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8枚目 破滅の翼

挿絵(By みてみん)

そういえば表紙みたいなの描いたんですけどよろしければ見てください。

「おい! そっちだけで盛り上がってんじゃねえ!」

「あっ」


 内輪で盛り上がっているうちに、フールがこちらを指差して震えていた。

 それは無視された怒りか、それとも目の前の強大な存在への恐怖か。


「この矮小なる小僧どものいざこざ程度に我を呼んだと?」

「まぁそう言わずに力を貸してくれよ。な?」

「ルム様のためならば……小僧! 生涯感謝するがいい!」


 渋々といった様子でルムの頼みを聞いた。トーラはロイの方を向き、首を近づけた。

 鱗にまみれた前足を突き出し爪でロイを指す。その爪の先に柔らかな光が灯る。



『我の力は呼び出したものに癒しと』



 ロイを包む障壁が回復し、ライフは残り9に。



『新たな知恵を与える』



 山札の上がせり出してロイの手札に加わった。

 トーラの能力は1ライフ回復と1ドロー。地味ながらにして、どのような場面でも腐ることのない汎用的な力である。


「後はどうとでもすると良い」

「ありがとうございます!」


 素直なロイの感謝に顔を背けるトーラ。


「ちっ。なんだよあの盤面、大型ばっかじゃねえか……」


 すっかり置いてきぼりなフールが舌打ちをする。

 それはそうだ。知らないうちに状況は圧倒的に不利になってしまっているのだから。それも見下していたロイが相手だとその苛つきは倍増だろう。


「灯龍トーラで攻撃!」

「呼び捨てにするな劣等種!」

「トーラさんお願いしますぅ!」


 なかばヤケクソ気味にロイが攻撃を指示。

 その巨躯を揺らしてトーラが動き出す。大口を開けて光を集め、ブレスを吐いた。


「【ダメージコンバート】!」

 とっさにフールが魔術符を提示した。




【ダメージコンバート】C

 消費魔力1

 相手のターンのみ発動できる。

 このターン、自身が相手の攻撃を受けるとき、破壊された障壁を魔力1に変換する。




「ぐうううっ!」


 光の光線がフールの体を貫いた。

 ビックマンティスの時より痛みが激しいのか、苦しげな声を漏らす。

 砕けた障壁が消えずにその場を漂っている。


「ダメージコンバートの効果! このターン、俺はダメージを受けるたびに魔力を得る!」


 砕けた欠片が光となり、魔力球となって浮遊した。

 相手の残りライフは7。


 現状ロイの方が優勢だが、フールは力の源である魔力を集め始めた。ライフの数では圧倒できるが、魔力が多いと何をされるか分からない。


「……」


 少しロイは考え、ルムを見やった。


「次は俺か?」

「……僕のターンは終わり」


 ロイの輝石が輝きを失った。


「おっ?」


 ロイは他の魔物で攻撃せずに手番を終えたのだ。


「これ以上攻撃しても悪戯に相手の魔力を増やすだけで、僕の魔力はいま0だから、次に体制を立て直した方がいいと思う」

「それがお前の判断なら仕方ねぇな」


 そういったルムの顔は全く残念そうではなく、むしろそこまで考えているロイに感心までしていた。冷静に状況を見れるようになった証拠である。


「へっ。ビビって攻撃をやめちまったのか? この腰抜けが!」


 ターンが回ってきたフールがロイを挑発する。

 1枚引いて手札は5枚。魔力は先程障壁を変換したのもあわせ6。


「俺は【アグバ】を召喚!


【アグバ】C

 [自然][種族・魔鳥]

 消費魔力2

 戦闘力3000

 ダメージ1

 ・[共鳴]自分の場に【マギバ】がいれば、【マギバ】とこの魔物を+1000して[飛翔]を持つ。




 2の魔力を使い現れたのは赤い翼を持つ真紅の鳥。

「[共鳴]発動! こいつは場にマギバがいればお互いを強化し合う能力がある!」



「アァアアァァァァァア!」

「キィアアァァァアア!」


 金切り声のように鳴くマギバ。それに呼応するように鳴くアグバ。

 鳥歌の時はなんだったのかというくらいの不快な鳴き声である。ロイは思わず耳を塞ぐ。


「続けて【エルバ】を召喚!」



【エルバ】R

 [自然][種族・魔鳥]

 消費魔力4

 戦闘力4000

 ・この魔物以外の[魔鳥]が攻撃するときのみ、その魔物の戦闘力を+1000する。

 ・[飛翔]



 続けて降りたったのは深い青、藍色の巨鳥。

 相手の盤面にはマギバ戦闘力4000、アグバ戦闘力4000、ドグバ戦闘力3000、エルバ戦闘力4000。


 ドグバ以外全て飛翔持ちである。



「ドグバで攻撃!」


「ギィッィィアァァァァ!」


 この中でもっとも耳障りに鳴くのは間違いなくドグバだろう。脳を直接刺すかのような鋭い声を上げて飛び立った。


「エルバの能力で攻撃する魔鳥は戦闘力を+1000される!」


 戦闘力3000→4000

 さらにドグバの毒羽の効果が発動し、体を蝕む羽が撒き散らされた。

 ロイの魔物にその羽が触れる。


「この毒羽の強さはドグバの戦闘力に比例する! エルバの分も食らっとけえ!」


 ルム戦闘力8000→4000

 トーラ戦闘力7000→3000

 ビックマンティス×2戦闘力5000→1000


「うっわ気持ち悪いなこれ……」

「汚らわしい羽めが!」


 ルムとトーラのような言葉を話す魔物はその毒による不快感を露わにする。

 全員動きが鈍くなり、苦しそうだが、ドグバ本体の攻撃がまだ残っている。


「ルム!」

「任せろ!」


 高くとぶドグバに向かってルムが跳躍。ドグバに飛翔は無く、その姿を捉える。

 手の長杖で思い切りドグバの腹を叩く。


「ギィギャアアァァァァ!」


 凄まじい声を上げて逃げようとするドグバの嘴に蹴りを見舞う。

 流石に耐えれず墜落するドグバの腹に長杖を突き立てて共に落下する。


「ロイ!」


「【ブレイブブースト】!」


 ロイが手札の魔術符を使用。ドグバとルムの攻撃力は互角の4000のため、ブレイブブースターの条件を満たした。

 ルム戦闘力4000→5000


「だあああああああ!」

「アアアアアアアアアアアアアアアア!」


 地面にそのままの勢いで落下。

 叩きつけられたドグバはより一層耳障りな断末魔を挙げて消え去った。落下の衝撃で上がった土煙の中から立ち上がった人影はルム1人。


「厄介な毒の鳥は倒したが、毒はターン終わりまで消えないか……」


 この毒羽の効果はドグバが消えてもターンの終わりまで継続され、戦闘力は下がったままのようだ。

 フールが続けて指示を出す。


「次にマギバ! 飛翔!」


 青き怪鳥が、再びその翼を広げ飛び立つ。先ほどより強大に。より邪悪に。


「エルバの効果で強化!」


 マギバ戦闘力4000→5000

 これでこの戦闘力より低い値の魔物を飛び越えて攻撃できる。

 ロイの場に、防御できる魔物は、

 いない。

 高度からの急降下。狂気の嘴がロイの障壁を貫く。

 残りライフ8


「ぐぅっ」

「続けアグバ! 飛翔!」

「アアァ!」


 赤い鳥が飛ぶ。マギバと違いその飛び方は真逆。上空に上がるのではない。ロイ達の陣営にまっすぐ飛んでいく。ロイの魔物の隙間を縫うように飛びロイに肉薄した。残り7。


「あがっ!」

「最後にエルバ!」


 藍色の鳥が翼を広げると、その翼の内側は情熱的な深紅。前2匹に比べるとその飛行速度はゆったりとしている。

 しかし毒の効果のせいか、だれもそれに追いつけない。

 しかもこの魔鳥、体格の大きなトーラの肩に乗ってトーラを煽るように鳴いた。


「アギャッ! アァッ! アァッ!」

「おのれ下等種風情がっ!」


 トーラがその巨躯を振るわせて噛みつこうとするも軽々と躱されてしまう。この鳥は非常に性格が悪いようだ。


「アァッ!」

「くっ……!」


 そのままロイに急降下。障壁を砕く。残りライフは6


「俺のターンは終わりだ」


 魔物についた体を蝕む毒の羽が消え去り、戦闘力が戻る。


「僕のターン!」


 輝石が輝き、ロイにターンが回ってくる。

 1枚引いて手札は5枚。魔力は6。


「おのれ劣等種が! 食らい尽くしてくれる!」


 トーラは先ほどの煽りのせいでご立腹の様子。特にエルバを睨みつける。


「ここで攻めてあっちの手数を減らして行きたいけど……」

「おそらく最低俺の攻撃は防御してくるはず。他の攻撃は無視する可能性が高い」

「じゃあまずは」


 ロイが指を指す。


「ビックマンティス2体で攻撃!」


 巨大蟷螂2匹が金切り声を上げてフールに突進。


「……防御なしだ!」


 その攻撃をフールはまたもや防御しない。

 残りライフ5。


「小僧我に行かせろ! ひと暴れせねば気が治らん!」

「トーラさんお願いします!」


 地響きがしそうなほど重い足音を響かせ、トーラが動き出す。

 口を大きく開けて光を集める。


「死ねぃ!」


 言っておくがダメージ1である。

 極太光線が相手陣営に向かって放たれた。


「防御なし!」


 光線を避けるように魔物達が避け、フールに直撃。残り4。ここまで防御なし。全てをその身に受けている。


「……行くぞ」


 ルムが動き出す。力強く大地を蹴り魔物群に飛び込んでいく。

 与えるダメージは2。一撃で通常の魔物の2倍のダメージを与える。ルムは流石のノーガード戦法もこの攻撃は無視できないと踏んでいた。

 しかし。


「防御しねえ!」

「何!?」


 その予想は外れることとなる。

 なんと全て防御なし。ルムはフールの目の前まで接近した。


「これは痛いぞ!」

「おう。こいや!」


 魔力を纏う杖で力の限りぶん殴る。魔力障壁2枚を貫通する衝撃がフールの体を吹き飛ばした。二転三転と地べたを転がり、止まる。

 相当痛みが来たのかよろよろと立ち上がるフール。


「へへっ今のは随分効いたぜ……!」

「ちっ……」


(まずい……!)


 後ろに跳び陣地に帰るが、ルムは少々焦っていた。

 ドグバを倒し、戦闘力低下効果が無いため、まだ勝負は慎重に出て来ると思っていた。


(意地でも魔物を残してきた! おそらくこの数の魔物を残して決め切れる「何か」がある!)


「ロイ! 次のターン決めてくる!」

「えっ!」


 ロイは既にターンを終え、フールのターン。


「そっちのチビはもう感づいているみたいだが!」


 カードを引いて手札は5枚、魔力は7。

 手札を1枚かざした。


「これで終わりだ! 【バードストライク】!」




【バードストライク】R

 消費魔力7

 このターン中、自分の[魔鳥]全ては攻撃した時戦闘力+5000、ダメージ+1、攻撃終了時に破壊される。




「……っ!」


 必殺級の極大魔術符。

 魔鳥が犠牲になる代わりに、飛翔と合わせて大量のダメージを与えることができるだろう。


 フールの魔鳥達がオーラのようなものに包まれる。

 鳴き声はさらに煩く、体は大きく。



「+5000っ!」


 エルバの攻撃時バフがあるため、

 マギバとアグバは実質+6000となる。

 さらにダメージが2になるため合計ダメージは6。単純な計算だけだと、ロイの場に防御できる魔物は……いない。



「アグバで飛翔! バードストライク!」



 敵を縫うように飛ぶ癖があるアグバ。先ほどの何倍ものスピードでロイに肉薄した。


 アグバ戦闘力3000 +1000(自身の効果) +1000(エルバの効果) +5000(バードストライク)


 よって総合計戦闘力10000。



「あぐっ!」


 障壁を貫通。ダメージ2。残りライフ4


 突進したアグバは限界を超えたためか、赤い体が色を失い崩れ落ちた。


「アグバが居なくなって共鳴効果は無くなったが、それでもマギバの戦闘力は9000! お前を倒すには十分だ!」


 マギバ戦闘力3000 +1000(エルバの効果) +5000(バードストライク)


 やって合計9000。



 マギバは超高度からの急降下。しかし先ほどとは高度と速度が段違いである。

 凶悪な嘴が降り注ぐ。


「ぐぅっ!?」


 ロイは崩れ落ちるマギバを見ながら膝をついた。

 残りライフは、2。



「やっぱりロイはロイだな」


 フールが嘲笑う。

 勝利を確信している。それもそうだ。防御不可の一撃はまだ残っている。

 その一撃が通れば勝ちなのだから。


「はぁっ……がっ……」


 痛みを耐えようやく立つ。その惨めな姿にフールがため息を吐く。


「ほんとガインは何でこんなのに負けたんだか」


 確かに使うカードは謎の高レアリティだが、所詮落ちこぼれは落ちこぼれ。

 さっさと引導を渡してやろうと、指示を出す。


「エルバ! 攻撃だ!」

「アァァァ……」


 エルバ戦闘力4000+5000。

 相変わらずゆったり。見下すような飛び方。しかしその高度には届かない。


 この一撃が決まればロイの敗北となる。

 しかしルムは。




 笑っていた。




「今だ! ロイ!」


 起死回生の1枚を。


「【ディフェンスコンビネイト】!」


 ロイが放つ。


「なにっ!?」





【ディフェンスコンビネイト】C

 消費魔力2

 このターン防御していない同種族の魔物が2体いる時、その魔物の戦闘力を合計し、2体で防御できる。



「ルムとトーラ、2人で防御!」


 戦闘力8000(ルム)+7000(トーラ)で15000。


「ルム様、我の尻尾に掴まりください!」

「ほいきた!」


 トーラの尾にルムが乗る。

 そのまま鞭のようにしならせ、ルムをエルバに向かって放り投げた。

 投げられるタイミングに合わせてルムも跳躍。凄まじい速度で空を切る。

 そのまま上空を飛ぶエルバに蹴りを喰らわせる。


「アァァァッアッ!?」

「この害獣が!」


 首に手を回しエルバの背後へ。トーラの方へ向かって思い切り蹴飛ばしてやる。


「アァァッ!」

「よくも先ほどは愚弄してくれたな!」


 その先には大口を開けたトーラが。

 それを目視したからかはわからないが、体制を整えようともがく。

 しかし蹴られた勢いが強すぎた。自分のテリトリーであるはずの空をなかなか思うように動けない。


「滅びよ!」

「アッ……」


 トーラの吐いた光線がエルバを直撃。

 その高熱で、残った一対の翼のみが地に落ちた。


「あぁっ!?……決め切れないだと!?」

「これで俺たちにダメージは与えられないし、お前を守る魔物はもういない」


 ルムが華麗に着地する。

 バードストライクの効果で自分の魔鳥は全て自滅している。

 フールの場には何も残っていない。


「クソッ! クソクソクソクソッ!」


 フールは膝をつき地面を殴った。その拳には血が滲んでいた。


「ロイがときがっ! 落ちこぼれのくせに! てめえなんかに負けるなんてありえねえ!」

「うっ……」


 顔を上げる。その顔は悔しさで満ちていた。

 散々馬鹿にしていた。つい先日敗北したガインも腑抜けていると唾棄した。悪意をたくさんぶつけてきた。

 その迫力に気の弱いロイはたじろぐ。


「……終わりか? もう無いならさっさとターンを終えろ」


 ルムのフールを見る視線はとても冷めていた。

 哀れなものを見る目だ。


「終わりだよ! クソが! くだらねー試合だ!」


「僕のターン……」


 ロイの輝石に光が灯る。その顔はどこか浮かない。


「お前は勝った。勝ったやつがそんな顔すんな」

「……うん」

「ちょっくら行ってくる」


「ルムで、……攻撃」


 ロイが攻撃の指示を出す。

 ルムは魔物のいない陣地をゆっくり歩き、フールの前に立った。

 まだフールはぶつぶつと文句を言っている。


「最後だ。俺らの勝ちだ」

「チッ」


 フールが顔を上げると、そこにはいい笑顔のルムが。


「お前みたいなやつを倒すの」


 杖を振り上げる。


「すっげースカッとするぜ!」


 その言葉と共に。


 フールは力強く殴られ、吹き飛ばされた。


 ライフ残り0。ロイの勝利である。

設定として[飛翔]軸の魔鳥は、防御を捨てて殺意を高めている上に、魔鳥達がそれぞれサポートし合うようなカード群なので、切り札の【バードストライク】は攻撃する順番を気にしないといけない結構扱いの難しいデッキだったりします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] フールのような人、現実でもいる感じですね ノーマークの人に負けると悪態をつくような 特にゲームの勝敗=個人のステータスな世界だと彼のような考えが沢山いそう [一言] 弱い主人公をサポートす…
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