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可愛い弟を溺愛しながら生きていく  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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70/92

70.王太子殿下なのに舐められすぎだ

 すやすやと眠るルカが、はふっと欠伸をした。体を伸ばそうとして、私に抱っこされていることに気づく。そこまで熟睡していたのも凄いな。器が大きいというのは、ルカにも当て嵌まるのかもしれない。


「ルカ、降りるか? 抱っこのままがいいか」


 じっと見つめて、きゃう! と鳴く。どうやら抱っこを御所望らしい。抱いたままベスのエスコートはできないが、そこは王太子セシリオに譲るとしよう。わざわざ「庭まで追って」来てくれたのだからな。


 ベスに腕を貸し、セシリオが広間に戻る。王太子の登場に、わっと人々が群がった。隣で微笑み、大人しく華を添えるベスは口を開かない。何か問われても、こてりと首を傾けてセシリオを見つめた。代わりに彼が口を開く。繰り返される状況を、数歩離れた場所で見守った。


 ベスが話さないのは、少年だとバレるのを恐れてではない。声の低い女性もいるのだから、まだ声変わりしていないベスならば切り抜けるだろう。すべての返答をセシリオに任せることで、恋仲であると強調できる。加えて、ベスを守るセシリオの姿をアピールする形になった。


 可愛く寄り添う無力で爵位のない令嬢のフリでもある。釣り糸は細く切れないものを、釣り針は美しく鋭いものを。どちらも準備万端だった。


 視線の先、右斜めの方角で父上とクルス公爵が笑顔で話す。母上とカランデリア様もワイングラスを手に、公爵夫人を始めとする貴婦人の集団に交じっていた。どうやら話が盛り上がっているようだ。


「そちらの方はどちらの?」


「まだ幼い少女のようですが、エスコートの練習ですか?」


 始まったぞ。会場へ向けていた意識を集中させる。最初の一言は令嬢、どこの家柄の出身かと探りを入れた。次の棘を含んだ一言は男性だが、当主ではなさそうだ。まだ若く言葉選びが未熟だった。子供を連れてきたと馬鹿にする言い方を選んだ。


 王太子殿下相手に、格下の貴族が舐めた口を利くものだ。さて、セシリオのお手並み拝見といこうか。にやりと笑って様子見に徹する。ベスは笑顔のままだが、髪に触れる仕草で合図を送ってきた。「楽しみ」か、私もそう思う。


「少女? おかしな表現を使うものだ。ベスは私がエスコートする淑女なのに? 何をもって練習と表現したのかな。彼女に不足はないはずだ」


 ぴしゃりと言い切った。この様子なら、別に本当の婚約者を連れ歩いても平気じゃないか? なぜベスや私に協力を求めたのか。こういった違和感や直感は大事にしたほうがいい。たぶん、別の目的がありそうだ。

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― 新着の感想 ―
言ってない理由?本当の目的?気になりますね…。場合によっては、セシリオさんを!お仕置きする事に?w理由によっては大丈夫でしょうがw
>別の目的 それこそ舐めた口叩く連中を公の場に引っ張り出して潰すためでは? て感じですが 王太子が舐められすぎなの、なんか理由有りそうだなー
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