表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可憐な華でも、姫でもナイッ(仮)  作者: 桜雪りか
Ⅱ.英エリカ、中学3年生の苦悩編
8/33

あたしはフラグを蹴り飛ばす予定-2



 3日目は東寺、東福寺、京都水族館、京都タワーと駅近くから回り、先日までとは比較的ゆったりとした時間を過ごした。


 前日訪れた龍安寺と打って変わって、絵鞠ちゃんが水族館で大はしゃぎだった。



 『御覧になって!オオサンショウウオよ、愛らしいわ』とか、

 『あのペンギン…なんて健気なのかしら』とか、

 『ハンドウイルカよ~気持ち良さそうね』……とか。



 このギャップ萌えには、あたしが男だったら確実に惚れていたと思った。

 同時に陰ながら乙ゲーのモブの格差を感じたのは言うまでもない。



 京都タワーでお土産も購入して、またまた三人でお揃いの、今度はストラップを買った。

 まゆまろんストラップ超可愛い。黒目がちなところが特に。

 あと、どっかで見たような顔をしていたのは秘密ね。



 と、一日の大半を水族館で過ごしたので3日目も帝達とは遭遇せずに終えることができた。


 まあ会ったからって、逃げも隠れもしないしスルーしてやるけれど……え?矛盾してるって?こっちだって必死なのよ!(白目)




 ―――そして4日目。親睦旅行最終日が訪れた。

 今日は伏見稲荷大社、三十三間堂、清水寺には足を運ぶというプランになっている。



 勿論この日だけは逃げるわけにいかないと思って、

「ガイドで見つけたのだけど、お昼は〝緋凰〟が良いわ」と、あたしから仕掛けた。

 今まで逃げていたぶん、いざとなれば反撃。

 心の準備OK。


 最初はこういう状況だと、なるべく関わりたくないと思っていたし、普通は避けるのが安全なのだろう。

 でも、もう逃げるつもりはない。


 フラグを回収してくれる人もいなければ、へし折れるくらいの力もないので、あたしはフラグを蹴り飛ばす予定だ。



 この親睦旅行に来てわかったのは、これが今のあたしの現実なのだから楽しめってこと。

 思う存分楽しむべきだ。

 既に大人気なくはしゃいでいるけど。



 ……本当は今の今まで、「あたしの身は英エリカのものだから守らなきゃ」って行動してきた。



 でも……。エリカには悪いけど……えぇい、仕方無い!ごめんねッ!(星)

 トラックに轢かれている身、ちょっとやそっとじゃ折れてやらないから。

 あんたの命、いっぺん預けてもらうわ。



「そうと決まれば楽しみだわ…ふふっ」



 考えだけ先走り過ぎて、そもそも何が起きるかわからないものの、人知れず闘志を燃やしていたあたしに。



『エリカさん……?』


『や、やだっ!何よ、今度は黒目になってるわ。アハハハハッ』



 ……人知れていた。



「へ?ああ、ごめんなさい。千本鳥居を駆け抜ける妄想をしていたわ」


『アハハ、どんな妄想よ?これから実物を見に行くでしょう』



 凜子ちゃんの言葉の後、絵鞠ちゃんにも笑われた。

 な、なんとか誤魔化せました。この二人とは今後も上手くやっていけそうです。


 目的地最初の伏見稲荷大社に到着すると、凛子ちゃんが早々にこんなことを言ってきた。



『じゃあエリカ、行ってらっしゃい』



 ……へ?何その満面の笑みは?



『あぁ!そうね、今度はエリカさんの番よ。しっかりと、このビデオに収めておきますわ』



 高そうなビデオを掲げた絵鞠ちゃんが、千本鳥居の方を指さして微笑みを浮かべた。

 もしかしてこの子達、さっきあたしが言った「千本鳥居を駆け抜ける妄想をしていたわ」って言葉、本気にしているのでは……!?



「え!ちょっ、待…」


『今なら行けるわ。さあエリカ!妄想を現実にしてらっしゃい』



 そんな暖かい目で見送られちゃ断れないけれども、見た目は中学生・中身は25のいい結婚適齢期の大人には辛いものが……!



「……わ、わかったわよ。行ってくるわよ!見てなさい?」



 一瞬あたしの口調に二人はポカンとしていたけれど次には、走り出したあたしの背後から声援が聞こえてきた。


 さよなら25歳のプライドよ。

 こんにちは新しいあたし。

 嗚呼、涙ちょちょぎれる。



 一周して戻って来ると、バッチリ絵鞠ちゃんのカメラが回っていた。

 ごめん絵鞠ちゃん、絵鞠ちゃんのはしゃいでる時と違ってこれは黒歴史として残る予感しかしない。


 こうして25歳の恥じらいを少し捨てられたあたしは、ちょっと気持ちも軽くなった。

 丁度気分も良くなった状態で、あたし達は次の目的地である三十三間堂へ向かった。




 三十三間堂、またの名を蓮華王院。ここで有名なのは確か、国宝・千手観音坐像。

 そしてその左右に並ぶ千躰の千手観音立像。



『この千手観音立像、会いたい人の顔が必ずあるって言うわよね』



 凜子ちゃんの言葉に、絵鞠ちゃんも頷いた。



「会いたい人……か、」



 ここでも宮間青春時代、修学旅行で来た覚えはある。

 が、実際じっくり見ることもできず、会いたい人の顔を捜すどころでもなかったような。



 しかも「皆同じ顔じゃん」って大して見る気も無かったんじゃないかな。

 特に会いたい人なんていないから考えもしなかったし。つくづくあたしって……。



.

千躰の千手観音立像。桜雪の時はまさに時間がなくて観音様の前を早歩きしました。うぅ…意味無い

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ