64.呼び戻された理由はリスト
小川近くで草を食むモニカとブリサを呼ぶ。アマンドも一緒に戻ると言うので、三頭が揃うのを待った。その間に敷物を畳んで片づける。
「どうぞ、お姫様」
「ありがとう、お兄様」
微笑むベスはやはり可愛い。満面の笑みでエスコートしたところ、足元でルカが騒いだ。
きゃうっ、きゃん! 鳴き声の必死さに「大丈夫だ。ルカも可愛いぞ」と話しかける。途端に尻尾を振りながら、へらりと口を開けて舌を見せた。それも可愛いと抱き上げ、モニカの背に飛び乗る。準備していたアマンドに合図し、ベスを間に挟んで走り始めた。
アマンド、ベス、私。この順番は強さや立場から決まる。ベスは戦えない女性設定なので、しばらく中央だろう。守られる立場というやつだ。
ルカは高い視点に興奮したのか、大きく尻尾を振ってきょろきょろと周囲を見回す。ツノの先が尖っているので、あまり顔を近づけると危ないな。今さら傷の一つや二つ構わないが、ルカが気に病みそうだ。たぶん、私達の話している内容を理解している。
霊獣と聞いて納得した。頭の良さというか、特別な個体だったのだろう。それで仲間からはじき出された。特別も良いことばかりではなさそうだ。頭を撫でてやり、見えてきた屋敷に目を凝らす。誰かが玄関先に立っているようだが?
「ご当主様だ」
アマンドの声に緊迫感が滲む。カランデリア様のモンタネール家と違い、我が家では一応父上が当主だ。実質、母上が最高権力者だが、一族で「当主」と呼ばれるのは父上だった。人影を確認し、間違いないと頷く。
「あと……フリアンか?」
「そうみたい」
ベスが同意する。遠い距離でも見えるのは、広い領地を駆け回って育つせいだろう。王都の貴族と比べられないほど、ウルティアの民は視力がいい。これは平民でも同じだった。高い建物に視界を遮られることがない生活のせいか。食べ物や空気も違うからな。
振り返って確認するアマンドへ、速度アップの合図を送った。速くなった分、ブリサも追いかける。モニカがぶるんと首を振って、力強く大地を蹴った。
「ただいま戻りました」
ベスに手を貸して紳士的に下してから、振り返って一礼する。一般的な貴族と違い、ウルティアでは女性は敬う存在だ。子を産み一族を増やしてくれる。ベスは違うが、この場合は女性扱いなので問題ないだろう。
「戻りました、お父様」
優雅に会釈するベスに頷いた父上が、隣で待つフリアンを促した。
「呼び戻す形になり申し訳ありません。我が家での夜会の招待状と、参加させる貴族リストです」
参加する貴族は辞退できるが、参加させる貴族は強制か。クルス公爵家から「是非に」と念を押した貴族のリストだろう。つまり王太子セシリオの邪魔をする者のリストだ。
「すべて記憶して参加しましょう」
にやりと笑った私に、なぜかフリアンが頬を染める。黙って控えるアマンドといい、変な奴ばかりだな。




