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Confession phobia  作者: nEin
9/28

9.教えて


今回は、ちょっとシリアスめになってます.

ですが、シリアスだから構えずに気楽に読んでいってください.



「ミズ子ちゃん…!」

「んぐぐぐん…//」


恋人たちは手と手を取り合いながら2人だけの世界に入り込んでいる.

置いてきぼり感がハンパない.


ぼーっと2人の様子を眺めていると、強い力で腕が引かれた.

!?

声を出す暇もなく部屋の外に連れ出された.


「何で出るの??」


ズビシッ、勢いよくデコピンをされた.

痛ったい、非常に痛いんだが.

睨み付けると、また口だけ動かして犬島は言った.

“せっかくなんだから、邪魔しちゃ悪いでしょ.”

そういうことか.


リビングに移動し、しばらく本を読んだ.

(もちろん、その間犬島は放置で.)

20分くらい経った頃だろうか.

ふと疑問が頭をよぎった.


「ねぇ.言葉がなくても、話してること分かるもんなの??」

「……分かるよ.」


もう舌の痺れがなくなったんだろう.

犬島は流暢に喋った.


「好きな人が相手なら、言葉なんてなくても言いたいことは分かるもんだよ.」


優しく私のほっぺたを撫で、犬島はいつものように微笑んだ.

“大好きだよ、笑ちゃん.”


そんな風に、口が動いたような気がした.

へへっ.なんて照れ笑いを浮かべ、犬島は頭を撫でてきた.

ダメだ、やめろ.

こんなところで絆されるな私.しっかりしろ.


「……自分でクサい台詞だとは思わんのか.」

「∑えーー!酷いよ笑ちゃん!!」

「ばーか.」


何でだろう、頬っぺたが熱い.

気のせいだ気のせいだ.自分に何度も言い聞かせる.


「笑ちゃん?頬っぺた赤いよ??」

「∑そ、そんなわけないだろ//!」

「でも、熱とかかもしれないし….」

「ああ、タ○ソンの毒気には当てられたな.」

「コラ.」


またデコピンをされた.

地味に痛いから嫌だ.


「くそー….力じゃ敵わん.」

「女の子がくそとか言わない.」

「いいじゃん別に.犬島には関係ないだろ.」

「関係ないって…確かにそうかもしれないけど.流石に傷付くよ.」

「……私のことなんてほとんど知らないくせに.」

「何それ.それならちゃんと教えてよ.」

「…….」


上手く言葉が出てこない.

こんなこと、犬島に言いたくない.

これを聞いたら、何て思う?これを聞いても、私を慕ってくれる??

――お前は、私を傷付けたりしない??


「…笑ちゃん、」


俯く私の手を、大きな手がそっと包み込んだ.

温かい.

顔を上げると、優しく微笑む顔があった.


「大丈夫だから.」


本当??

言葉には出さないが不安な気持ちが顔に出ていたんだろう.

犬島は、私の頭を引き寄せた.


大丈夫、大丈夫.


何度も繰り返しそう言ってくれる.

犬島の肩から伝わる鼓動が何だか心地いい.


「私は、自分のことを女として見られるのが嫌なんだ.」

「どういうこと?」

「女として見られて、告白されるのも苦手なんだ.」


言葉だけでも男っぽくしておけば、好いてくれる人も少なくなるんじゃないかと思った.

強い言い方をすれば、女だからとバカにされることもなくなる.

髪も切った.

格闘技も習った.

スカートも制服以外には穿かなくなった.


「私は、男の人が嫌いだ.」

「うん….」

「男の人が怖いんだ.」

「…うん.」

「きっと、その根本は….」

「もういいよ.辛いでしょ….」


優しく背中を撫でてくれていた手が、今度は力強く抱き締めてくれる.

KY男め.男の人が苦手だって言ったばっかりなのに.

でも、何故だか犬島の腕の中は嫌じゃなかった.


「なぁ、」

「ん??」

「まだ私のこと、好きって思うのか?」


何言ってるの、

ふふっとおかしそうに笑いながら、犬島は続けた.


「変わらず好きだよ.笑ちゃんのこと.」

「…それなら、私に教えてほしい.」

「ん、何??俺が教えてあげられることなら何でも教えてあげる.」

「私がまだ、知らない気持ちを教えて.」



好きって気持ち.

特別って気持ち.

大事にしたいって気持ち.

安心するって気持ち.

全部全部、まだ私が知らない気持ち.

そういう気持ちを、犬島に教えてほしい.



彼なら、私を変えてくれるかもしれないって、頭の中の、もう一人の私が小さな声で呟いた.


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