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可憐な華でも、姫でもナイッ(仮)  作者: 桜雪りか
Ⅳ.英エリカ、中学3年生の真夏編
33/33

ツンデレじいちゃんvsエセ孫娘-1



 あの日から更に、身の危険を察知したあたしはというと。



 憂鬱な気持ちをなんとか振り払って己を戒めていた。

 それで考えたのが、とりあえず一旦距離を置こうということだった。冷却期間だ。


 どんなド変た……やや常識を逸脱した者だったとしても、冷静になれば王子のままだし。

 普通にしていれば常識人なのよね。

 とはいえ、アレはちょっと衝撃で、今アイツを前にしたらあたしが冷静を保てる自信が無い。だから彼とは追々、じーーーーっくり考えて話し合いたいと思っている。



 とりあえずド変…或のことは一旦忘れることにして。



 あっ!そうだわ、そろそろ絵鞠ちゃんと凜子ちゃんとデートする日時を決めなきゃ!場所は無事に決まったから、あとは予定合わせだけ。


 そんなことを考えながら宿題に向かっている夜。―――ピンポーン♪と我が家のチャイムが来客を知らせた。



 部屋を出て玄関先まで覗きに行くと、そこには。




『ただいま!華憐、エリカ』


『アナタ、お帰りなさい……!』



 そう言ってお母様は〝彼〟に駆け寄ると、抱き着いて、頬にキスをした。



『二人とも元気にしていたか?……エリカ!』



 お母様を胸に抱えたまま〝おいで〟ポーズをするその男―――彼こそが英家、細めの大黒柱・【英 邦之】だ。


 え!いつの間に帰国したの!?

 ってか、何そのポーズ。え、まさか、あたしもお母様と同じことやれと?


 ……しょうがないな。今日だけだぞ。今日だけ。

 あたしは渋々とお父様の頬にキスをした。


 あらっ、お父様モチ肌。




***




「お父様のご実家?」


―――ガッ…キュゥ!バリバリッ!



 夕食の後、たった今お父様から聞かされた話をすかさずオウム返す。

 お父様から貰ったクルミを割って頬張ってを繰り返すあたしの手許には、これまたロンドン土産のくるみ割り人形があった。年頃の娘なんだけどなぁ。ま、面白いからいっか……。


 ともかく今の話、聞き逃しちゃぁいけない。

 で、出たわね、物語外イベントっ!夏休みに帰省はあるあるだし、覚悟はしていたが。



 エリカの父方の実家は静岡にある。

 関東圏でわりと近い。毎年の夏休みと冬休みは、家族で赴いているそうなんだけど。



『エリカったら、毎年私たちの後ろに隠れちゃうのよね。それだけが心配だわ…。』



 隠れる?お祖父様そんなに怖い人なの!?



 ……ふふっ、なんてね。


 実はお祖父様の情報はすんなり頭に流れ込んでいた。或の時とは大違いだわ…トホホ。



『エリカはお祖父さんのこと苦手かもしれないけど、ああ見えてエリカに会いたくて仕方がないんだ。みんなも楽しみにしているんだよ。』



 お父様の言う通りだ。怖い系のおじいちゃん≒ツンデレの法則というのがある。そうよね。まだまだ孫が可愛くてしょうがない歳だわ。



 ―――こんなとき、思い出すのはやっぱり自分のおじいちゃん。ちょっとガンコだけど優しかったなぁ。


 あたしが大きくなるに連れて、口喧嘩ばっかりだったけれども。成人してからは一緒にお酒を飲んだりして語らうこともできた。

 結婚、結婚と急かしてくる実家に居づらくなった時も、まずは話を聞いてくれたのがおじいちゃんだった。

 ……まさか、おじいちゃんより先にこんな状況になるなんて。



 またしんみりとした気持ちになってしまったあたしは、気を取り直してお父様に言った。



「お父様、お母様。ご心配なく」



 二人がポカンとあたしを見た。

 



「あたくし行きたいわ。お祖父様に会いに…!」




――――

―――――




 新幹線でおよそ一時間半。

 駅から市営バスに乗って数個先。そこから歩いて、数十分。



『…ふぅ、何度来ても慣れないわね…この坂…っ道…』



 見渡す限り緑、緑、緑に囲まれた山道。

 正直、県内でもド田舎の方である。…誰だ?わりと近いとか言ったのは。



 ともかく、息も絶え絶えに喋るのがやっとなお母様。お嬢様育ちのお母様には、けもの道に違いない。


 山道にはミスマッチなシルクのワンピースと、ヒールの高い靴を履いて……なんでハイヒールを履いて来た!?

 そして、その少し前を歩くお父様。

 『あと少しだ、頑張ろう!』と励ましながら、お母様を扇子で扇いであげてる。

 ねぇ!こっちにも風くださーーい!



「な、んの…これ…しき……ッ」



 忘れるところだった。最後尾を歩くあたしも、常日頃から運動の〝う〟の字すらない英エリカだということに。

 由々しき。

 この夏の間になんとか体力づくりせねば……。




 しばらく歩くと、お父様が立ち止まった。




『ほら、もう見えたぞ!』



 指さした先には一軒の家。というか屋敷。



(お、おぉぉぉ…!)



 記憶にはあったが、実物の方がデカい。


 瓦屋根に漆喰と板張りの外壁は、いずれも古びていて年季を感じる。表札の〝英〟も渋くていい味出てるわね。まるでタイムスリップしてきたような立派な日本家屋だわ。



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