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7枚目 予選1回戦

お久です。

コミティアや冬コミの合同やったりで全然やってませんでしたね。すいませんです。

 大会当日。


「緊張するよ……」


「わかる。この緊張感がたまらねーんだ」


「僕はそういうこといってるんじゃないんだけど」


 学園のドーム型大型決闘用施設。大会や行事の際にのみ使用が許可され、この学園の生徒が全員収容できる程度の規模がある。

 予選なのでまだ観客は少ないが本選になると満員になるのだとか。


 ロイは全8ブロックのうちの2ブロック目。その1回戦。

 いまさら入場口前で尻込みしてるロイとは対照的にルムは慣れているかのような返し。


「心配すんな。あれだけ練習したんだし、俺もついてる」

「そう……だよね」

「それに負けたって死ぬわけでもなし。楽にいこうぜ」

「うん」


 励まされて徐々に目に力が入っていく。先ほどまで緊張でトイレにこもっていたとは思えない顔つきである。

 机に広げられたデッキを何度も見直す。このデッキの勝ち筋はなにか。どう動くべきか。それをこの数日間ずっとこの相棒の少女と練習してきた。


「時間だ、行かないと」

「よっしゃ。暴れるぜ!」





 客席はまばらだった。予選の1回戦となるとこんなものかもしれない。


 対面からも対戦相手が入場する。ロイより背は高く筋肉質な体系の少年。記憶では別クラスの男子だったはず。強張った表情のロイとは違い、相手の顔は非常に安堵していた。


「おいおい 相手があの常敗無勝のロイとかラッキーにもほどがあるぜ」

「なんだあいつむかつくな」


 山札からロイにだけ聞こえる声でルムが憤慨する。気持ちは嬉しいが今は静かにしておいてほしいとホルダーを叩く。


「……いや、1回だけ誰かさんに勝ったんだっけか? ガイン?」


 がらがらの客席のほうを一瞥していやらしい笑みを浮かべる。その視線の先にはルムの初召喚の対戦で戦ったいじめっ子少年がいた。


「うるせーぞフール! あとで覚えてろよ、このやろう!」


 いじめっ子、ガインはわかりやすく激昂して野次を飛ばす。

 どうやら2人は顔見知りのようだ。


「はっ。あれはほっといてさっさとやるぞ」

「う、うん」


 フールと呼ばれた少年は意に介してない様子で首からかけた輝石に触れる。

 同じくロイも輝石に触れ。


『輝石よ!』


 決闘が開始された。


「俺のターンからだな!」


 手番を示す光はフールの石に宿り、山札のカードを引く。


「俺は【マギバ】を召喚!」


 手札から一枚選択して魔力を込める。

 カードが光り1羽の青い鳥が実体化した。


【マギバ】C

 [自然][種族・魔鳥]

 消費魔力2

 戦闘力3000

 ダメージ1

 ・[飛翔]この魔物の攻撃は、この魔物より戦闘力の低い相手の魔物では防御できない。


 マギバがフールの頭上を飛び回り、近くに降り立つ。あくまで魔物なので、人と並ぶとその巨大さがわかる。



「飛翔持ち……!」

「さらに俺は魔術符【鳥歌】を発動!」


【鳥歌】C

 [自然]

 消費魔力1

 自分の場に[種族・魔鳥]がいる時、その魔物を指定し、同じ消費魔力の魔物を山札から手札に加える。



「歌えマギバ!」


 見た目の凶悪さの割に美しい歌声を奏でる怪鳥。

 フールの山札から一枚せり出しそれを手札に加える。


「俺は同じ魔力の【アグバ】を手札に」


 ロイに同じコストのカードであることをであることを確認させて手札に加える。

 残り手札は4枚。盤面にはマギバ1体のみ。


「俺のターンは終わりだ」

「僕のターン」


 カードを1枚引いて手札に加え6枚。魔力1つ増えて4。


「相手は飛翔を持っている。わかるな」

「うん。今回はこれだっ!」


 カードを2枚選択し浮遊する4つの魔力を吸収させる。



「ビックマンティスを2体召喚!」


【ビックマンティス】C

 [無][種族・魔虫]

 消費魔力2

 戦闘力5000

 ダメージ1


 場に巨大な蟷螂が現れる。能無しだが、高いステータスの魔物を並べた。


「ビックマンティスで攻撃!」

「シャァァァァア!」


 低い唸り声を上げ、鎌を振りかざしてフール少年の陣地に突撃する。


「ちっ、受けるぜ」


 従えているマギバは何もしない。その鋭い鎌がフールを守る魔力障壁を切り裂いた。


「ぐぁっ!」


 死にはしないがそれ相応の痛みが走り、顔を苦痛に歪ませるフール。


「続けて攻撃!」


 それでもロイは攻撃の手を休めない。2体目のビックマンティスが先行していた1体目の陰から出てきて追撃を喰らわせようとする。


「それも受けらぁ!」


 ガラスのような音を立て、再び砕かれる障壁。


「ぐっ」


 それなりの痛みだろうが、鍛えているおかげか、ロイと違い膝をつくことはない。

 フールの残りライフは8。




「僕のターンは終わり!」


 ロイの首にかけた輝石の光が消え失せた。



(飛翔は自分よりも戦闘力の低い魔物を無視できる能力! 場に戦闘力の高い魔物を出しておけば……!)


 フールの場にいるマギバの戦闘力は3000。マンティスの半分程度の数値である。


「けっ、飛翔を防ぐためにでけーの並べたみたいだが」


 フールがカードを1枚引いて手札に、最大魔力が4に回復。

 手札の一枚を握り魔力を吸わせる。


「こいつはどうかな! 【ドグバ】!」


 その声に呼応するように、毒々しい極彩色の羽を広げ降り立った1羽の怪鳥。





【ドグバ】R


 [自然][種族・魔鳥]

 消費魔力3

 戦闘力3000

 ダメージ1

【毒羽】この魔物の攻撃時、手番終了時まで[種族・魔鳥]でない場の魔物全ての戦闘力をこの魔物の戦闘力だけ下げる。





「いけっドグバ!」

「ギィアアァァア!」



 見るものに嫌悪感を与える色合いの翼をはためかせて飛び立つ。

 その羽を撒き散らしながら。


「シャッ」

「ァァ?」


 その羽に触れたビックマンティスの様子がおかしい。

 身体の動きが鈍いのだ。


「こいつの撒き散らした羽には敵を弱らせる毒がある!」

「なっ!?」

「お前のそのカマキリ達の戦闘力は3000下がって2000!」


 ビックマンティスの戦闘力が相手を下回った。



「防御はしない!」


 ドグバが急降下。ロイにその嘴を突き立てた。

 呆気なく砕かれる障壁、フールと違いその勢いに押され後退りする。


「続けていけよぉ! マギバ!」


 青い羽の怪鳥が再び飛び立つ。

 その能力で高く上昇する。


「【飛翔】!」


 マンティスの戦闘力は下げられ、防御不可の一撃が降る。



「ぐぁっ!」



 凄まじいスピードで突きつけられた嘴がロイの障壁をまた砕いた。

 残りライフは8。


「俺のターンは終わり」


 フールの輝石の光がロイに移る。


「いてて……鋭い攻撃だなぁ」

「あいつ【飛翔】に特化させたデッキを組んでるな」


 ホルダーからルムが声を出す。


「おそらくこっちの防御は原則無視してダメージを与えてくる」


 飛翔は自戦闘力以下の敵を飛び越えていく能力だ。

 それを生かし、相手はこちらの戦闘力を下げることをしてきた。


「もちろんこっちの攻撃を防御し魔物を破壊されれば手数が減る。だから防御は好んでしないだろう。幸いこっちが先に動いているから今のうちにタコ殴りにしてやるぞ」


「了解!」


 カードを1枚引く。

 そのカードはーー


「結構近いところで喋ってたんだね」

「何ごちゃごちゃ言ってんだ気持ちわりーやつだなぁおい」


 独り言をぶつぶつ呟くロイを奇妙に思ったのかフールが言う。


「いくよ!」



『遥か空の彼方より来る』


「あん?」


 魔力のこもった言葉、詠唱。その力強さは聞くものに畏怖さえ与える。


『光を纏い龍を呼べ!』


 天にカードを掲げる。雷光が落ち、光が奔流する。

 再び目を開ければそこに立つのは1人の少女。毛先の色が変化する美しい銀糸、水晶のような角、自身より長い杖、その先端の魔石が輝いた。

 少女が長杖で魔力の残痕を振り払った。


「【天龍の少女ルム】を召喚!」

「やっぱデッキの中は窮屈で仕方ないぜ」


 首を鳴らして準備運動のように体を動かす。


「こいつ! こいつだ! 俺の時にも出たやつ!」

「こいつが噂の……」


 観客席でガインがヤジを飛ばしてきた。


「よーし、今日こそは全力を出せるぞ!」

「お願いね」

「任せろ! 【龍召魔法陣(ドラゴンアクセス)】!」


 ルムの足元に魔法陣が形成され、周囲の魔力光が収束して一つの塊になる。

 その光は凝縮するように小さくなり、やがて1枚のカードとなった。


「ほれ」

「わわっ!?」


 ロイに向かってカードを投げ、危なげに受け取る。


「そのカードのコストは下がってる。なんなら今呼べるぜ」

「これが……」


 その消費魔力量は0。ルムの効果で-5されているのだ。


「よしっ、ここは畳み掛ける!」


『優しき光よ』


 再び詠唱が始まる。


『照らされし者に新たな力を!』


 ルムの時よりも暖かく、優しい暖炉のような光がロイの手から発せられる。

 光が収束した時、出現したのはルムはもちろん、ロイやどの魔物も見下ろせる大きさの龍。

 山吹色の鱗が輝き、琥珀のような眼をもつ。翼は退化しているのか体に比べると非常に小さく、皮膜は欠けてしまっている。


「【灯龍トーラ】召喚!」




【灯龍トーラ】R


 [光][種族・龍]

 消費魔力5

 戦闘力7000

 ダメージ1

【龍の灯火】この魔物が召喚された時、自分のライフを1回復し、山札から1枚引く。




 トーラが振り向きロイを見やる。


「……我を呼んだのはお主か?」


 低く、荘厳。誰もが萎縮してしまうようなその声をロイは受け止める。


「は、はい!」

「ついでに俺もだな」


 ルムが横槍を入れると、その方をトーラは見た。


「……!? おおお、これは……」


 傅くように首を下げ、目を伏せる。


「願わくば貴女のお名前をお教えください」

「……俺? ルムだけど」

「ルム様、私を呼んでいただきありがとうございます」


 先ほどのロイとの態度とはうって変わって恭しい。


「えっと……おう! 頑張ろうな!」

「ありがたきお言葉」


 あまりの落差に驚いたロイがルムに尋ねる。


「ルムって実はすごい人なの?」

「なわけ」


「ええい頭が高いぞ劣等種めが!」

「れっ……!?」


 唐突な罵倒にまた面食らうロイ。


「我ら龍族は、龍としての(レアリティ)が絶対! この方はまさしく伝説級の(お方)であるぞ!」

「なんかわかんねーけど悪い気分じゃねーな!」


 無邪気に喜ぶルムをよそに釈然としないロイだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エタってなくて良かった [一言] 防御無視は大概パワー弱いイメージ。 会話に置いてけぼりにされる相手を思うと笑える。
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