第198話 兵士と騎士
課題もひと段落した頃、俺たちはお茶を飲みつつ雑談に花を咲かせていた。
「ねえ和也くん、異世界の話、聞かせてよ」
「唐突だなぁ、そんなこと言われたってどんなことを話せばいいんだ?」
「それもそっか、そうだなぁ……冒険者とか居たの?」
「いたぞ」
「冒険者の話! 聞かせてよ!」
子供の様に輝いた瞳でそう言われ、俺は苦笑しながら答える。
「まず、みんなが描いている冒険者像を教えてよ」
「そうだなぁ、なんか技術力とか戦闘力? みたいのでランク分けされてて、誰でも登録できて、国家に制約されない集団。みたいな?」
「まあ、現代のライトノベルとかを参考にしてたらそうなるか」
「やっぱり違うの?」
その言葉に俺とセレスは頷く。
「まず、国家による制約がないって話だけど、冒険者協会は国家の助力がないと運営できない。だから割と国の管理を受けているんだ」
「どの国にもあるので、魔王大戦時は皆さんの想像する状態ではありましたね」
「大戦後はその制度も見直されたがな」
大戦後は国家間の依頼のやりとりというのもほぼ無くなった。
国の下に各国の冒険者協会があって、その下に冒険者たちがいるような構造といえばわかりやすいだろうか。
なので、大戦後は同じ名前の組織が各国にある。そんな状態になったのだ。
「次にランク制度だが、AランクBランクみたいな英語文化がなければダメな分け方ではないな。金属になぞらえて銅、鉄、銀、金、ミスリル。みたいな感じで分けられていたな」
「全員が銅等級から始まって、依頼や試験を合格すれば上に上がれるシステムでした」
「なんだかそのあたりは想像通りかも」
「試験なんだが、実技試験のほかに筆記もある。日本に比べて識字率は高くないから、このあたりで大分ふるいにかけられるな」
「もとより、冒険者は入会するのにも試験がありますからね。実技試験に筆記、面接と割と日本の一般企業と同じです」
「だから誰でも入れるってわけではないんだ」
「へぇ、なんだか夢がないかもしれん」
そういう遼に俺か苦笑を返す。
「ははは、そうだ。ここで一つ問題だ。一般兵士や騎士と冒険者、どっちのほうが強いと思う?」
「え、そうだなぁ……同じぐらい?」
「正解は一部を除きほぼすべての場合で騎士や兵士のほうが強い」
「そんなになの?」
「日本でいうところの兵士は公務員だ。それなりの試験と技量を持った人間しかなることはできない。騎士はそれ以上の技量と知恵を持った人間、専門の学校を卒業し試験を潜り抜けた精鋭たちだ。その辺の冒険者なんて目でもないさ」
「冒険者はいわば腕自慢のアマチュアです。一部の状況を除き、それは覆りません」
冒険者はいわば民生の資格、兵士は公務員、騎士は難関国家資格というところだろう。
「その一部の状況っていうのは?」
「兵士たちには土地勘はない。その点地元の冒険者は強いと言えるな。実際の任務でも案内に地元の冒険者を付けることはあった」
「冒険者協会の上澄みの実力者たちは極稀に騎士と同等の実力を持っているときがあります。そういったときは軍部からスカウトがくることがありますね」
「ただ、これも大戦後の話。大戦中は多くの兵士や騎士たちが倒れた。育成が追い付かないほどにな」
「そのため戦中の特例が認められることが多々ありました。例えば、兵士から騎士に昇格するだったりです」
話が脱線してしまったので路線を戻す。
「冒険者の役割は民間人たちの困りごとを解決することや下級の魔物たちを駆除すること。そう考えていただければわかりやすいと思いますよ」
「冒険者で解決できない事象があれば軍部が出てくるって感じだな」
「へ~、じゃあ和也くん、すごく偉かったんだ」
そんなことを言い出す葛西さんに俺は急いで否定する。
「そんなことはないぞ?」
「何をおっしゃいますか。騎士の上、上級騎士以上の近衛騎士、その中でも実践に秀でた特務近衛騎士を統べる隊長だったんですから。胸を張ってください」
なぜかセレスが胸を張ってそういう。
「俺は召喚されたっていう特殊なプロセスで選ばれた。ちゃんとしたルートをたどってないから……」
「魔王を打ち倒した勇者様が何を言っているのですか」
「劇の内容であれだったもんな。和也、相当強いんだ」
「俺は俺だよ。そんな大それた人間じゃあない」
俺はただ多くを斬っただけ。本当に大した人間じゃない。
その心情を察してなのか、セレスが俺の背を撫でながら、言った。
「カズヤさんは多くの人を救いました。胸を張って良いのですよ?」
「セレスならわかるだろう?」
「はい。だからこそ私はこう言い続けるのです」
「……次は何が聞きたい?」
そうして時が過ぎていく。
うん、今日も平和だ。
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