第十三話 それぞれのホテルの楽しみ方part14〜(あ、そうだ、セキュリティあったわ。 忘れてた。)
「〜〜〜〜〜〜〜テメェ、いい加減にしろ!!!」
「ぐぅ!!!」
「ガルちゃ?!」
「「「「「「「あ。」」」」」」」
しばらくの騒動の後、ドアの向こう側から、ゴンッ!!という音と共に、ガルのうめき声とシロの悲鳴が聞こえ、医務室は静かになった。
ドア越しにガイルの声が聞こえる。
「ショウさん、コイツは落としといたから、みんなは飯、食いに行ってくれ。
迷惑かけて済まねぇな。」
どうやら、ガルの意識を落としたらしい。
それを見ていたルナは顔を引きつらせた。
(結構、いい音したけど、大丈夫か?)
(らいじょうぶ、れしょ。
………そりぇに、あのまま、らと、ぼうはん、せきゅりてぃ、なってた。
ガルちゃ、れきん。
ごはん、ちゅきな、シロちゃ、ないちゃう。)
(あ、そうだ、セキュリティあったわ。
忘れてた。)
(トラも、わちゅれてた。
けん、まほう、あっても、らいじょうぶ、だった。)
(………ガルさんとシロの勢いがヤバすぎて忘れてましたな。)
(みゃ。)
(多分、ドアを必死に抑えてた、祥ちゃんも忘れてましたな。
アレだけ、防犯セキュリティを冒険者さんたちに、語ってたのに。)
(………みゃ。)
(それか、また、作者の設計ミスが出たかな?
忘れてたでしょ、絶対。)
(ルナちゃ、めた、ないない。)
(サーセン。)
うるさいのである。
「………また、アイツが、メタ発言した気がする。
つーか、防犯システムあるんだから、焦る必要なかったな。
後、ナレーションに、自我入れんなって何回も言ってんだろ、作者。」
「ショウさん、何か言ったか?」
「いえ、何でもございません。
ガイル様、お身体の具合が悪いのに、このようなことをさせて申し訳ございません。」
「良いってことよ。
俺も、コイツやラルクのせいでホテル出禁になるの嫌だしな。」
「何で、俺の名前、言ったんすか、ガイルさん???」
急な飛び火に突っ込むラルク。
今までの自分のやったことを考えて頂きたい。
「うー………おにくぅ………。」
「あー……シロ………。」
グスグスとすすり泣く声と、困惑するガイルの声が聞こえる。
そんなシロに祥は仕方ないなと言いたげに、その場にしゃがみ、ドアをコンコンと叩いた。
ドア越しで見えないが、しゃがんでいるため、ちょうどシロの顔の少し上あたりに、祥の顔がくる。
「シロ、俺たちは意地悪で、お前が肉を食べるのを反対してるわけじゃない。
分かるな?」
「………みゃ。」
「だよな、お前は頭良いから。
心配して、怒ったり止めたりしてるのも分かるな?」
「………みゃあ。」
祥の優しく低めのテノール声から紡ぎ出される言葉に、シロはコクンと頷きながら、返事をする。
分かっているのだ。
みんなが自分を心配していることも。
このお腹の調子で食べたら、体調を悪化させてしまうことも。
自分が辛いものを調子に乗って食べてしまったから、こうなったことも。
────それでも。
「………ガルちゃ、おにく、たべちゃちぇたいの。」
「「!」」
シロの言葉にガイルと祥は息を呑む。
シロは、自分が食べるより、自分と同じように食べるのが、好きなガルに食べさせたかったのだ。
一緒に食べたかったのだ。
シロはずっとここにいる。
食べる機会は何回だってあるし、ルナや祥に強請れば、頑張ったご褒美に食べさせてくれるだろうし、料理人(料理モフ)な自分なら、自分で焼くこともできる。
一番極上の旨さで食べることだってできる。
────でも、ガルは?
今日を逃したら、食べれないかもしれない。
一緒に美味しいと笑い会えないかもしれない。
和牛は高い。
テレビで言っていた。
このモニター中でなければ、彼ら冒険者たちは、高くて手が出せないだろう。
だから、今日、どうしても食べたかったのだ。
中身は魔獣として大人だとしても、生後三ヶ月、このホテルで働き出して、半月しか経っていない。
情緒は幼いのだ。
「………そっか。ガルさんの為だったんだな。」
「みゃー……」
「だから、ガルさんもアレほどゴネてたのか。
食道楽同盟のお前に触発されてたのは、分かってたけど。」
「………めんしゃい………。」
シュンとしたシロの気配。
それに祥は優しく微笑み口を開く。
「心配すんな。
俺にも、考えてることがあるから。」
「ショウさん?それは………。」
「ガイルさん、貴方なら見当がついているでしょうが、今は。
最終日にお願いがございますので、その時にでも。」
「…………ああ、分かった。」
祥の言葉に引っかかったのか、ガイルが口を挟もうとする。
しかし、祥はサラリとガイルを止め、ガイルもそれに口を噤くんだ。
「ガルさんにも、絶対また食べてもらうから、だから今日は我慢して、早く治せ。
ルナだって心配してるぞ?
あんな風にしてたけど。
シロはとっても良い子だから、我慢して、今度、一緒に美味しく食べる。
できるな?」
「………みゃ!」
祥の優しい声と言葉に心が解されたのか、少しの間を置いて、シロが頷いた。
元々は良い子だし、聞き分けも良い。
ちゃんと言い聞かせれば、分かるのだ。
「さて、それでは、参りましょうか、皆様。」
そう言って祥は背を伸ばし、悠然と微笑んだ。




