勇者様。レベル上げ
お待たせいたしました。新キャラが出てきます!
降りしきる雨の中に傷だらけになった少女がいた。少女は泣いていた。
痛い。いたい。
身体中に付いた傷が痛む。顔、腕、足、胸、心…
自分はのまま、殺されてしまうのだろうな。そう思って目を閉じる。
◆
ーー馬車の中。
四人は円のような形で話をしていた。
『魔王は思ったより強かった…いや、俺達が弱すぎたのか』
『噂通り、噂以上の強さだった』
旅芸人は顎に手を当て考え込む。
『……。』
(結局、あれは何故だったか聞けなかったな…
最近よくあの魔王の事を考える。勇者パーティとしてあたりまえの事なのだろうけど、何か…そういうのじゃあないような……)
『やっぱり、レベルを上げなきゃだな』
旅芸人と魔法使いが同意する。
『…僧侶はどうだ?』
上の空な僧侶に優しく確かめた。僧侶は気付くと慌てて同意する。
今度こそ、魔王を倒すんだ
勇者達はレベル上げへと繰り出していった。
◆
「エルフ。」
弟が静かな部屋に呼びかける。暗い赤を基調とした大きく綺麗なベッドの下から物音がする。
「お呼びですか」
そう声がすると、はねた白髪のエルフがするりとベッドの下から出てきた。表情を変えず、エルフは弟をじっと見つめる。
「頼みたい事がある。」
弟はペンたてからカラフルな棒付きキャンディを取ると、エルフに見せびらかす。それを見てエルフは目を輝かせた。
「なんですか?なんでも承ります」
少し見を乗り出して聞く。
弟はにやっと笑い、キャンディをひらひらと振って見せる。
「…この前来た勇者達いるだろ?そいつらの様子を暫く見てきて欲しいんだ」
キャンディを差し出す。エルフは袋をかぶったままのキャンディにかぶりつき、了解と敬礼してみせた。
「……あ、それは魔王様の為にですか?」
口からキャンディを外し、悪意のない瞳で弟に聞く。弟は口元を少し歪ませ、エルフの頭を軽く小突いた。
「んなわけねーだろ。黙って行け!」
いつもの調子で否定する。
そんな弟の顔は少し照れているようにも見えた
◆
とある村。
勇者達は足りなくなった物資を調達しに、村の商店街を訪れていた。
『ちょっとすみません。』
綺麗な金の髪に緑の瞳をもった青年が勇者達を呼び止める。
『私は旅をしている、しがない詩人にございます。』
人の良さそうな笑みでお辞儀をする。
『旅の詩人とやらが俺達に何の用だ?』
『はい。実は、私一人ではどうも外を移動するのは難しく…そこで今までも腕の立ちそうな旅のお方に同行させていただいてたのです。しかし、先ほど別れてしまいまして……』
『で、今度は俺達について行きたい。と?』
詩人はばつが悪そうに毛先をいじりながら笑う。
『俺は構わないけど。これからレベル上げの繰り返しだ。街につくのは何時かわからないぞ?』
『貴方達が迷惑でないのなら私は大丈夫です。多少なら、詩でお力になれるかもしれません』
勇者はそれならと仲間の顔を見回す。皆仕方ないと頷く。
『じゃあ、これからよろしく』
握手を求める。詩人はその手を嬉しそうに握った。
『夜は少し席を外すかもしれませんが、どうかお気になさらず。』
ーー夜。
ふと僧侶が目を覚ますと、森のおくに入っていく詩人が見えた。
(一人で、危ない)
お気になさらずと言われたうえに、僧侶の自分が行ってもどうも出来ないだろうと思った。でも僧侶は後を追った。
詩人は奥へ奥へと進んでいく。とたん、水色の光があたりを照らす。生い茂った草花の奥に空色に揺らめく泉があった。
詩人は泉の前に座ると詩を歌いはじめた。とても澄んだ歌声が水面をなびかせる。
ふと、赤い光が僧侶の瞳に飛び込んだ。よろける。
(…あれっ、て)
一瞬見えた赤い光に気を取られ、足が木の枝を踏み鳴らした。物音に気が付いた詩人は歌うのをやめこちらを振り向く。
『おや、驚いた。僧侶さんではありませんか。』
僧侶を見つけると詩人は微笑み立ち上がった。
『驚かせてしまって…すみません。』
(…ない。見間違いだったのだろうか…いや、でも)
じっと見つめられ詩人は少し恥ずかしそうに笑う。
『私の顔に…何かついてますでしょうか』
『っあ、いえ…なんでもないです。』
僧侶は軽くお辞儀をして森を出ていった。
『…』




