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三十四話

シルビアンヌは、体調が回復し、久しぶりに学園へと行くことを楽しみにしていた。


 兄のダニエルはかなり心配し、半年ほど休んで自分の傍にいたらどうかとシスコンな事を言っていたが、それをシルビアンヌは大丈夫だと説得すると、馬車に揺られて学園の門をくぐった。


 久しぶりに見える学園は輝いて見えた。


 もう自分は魔女ではないのだ。だから、きっと学園生活を満喫できるはずであるとシルビアンヌは瞳を輝かせた。


 これからはきっとラルフもギデオンもジルも自分の婚約者探しに夢中になるはずである。ヒロインちゃんを奪った事は申し訳なく思うが、アリーを手放さないと決めたのだからシルビアンヌにはもう迷いはなかった。


「よーし!女の子の友達をたくさん作るわよ!」


 あの四人さえべったべたしてこなければきっと可愛い女友達が出来るはずだと、シルビアンヌは意気揚々と馬車を下りて、固まった。


「え?」


 以前同様、何故かシルビアンヌの事を四人が待ち構えていた。


 いや、まだ百歩譲ってアリーは分かる。


 だが、もうラルフ、ギデオン、ジルは自分の傍にいる必要はないはずである。


 引きつる笑みを浮かべてシルビアンヌは口を開いた。


「み、皆様ごきげんよう。その、あの、何で待ち構えていらっしゃるの?」


 ラルフはにこやかにほほ笑みを浮かべると言った。


「誰が諦めると言った?」


 ギデオンも腕を組んでにやりと笑う。


「女心は何とやらっていうだろ?」


 ジルは何故か女装していた。


「私達に可能性がないというわけではないでしょう?だって、シルビアンヌ嬢、私達の顔、好きでしょう?」


 その言葉に、ぐっとシルビアンヌは言葉が詰まる。


 確かに、皆の美しすぎる顔は罪だと思っている。


 だがしかし、と、シルビアンヌはアリーの腕にぎゅっと抱き着くと言った。


「私とアリーは婚約しましたの!私の運命の番はアリーです!」


「シルビアンヌ様!」


 嬉しそうに微笑みを浮かべるアリーであった。だが、次の瞬間皆が目を丸くする。


 シルビアンヌの金色の瞳が輝き、赤い髪がふわりと舞いあがった。


「え?」


 魔力はどうやら、シルビアンヌから消えていなかったようである。


 シルビアンヌは顔を引きつらせた。


「ど・・・どういうことかしら。」


 シルビアンヌは最愛の人は手に入れたが、女友達を手に入れる日は、遠そうである。




最後まで読んで下さりありがとうございました!

最後に、評価の☆を着けていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。


作者 かのん

只今「婚約破棄され続けたループ令嬢は今世は諦めることにした」がミーティアノベルス様により今年度電子書籍化予定です。

「魔法使いアルル」はアルファポリス様より書籍化予定となっております。

読んで下さる機会があれば、幸いです。

今後とも、作者 かのん の小説を読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] くうう・・・。読み直すか?? 最後の、「魔力はどうやら、シルビアンヌから消えていなかったようである。」は何かを意味していたのであろうか。単にストーリーはこれからも続くのだ、という展望を示…
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