんた! 部屋の隅でなに白く燃え尽きてんの!? マンガみたいよ!」


「・・・・。」


⚫⚫コタツはつけっぱなし、


「何 黙ってんのよ!」


「・・・・。」


⚫⚫ストーブはつけっぱなし、


「ちょっと聞いてんのっ!?」


⚫⚫電気代に灯油代、使い放題じゃねーんだぞっ! オレにも使わせろよっ! コタツっ!

それにこれは何だ?

⚫⚫キャットタワーか? ⚫⚫猫のぬいぐるみか? ⚫⚫なんでオレの部屋に火鉢があんだよ? 狭い部屋がより一層狭くなんだよっ! どっから持って来たんたんだよっ?


⚫⚫⚫まあ、


⚫⚫⚫いいだろう、百歩譲って良しとしよう、⚫⚫どうせ上から目線で聞かないだろうし⚫⚫。



なんにせよ、


人と言うものは・・・ そう・・・ 恐怖に屈しやすいと言う事なのだ。


「無視するなんて 生意気だわ!」


心の時代、不安も心配事も、悩みの根底にあるものは全て、恐怖!だろう。


恐!怖! 幸せになるためには恐怖に屈してはいけないのだっ!


「体育座りのじょーしまさん、鼻水出てるわよ、」


・・・どーやって帰ったのかも覚えていない、 あれはやっぱり妖怪だったのだろうか?


人面牛や赤黒い形を成さない邪気は人の発する黄色い靄、精気と思われるが、これを糧として人に憑くと思われ、直接 命に関わる害はないと思う。


それに対してあの大男は明らかに攻撃的だった。


⚫⚫何よりあの目、


あの目は人の目なんかじゃない、⚫⚫獣、いや 爬虫類、魚類、⚫⚫そう、どっかの玄関先に置かれていた水槽の中の金魚かメダカ、何を考えているか分からないあの目だ、暗闇の中、巨大な魚かなんかそんな目が光に照らされ現れる、次の瞬間パクリと食うような、⚫⚫怖ろしい、


⚫⚫⚫恐ろしすぎるっ! 昔深夜のテレビで見たジョーズって言う映画っ! あれってトラウマになるって! 足伸ばして立ち泳ぎが出来ないよ!


'⚫⚫よく考えれば、ついこの前の、寒中鯉捕り大会で、オレは巨大な鯉を羽交い締めで捕まえていた、今考えると魚ってなんか気持ち悪い、鯉だか何だか知らないがよくもまあ触われたものだと今となっては思えてしまう、おまけに優勝までしていた⚫⚫あれは何だったんだ?


「じょーしまぁ、今日は学校休みなの? そんな隅で青い顔しながら鼻水たらして目が泳いでて気持ちが悪いんたけど、」


「⚫⚫学校?」


「そーよ! あんた先生なんでしょ?」



未だかつて無い恐怖に支配され、部屋の片隅という暗闇に安心を求める小動物のようなオレ、


昼夜が逆転した終日ニートの前身だったあの日々、オレは小動物だったのだ、だがそれを狙い獲物とする猛禽類や爬虫類がいるように、見えない暗闇は死神が隣にいても気づかないものだ、それこそ恐ろしい。


暗闇は何もないから安心して、と囁いてくる、死神や奈落が目の前にあったとしても、何もないよと嘘をつく、


卑怯でズルくても、死ぬ奴に生きるルールはそこには無い。


明るい日差しは自分を映す鏡、鏡を見るのが怖いのだろう、暗闇は鏡を見ても何も映らない、一歩踏み出せは、奈落でも何も見えない。


鏡に映るのは答えであって、罪と罰ではない、理解する事が大事なんだ。



玉村は見渡す限り、白銀の世界となっていた。


職員室で、


昨日の出来事を、校長先生と春名先生に話してみた。


「え!? ナオイちゃん? 誰ですか?」


春名先生も校長先生も、ナオイちゃんの事は知らなかった。


問題なのは、あの三メートル級だが、こちらもまったく知らないようだ。


「三メートル!? そんな人いるんですか!?」と春名先生、


⚫⚫そんな人いるんですか、と、言いますが、


⚫⚫黄昏さんはどーなの? タキちゃんは? 幸詠さんは? 釜ボッコは? 最近登場した猫娘は? ただのコスプレした変な人なの?


分かりませんよ。


「お父さんは三メートルの巨人ですか!? ナオイちゃんはマッチ売りの少女ですか!? 素足なんですか!? もしそんな子がいるんなら助けてあげなくちゃ!」と、いつになく熱い春名先生。


校長先生は春名先生に任せていた、「じゃ、あと頼みますね。」と、まるで信じていない態度で熱い茶をすすっていた。


そして春名先生、「城島先生、後で夢でしたぁ、なんて言うの、無しですよ〜。」と言っていた。


⚫⚫信じてないんだな。


まあいいさ! 見ればわかる!


⚫⚫だけど、あの進撃のお父さんに、春名先生を会わすのは危険だ、だから今回はオレ一人で行くことにする。


放課後、春名先生のお家による事になった。


雪の降る季節はみんな歩きが主となる。


当然、春名先生も赤い長靴を履き、防水仕様の防寒着を着込んていた。可愛いらしい。


「城島先生も防水用の防寒着がいいですよ。」と言う春名先生。


オレはフリースの上に雨合羽を着ていた。当然寒い。


ナオイちゃんに持ってかれたダウンジャケットも、いわゆる都会仕様で雪国には向かない。


春名先生は少し前に、みけつ様と町まで買い物に行っていた、その時にみけつ様に長靴と靴を二足ずつ買っていて、その一つを譲ってもらえる事になった。


二つも買ってもらうなんてなんて贅沢なんだっ!みけつ様はっ! それに比べてナオイちゃんは一つも持ってないんだぞ、それどころか靴すら持ってないっ! なんて事だ!



「あと、靴下に、上着も入れておきました。」と、春名先生。


「ほんとにいいんですか?」


「ええ、構いません、ぜひナオイちゃんに使ってもらって下さい。」偶然にも、「ちょうど長靴があります!」と言う春名先生はほんと! 困った時に助けてくれる女神様だ!


ところで、ほんものと思われる、⚫⚫かもしれない女神様は現在、遊びに夢中でお出かけ中と言う事だ。見た目通りの女神さまだ。


春名先生から手渡された大きめの白い紙袋の中には靴下や防寒着以外にも入っているものと思われる。


何が入ってるかは開けてみてのお楽しみだ。


ナオイちゃんも喜ぶだろう! お正月の福袋みたいだ! クリスマス前だけど、あ!


そうだよ! ナオイちゃんにとってはこれは春名先生からのクリスマスプレゼントだよ!


⚫⚫⚫オレからではない。


何だかナオイちゃんの喜ぶ顔が目に浮かぶよ! そう思うと足どりも軽くなる! ヤッホォー!


母さんから送られてきた三万円は封筒に入れてポッケに入っているのだ!


⚫⚫⚫三万円、


ああっ! 今更だけとなんなのーっ!? あの巨神兵はあ〜!?


誰に渡すかと考えたら⚫⚫、行きたくないっ! 行きたくなあ〜いっ!


⚫⚫⚫足どりが重い、ちょうど玉利荘を通り過ぎたとこ、


「はああ〜⚫⚫、」久しぶりにウンコちゃん座りでもするかあ〜。


「ああ⚫⚫、落ち着くぅ〜。」


オレは雪の降る中、和風座りで休憩した。


⚫⚫そう、こんな時は精気に妖怪たちが群がってくる、


·⚫⚫ダメだろ! 妖怪なんかに餌にされてっ!


と思って前を見た時、


そこに白い人影が立っているのが見えた。


⚫⚫あれは幸詠さんのおうちに行く途中、後をついてきたやつだ。


昼間だぞ、24時間!? コンビニみたいな事すんじゃね〜よぉ〜! 時と場所は選ば選ぼーよ〜!


⚫⚫背筋がゾッとした、


⚫⚫❞だるまさんが転んだ妖怪❞と、とりあえず名付けてみた妖怪。


寒さが増す、イオンのフリースに雨合羽では防寒されない、何とかせねば。


コン太の奴はこいつの事を、平気な風に言っていたが、⚫⚫何の説明も受けていない。


あれは何なんだ!?


ああ! 足が痺れた、立つことにする、「よっこらしょ。」


⚫⚫⚫オレは痺れる足を、何とかしながら❞だるまさんが転んだ妖怪❞の右隣を離れて通り過ぎてみることにした。


⚫⚫そーぉっと、⚫⚫そーぉっと、


ハッ!


こいつっ! オレの方に体の向きを変えている!


やっぱオレの事を意識してるのかっ! めーわくなんだよぉッ! もおーッ!いつもっ!いつもっ!


何がしたいんだよッ!


オレはそのままこいつから目を離さず通り過ぎた。


そして早足で先を急いだ、⚫⚫念のため、もう一度振り返った、


!!こいつっ、ついてきている!?


気持ち悪っ!


足元に気をつけながらに進んだ。


ナオイちゃんの家は村外れ、バス通りから少し入ったとこ、


⚫⚫その途中、振り返り、だるまさんが転んだを見ると、以前と同じように後をついてきて、その距離は少しづつ近くなっていた。


このままだとやっぱり❞タッチ❞されればアウトなのか?


⚫⚫アウトになったらどーなんの?


⚫⚫死んじゃう!? マジ?


仮にそおだったら、⚫⚫ヤバすぎる!


そお思って振り返るとそいつは更に近づいていた!


だがこいつ!


振り返ると立ち止まるんだ! まさにだるまさんが転んだ、だ!


オレは、


⚫⚫後ろ歩きをする事にした、バックだ! バックで前進だ! よいしょ! よいしょ! ほいさっさぁ〜!


思った通りだ! こいつ、オレが見ているあいだは立ち止まっている! ハハハハっ! 行けるっ!


かと言って、進行方向を見ずに進み続けることなんて無理っ! つまづく! どこかに落ちる!


オレはチラッと進む前の道を見た! オオッ!! ヤバイッ! 道がないッ!!


ダメだっ!


⚫⚫とりあえず、立ち止まる、そしてダルマさんを見る、



ほんの一瞬 目を離したすきにダルマさんはオレのすぐ側まで近づいていた!


なんで!? どおやって!? 因みにだけど、こいつ、ダルマさんにタッチされたらどおなるの!?


死んじゃう!? 違うよね、そんなの可笑しいよね、


じゃあどおする!?


オレは足を止めて、ダルマさんを見ていた⚫⚫


こいつはオレが見ている間はずっと動かないままだった。


⚫⚫どおすりゃいいんだよ!?


バックか! バックしかないのか! だが前が見えないっ!


⚫⚫いや、待てよ、たしかコン太の奴は、❞お前が振り向くからだよ❞とかなんとか言ってたが、⚫⚫何か意味でもあるのか?


あの時は、コン太の言う通りに振り向かないまま先を急いだ、それが正解だったのか、ダルマさんは何もしてこなかったし、⚫⚫当然、背中にタッチなんかしてこなかった、


なら、


それしかないのなら、


信じてみることにした!


オレは振り返らず、小走りに先を進んだ、⚫⚫と、同時に勇気が湧いてきた! そしてこうも思った、❞お前たち妖怪に何かをされる云われはない!❞と。


オレがお前たち妖怪に何か迷惑をかけたのか!? それとも知らず知らずにお前たちを困らせていたのか!?


オレはただ、ナオイちゃんの家に行くためこの道を歩いているだけだ! それのどこが悪い! 悪いはずがない!


途中、何度も恐怖が頭をよぎり、オレを振り向かそうとした、あいつはもうオレのすぐ後ろをついて来ている、そして今にも手を伸ばし首元を触ってくる!


⚫⚫何度も何度もそう思った。


だが、振り返らないと決めたから、⚫⚫だから、触ったからどおなるってものでもない!と、思えてきた。


コン太のアドバイスはきっと正解だったはずだ、それをオレは信じて前を進んだのだ。


信じて前に進む事、そうする事でそれが正解かどうか自然と気づくんだ! そう、導き出す事が出来るんだ。


立ち止まって考えたって優柔不断に不正解を増やすだけで、起きもしない不安や恐怖に無駄な時間が過ぎるだけだ。


オレは出来るだけ早くナオイちゃんに、春名先生から頂いたこの靴を届けたい! だからダルマさん、お前に構う理由はないんだよ。



曇り空の小雪が舞う中、あんなに近くにいたダルマさんは何もしてこなかった。


あの白い人のシルエットだけの妖怪、ダルマさんが転んだ、とオレは呼んでいるが、


やはりこいつもネガティブに反応した行動をとる、


それはつまり、人のマイナス思考で特に不安や恐怖に姿を現し、妖怪としての❞居場所❞を作っていると思われる。


⚫⚫これは妖怪に限らず、人間にも言える事で、生きる為、幸せになる為と言いつつ、嫌らしくも分からないようかけ引きをする、


⚫⚫単純に言えば、悪知恵があれは、幸せにもなれるし、無駄な努力をせずに済むと言う事だろう。


美しいものは穢れる一方なのだろうか⚫⚫、綺麗事抜きで考えればそうなのかもしれない⚫⚫、


だけど、人はいつも前向きに、ポジティブに考え行動しなければ、幸せにはなれないものだと、オレは思う。



村外れ、冬のこの時期は雪に埋もれた寂しい場所で、ここから急に道が狭くなる。


岩肌がむき出した玉川の道沿い、目の前には二又に別れる道があり、バス通りとは反対側、右に架かる古いコンクリートの橋を渡る。


たしか、この先だったよな。


オレは振り返り、ダルマさんがいないか確認した、⚫⚫居なくてよかった。


道は先に続いていたが、左に道があった。


雪に覆われているが、この先に神社が見えていた。


ナオイちゃんとここへ来たのは月明かりの真夜中、昼間とは違って見えていたんだ、


だって、鳥居がないし、台座は残ってあるけど、狛犬が二体ともなかった。


左手に民家があり、


「ここだ!」と、思った。


昭和時代の引き戸で、ガラス部分が割れて家の中に冷たい風が雪とともに入っていた。


「⚫⚫な、ナオイちゃ〜ん⚫⚫⚫居るぅ〜⚫⚫?」と小さな声で呼んでみた。


ああ、怖いっ! 進撃のお父さんが出てきたら怖いっ! ど〜かっ出てきませんよーにっ!


心臓がドキドキだ! 足に力が入らない! 尿漏れがあるかも⚫⚫、と考えていた時、家の脇からナオイちゃんが現れた。


良かった!ナオイちゃんで良かった! ほんとっ!良かったっ!と、オレは思った。


ナオイちゃんは可愛い瞳でオレを見つめていた。


ああっ!なんて事だっ! ナオイちゃんはこの雪降る中、腕まくりをしてその上裸足じゃないかっ!


オレはその場で、「ナオイちゃん! そんなカッコじゃ風邪引くだろ! 足も手も真っ赤じゃないか。」と紙袋の中を見せてあげようかと思った。


「ここに長靴と靴下が入ってるから、それを履けばいいからさ。」


ナオイちゃんは紙袋の中を、そっ⚫⚫と のぞき込んだ。


そして上眼使いに小さな口をポカンと開けてこちらを見つめ直した。


ああ、オレからだよってカッコつけて言いたいっ! 「春名先生からナオイちゃんにって、⚫⚫貰ってほしいんだって。」


開けにくい玄関の戸を、進撃のお父さんに気づかれないようそっと開けて中に入り、床の上に座らせた。


そして一緒になって中に入ってあるモノが何か確認してみる事にした。


まず、最初に入っていたのは赤い色の防水防寒着だった。


ナオイちゃんは純真無垢な瞳を目一杯開いて、その防寒着を手に取って見つめていた。


「それはナオイちゃんのだよ、今日から着るといい。」


「これ⚫⚫貰う⚫⚫」言葉を詰まらせているのか? 戸惑っているのか?


「ああ! 春名先生がナオイちゃんにこれ全部あげるってさ! だからこの防寒着も今日からナオイちゃんのモノだよ!」


さっきよりもずっと笑顔になった! 「⚫⚫⚫わたし、⚫⚫⚫貰っていいんですか⚫⚫?」と言うナオイちゃんに胸がキュンとなるよっ!


「ああ! もらってくれるか!」


「⚫⚫⚫後で返せって言われたら⚫⚫⚫わたし、」


「え!? そっそんな事言うわけないじゃんかっ! もうこれはナオイちゃんのモノなんだから!」誰かに言われたことあるのかな? 返せって、⚫⚫その時、やっぱり傷ついただろうか?


「あ、ほら、他に何入ってるか見てみよう! ね。」


ナオイちゃんは大きくうなずいた。


紙袋の防寒着の下には、厚手のニットにスカート、それにタイツ、靴下、手袋、下着が二枚づつ、タオルが三枚、新聞紙に⚫⚫


「おお! 三角おにぎりが三つ! それに卵焼き!」が、ラップに包まれていた。


さすが春名先生だ! なんかこっちがその心遣いに感動してしまう!


それ以上に感動していたであろうナオイちゃんは、一つ一つを大事そうに手に取ってそれを見つめていた。


ああ!カワイーッ!


ナオイちゃんの純真な瞳を見ていると時間を忘れてしまいそうだ。


赤い防寒着を肩から掛けてあげた。


「あ! そうだナオイちゃん、早速 靴下履きな。」と言って裸足のままのなおいちゃんの足先を手に取った。


⚫⚫⚫なんて冷たい足をしてるんだ。


オレは少しの間、冷えきっているナオイちゃんの両足を擦って温めてあげる事にした。


腕まくりをしていたのは家の裏で洗濯をしていたと言う事だ。当然 氷点下に近い真水を使ってだろう。


ナオイちゃんに、春名先生からの茶色い靴下、クリスマス柄の入った靴下を履かせ、次に赤い長靴を履いてもらった。



オレはこの後、ナオイちゃんを連れ出し、釜ボッコの沸かす風呂に入れてあげる事を思いついた。


ナオイちゃんのお父さんにはこのまま会わずに退散する事にする。


三万円は、封筒に入れたまま玄関の床の上に、風で飛ばないよう、近くにあった使われてない花瓶を上にのせ置いてきた。母ちゃんゴメンね、使わせてもらうから。


それと、置き手紙、ナオイちゃんを今日一晩預ります、と書いた。


強引に連れて行く事にしたこと⚫⚫⚫、後で死ぬ程後悔した。



ナオイちゃんは、


少し大きめの赤い長靴を履いて、とても歩きにくそうだった、たけど⚫⚫⚫


こんなキラキラした笑顔を、オレは初めて見たかもしれない


一歩づつ踏みしめて歩くナオイちゃんに、オレは歩く速さを合わして歩いた。


「道の端は危ないよ。」とだけ、教えて後は自由にさせる事にした。


十歩歩くと、靴下と同じクリスマス柄の入った手袋を見つめては、また歩き出す。


知らないふりしながら、オレはゆっくり歩く。


⚫⚫⚫胸が熱くなるのはナオイちゃんの子供らしい笑顔を見ているからだろうか。


お父さんになると、みんなこんな気持ちになるんだろうか。


田舎時間とは言ったものだが、子供時間もまた、ゆっくりと流れているのだろう、歩く速度はゆっくりでも急く事もなく、


⚫⚫⚫気がつけば、玉利荘の前までやって来ていた。


「ここがオレのアパートだよ、ここに釜ボッコって呼ばれてる女の子がいるんだけど、その子の沸かす風呂は特別なんだ。」と、教えた。


「⚫⚫特別?」とナオイちゃん。


「ああ、特別! 最高のお風呂! とっても楽しい気持ちになるよ!」と言っておいた。


腕時計を見ると、まだ夕方の四時前だった。


「また、早いよなぁ⚫⚫」


だけど、薪の焼ける匂いがする、これはお風呂を沸かしているんだ。


オレとナオイちゃんは風呂場の戸口に行ってみた。


「お〜い! 釜ボッコ〜、」と、呼んでみるも、


「⚫⚫おかしいなぁ、居るはずなんだけど。」釜ボッコは出て来ない、何でだ?


釜炊き場へ回って見てもいない。


どこ行った? 居るはずなんだが⚫⚫


だけど、風呂はいつもより早い時間だがちゃんと沸いていた。誰かが入るために釜ボッコに頼んで沸かせてもらっていたのかな?


⚫⚫でも、まあいいや。


「ナオイちゃん、お風呂入りな! 温目にしておいたけど、体が冷えきってるから、ゆっくり入るといいよ。」


ナオイちゃんは風呂に入る事を、なのか、少し何かをためらっていた。


「⚫⚫どおしたの?」と聞くと、


「⚫⚫⚫お風呂って何?」と聞くナオイちゃん。


「⚫⚫え!?」


お風呂って何? ⚫⚫て、なに? ⚫⚫どゆこと!?


「風呂入ったことないの!?」


「⚫⚫⚫うん。」


えっ!? 嘘っ!? そんな子いるのっ!? いやいやいやっ、雪降る真夜中に裸足でマッチ売ってる赤ずきんちゃん自体が居るはずがないっ!


⚫⚫なのにマッチ売りの赤ずきんちゃんはここにいる。


ならお風呂に入っ事が生まれてこの方一度もないっ!て言うのもありかっ!


ならっ! どおーする!? 一緒に入るのか!? 歳はみけつ様や北本位と見られるが⚫⚫⚫


⚫⚫別に構わないだろう、


⚫⚫他にないんだし、⚫⚫一人で入らせる訳にも行かないし⚫⚫、


世間では子供を狙った犯罪が取り上げられてはいるが、オレには関係ない、だから、


「⚫⚫じ、じゃあ、オレと一緒にお風呂入る?」と⚫⚫、なんかドキドキしながら聞いてみた。


何でドキドキしてんだよっ! これじゃあ変態じゃんかっ!


ナオイちゃんは「⚫⚫⚫うん。」と答えた。可愛い。


「城島先生!」


と、その呼びかけに、「うわアッ!!」と驚いてしまった。


「あ! ごめんなさい!」


振り返るとそこに、春名先生、みけつ様、それにソフィーさんの三人がいた。


「どっ、どおーしたんですか!? ⚫⚫三人で、」


「はい、城島先生がナオイちゃんをアパートまで連れてくるからって⚫⚫、みけつ様が、そうだったんですね。」


「え!? なんの事ですか? ぼくがナオイちゃんを連れてくるって決めたの⚫⚫、さっき、なんですけど⚫⚫」


「城島先生! この子ですか? ナオイちゃん。」と、ソフィーさん。


「あ、はい、この子がナオイちゃんです。」


なんでみけつ様はオレがナオイちゃんを連れて来るって分かったんだ? また心を詠まれていたのか?


⚫⚫⚫いや違う、だってナオイちゃんを連れて来ようと決めたのはさっきだぞ、当然 みけつ様は、近くに居なかった、ならどおして分かったんだ?


まさか! 遠くにいても心を詠む事が出来るようになったのか!? バージョンアップしたのかっ!? マジでーっ!? そんなのヤなんだけどーっ!


「みけつ様⚫⚫」


あれ? どこ行った!? 風呂入った!? もお!? 四人一緒に?


⚫⚫⚫四人一緒に⚫⚫?


ガラガラガラガラー⚫⚫


風呂場の戸が開いて、みけつ様が顔をのぞかせた。


「じょーしまー、ナオイちゃんと一緒にお風呂入るえに、おまんも入るかえ?」と、


聞いてきたのか!? なら当然「もちろん入ります。」て、言うでしょ。


誘われれば断らない! それがオレの人生から得た教訓なのさ!


「ほな〜あっちらの後に入りゃあせ、わかったかえ?」


何だってー?


「⚫⚫⚫わかりました。」と、オレは答えた。


みけつ様は 大事なところの言葉が少ないんだよなあ〜、おまんも入るかえ? と聞かれましたら、一緒に入るって思うってぇ〜、オレだけぇ〜?


その時、風呂場の前でバカみたいにボケェーと立っているオレの横に視線を感じると、


「⚫⚫あ、釜ボッコ、居たのか⚫⚫」


いつものように少し腰を屈めて恐縮そうにモジモジしている釜ボッコ、


「今日、ナオイちゃんて言う子が、釜ボッコの沸かしてくれた風呂に入ってるから、足も手も寒さで真っ赤になってるんだ、」と、


裸足でマッチを売りに歩いてる可哀想な子なんだと、説明した。


いつもなら、お門違いの、「熱いですか? ぬるいですか?」と喋るんだが、今日はモジモジソワソワしてるだけで何も喋ってくれなかった。


やはり大勢で釜ボッコの沸かす風呂に入ると緊張したりするんだろうか?


この時、風呂場では春名先生やソフィーさんの問いかけに、ナオイちゃんは答えていた。



オレは寒いので部屋に戻る、するとなぜかホワイトベース猫型キューティーハニーと変身して、コタツの前で正座している猫娘が居た。


⚫⚫裸みたいなカッコでうれいしい気もする。ドキドキする気もする。

だが、顔に出さないように必死に堪え、「あ〜、寒かったぁ⚫⚫」と、独り言を言いながら、コタツの前に、


⚫⚫なぜか、オレも正座して座った、足は入れない、怒るから。


「⚫⚫⚫⚫」


猫娘「⚫⚫⚫⚫」


「⚫⚫⚫⚫」


猫娘「⚫⚫⚫⚫」


⚫⚫何してんだよ、こいつ!? 間がもたないよ!


オレはコタツの上になぜかいつも山盛りに積まれているミカンを一つ手に取った。


⚫⚫勝手に食ったら怒るかな? 誰に貰ったんだ? 上島のバカに貢がせたのか? まあ、どーでもいいけど。


みかんの皮を剥く、⚫⚫⚫あ〜、みかんのいい香り〜。


⚫⚫⚫猫娘の奴、怒らない、


⚫⚫⚫てか、喋らない、⚫⚫⚫そして動かない。


猫娘の目が⚫⚫⚫、遠くを見ている、⚫⚫⚫そして動かない、


⚫⚫⚫怖い。


「な、何なんだよ、おまえ! 何やってんだよ!?」と、言ったら⚫⚫


ワンテンポ遅れて、目だけが動いてオレを見た、そして⚫⚫、笑った。


顔が引きつってるよっ! 「何だよっ!その怖い笑顔はっ!」


「⚫⚫⚫あ⚫⚫あんた」猫娘は口を開いた。


「あんた⚫⚫とんでもない事してくれたわね⚫⚫、」


「と、とんでもない事!? ⚫⚫何だよそれ、オレはお前が困るような事はしてないぞ! コタツにだって足、入れてねーんだからなぁ!」


あ〜! 足が痺れたよ! だから足をくずした。


「⚫⚫⚫何言ってんの!? あんた⚫⚫、コタツに足入れたら呪うわよ、そんなの当たり前よ、」


「お前なアッ! コタツは足を入れるとこなんだよおッ!!」


「⚫⚫⚫そんなのどーでもいいわ⚫⚫」


「はあッ!? どーでもいいッ!? お前っさっきから何言ってんのおッ!? どーでもいいんだったら、足っ、入れさせろよっ!!」


「⚫⚫足入れたら呪い殺すって言ってんでしょ、あんたバカなの? 理解しなさいよ、ガッコのセンセやってんでしょ?」


「なッ!! ⚫⚫なッ なッなッ」この猫娘の口の悪さにちょーッ!! 頭にきてしまったっ!


「アアッ!!」猫娘は小さな悲鳴を上げ、背筋を伸ばしてガタガタ震えだした。


「な!? な、なんだよ!? 今度は何だよ?」


「⚫⚫⚫くー⚫⚫るぅー⚫⚫,、くーるー⚫⚫きっと来るー⚫⚫、きっと来るー⚫⚫」またかよ⚫⚫。


「何が来んだよ!」


「⚫⚫この世でもっとも恐ろしいものよ、それをあんたが連れて来たのっ!」


「はあ〜!? 連れて来たって、⚫⚫ナオイちゃんのことかあ?」


「キャアアアアーッッ!!! 怖いわ怖いわ! もう帰りたい⚫⚫みけつ様のお社に帰りたいっ!!」


「⚫⚫ああ、お前あれだろ、アニメでよくある、猫のくせしてネズミが怖いってやつだろ、なんだろなあ〜⚫⚫、もーそ~言うのお、飽きちゃったあ? て、言うかぁ〜、もーいいって、言うかぁ、どーでもいいんですけどー。」


「アアッ!!来るわッ!!来るわッ!!来たアアッ!!!」と言って、と一瞬にしてただのペルシャ猫と変身した。


「コンコン⚫⚫、城島先生いらっしゃいますかあ?」と春名先生の声が玄関先から聞こえてきた。


「はあ〜い!」オレは一瞬にして、玄関へ移動し、戸を開けた! カチャ⚫⚫


そこには、お風呂上がりのナオイちゃんをはじめ、みけつ様、ソフィーさん、春名先生の四人がいた。


この後、オレは上島より早く風呂に入る事に成功し、「居ねーぞっ! 玉江ちゃんが俺の部屋に遊びに来てるって嘘ついたろっ!」と、言う上島に、「いやあ〜⚫⚫、いいお湯加減だよ〜!」と風呂に浸かりながら答えてやった。



このあと、ナオイちゃんは、「帰らないと、帰らないと、」と、落ち着きなく話すも、この日は春名先生の家に泊まる事となった。オレの部屋よりはずっといい。


ナオイちゃんのフルネームは、綾野なおい、と言う事で一度も小学校へは通わせてもらえなかったそうだ。


だが、不登校児童は市町村が把握しているはずなんだが⚫⚫、これも何かの見落としなんだろうか?


それと、 物心つくまえから、 ナオイちゃんは父子家庭と言う事で、母親を見た事がないそうだ。


とにかく、この現状は「絶対、見過ごせないわ!」と、初めて見る春名先生の怒りの感情を目の当たりにしたオレは、⚫⚫⚫怒る春名先生もまた凛々しく、これはこれで、へへへ、と思った。


そのナオイちゃんの父親、思い出しただけでもおシッコチビリソーな恐ろしいお父さんだが、名前は 綾野アンドレさん、と言う名で、「どこのお国の人?」とソフィーさんが聞くも、出身地すらも知らないと言う事だった。



この時、猫娘はコタツの中にはいなく、どこにも居なかった。


それと猫娘の飼い主であるみけつ様も今日は、いつになく大人しかった。

子供らしい無邪気な瞳で、口をポカンと開けて、ただ聞いているだけのみけつ様だったのだ。



この日の夜は久しぶりにオレ一人の時間となった。


なぜか、猫娘はオレが起きている間は帰ってこなかった。

危険を察知したのか? あの怯えようは何なんだ? ナオイちゃんにならあそこまで怯える必要はないはずだ。


やはり、綾野アンドレさんか?



なんにせよ、猫娘は何かを知っているのだろう。


そして、本当の恐怖はこの後に訪れる事となるのだ。




第三十七話 「アンドレ」



つづく。


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