10.愛情
皆さんこんにちは.
愛情には様々な表現方法がありますよね.
例えば、言葉で愛しいという気持ちを伝えたり、
あるいは行動で愛情を示す方もいるかもしれません.
皆さんはどんな風に愛情を表現していますか??
今回は、猫乃のお母さんも登場します.
「あなた、もうやめて!!謝るから!」
「うるせぇ!!俺に何回、飯がマズいって言わせりゃ気が済むんだよテメェは!!」
拳を振り上げる父親.
顔が赤黒く腫れ上がり、それでも殴られる母親.
小さな頃から、そんな光景ばかりを見てきた.
私の家庭に愛情があったのか、定かではない.
母親が受けてきた暴力は愛情の裏返しだったのか.
今でも、それは分からない.
男の人は怖い.
怒らせてしまったら私も母のように殴られるのではないだろうか.
心のどこかでそう思ってしまう.
成長するとともに、私は笑うことが下手になり口調は男っぽくなった.
自分を守るため、上手に生きていくため.
毎日殴り殴られる両親を見て、私は確信した.
この父親の遺伝子を受け継いでいる私は、この男と同じように大好きな人を傷付ける人間なんだと.
そんな風に自分について諦めた中2の春、両親は離婚した.
距離が離れた2人は仲が良くなったし、父親は何だか変わったようだった.
それでも、私の心の傷が癒えたわけではなかった.
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「笑ちゃんが知らない気持ち??」
「そう.どんな気持ちだかは察してくれ.」
「笑ちゃんが知らない気持ちかぁ….」
うーん、なんて頭を傾け悩んでいる.
私が逆の立場だったら、多分こんなに悩まない.
それは真剣に考えないということで.
それは相手に興味がないということでもある.
何て自分勝手な女なんだろう.
自己嫌悪の波にさらわれそうになる.
その波にさらわれてしまうのが怖くて、犬島のパーカーをギュッと握った.
「??」
頭にまた犬島の手が置かれる.
不思議に思って見上げると、またいつものように優しく微笑む犬島が私の瞳に映った.
「…何.」
「や、何か怖い顔してたから.」
「学ランの下にパーカーなんて着てる校則違反野郎が近くにいたらそうなる.」
「頭が金の人に言われたくありませーんw」
「私は先輩だからいいんだよ.」
「わ、こんなに理不尽な先輩見たことない.」
「そんな奴のこと好きだって言ったのはどこのどいつだ.」
「俺マニアックだからさww」
「∑マニ…ッ!?それは私が特殊な人間ってことかコノヤロー.」
思わず口走った嘘を拾って、楽しい会話に変換してくれる犬島は凄い.
どんな会話でも楽しいものに変えてくれる.
私の気持ちを変えてくれる.
それはまるで、深海に沈んだ錨を水上まで巻き上げ陸へと運ぶ船のように.
私の重い気持ちを、動けなくなったこの身体を、上へ上へと引き上げる.
「何かさ、俺らってお似合いじゃない??」
「は??」
「こうやって抱き合うのもいい感じだし♪」
「∑いい加減離れろ//!」
「えー、もうちょっと!!」
「却下.」
「∑何でそんな即答するの!!?」
ごとっ
犬島とやいのやいのしている時、背後から鈍い音が聞こえた.
リビングの扉の傍には、大きなスーパーの袋.
そして、その傍には驚いた顔をしている母がいた.
「どういうことなの!!!!」
大きな声が、母から発せられた.
パっと、瞬間的に犬島が私から離れる.
速い.忍者かコイツ.
「お母さん、違うんです、俺らは別に何も、」
「ちゃんとママにも言ってよー!そしたらもっと豪華な料理作れるように材料揃えたのに!!」
「ねぇ、お母さん、」
「こちらどなた??ママに紹介して頂戴っ!」
私や犬島の言葉を遮り、お母さんは喋る.
珍しく興奮気味である.
ストレスでも溜まってたのか.
「こちら、犬島一.私の後輩で、良くしてもらってる.」
「初めまして、犬島一です!猫乃先輩のことが好きなんです.」
「∑!?」
「あらまぁ!」
え、そういう自己紹介の仕方ありなのか.
「あの、先輩…??」
騒がしい声が聞こえたのか、顔をキスマークだらけにした小鳥遊と、鼻息を荒くしている魚津が扉から顔を覗かせた.
おい、そっちは一体何があったんだ.
詳しく説明しろ.
あらー、まぁまぁ.
なんて言いながら、母は手を叩き嬉しそうに言った.
「今日はパーティー日和だわね!!」
うん、お母さんはきっと上に居た2人だけじゃなく、
私たちのことまでそういう関係だと思ってる気がする.




