33.外へ出たらお兄様になる!
簡単に纏めれば、第一王子であるセシリオに群がる令嬢達を退けること。本命の令嬢がいるので、我々に火の粉が飛ぶ心配は要らないこと。第三王子を自称するアレがロエラ公爵経由で関わってきそうなこと。
指折り数えて、足りない部分に気づいた。国王陛下は政は優秀だが、下半身が緩いこと。
「その言い方だと、違う意味に取れますね」
シルベストレは言葉遊びが大好きだ。得意と言ってもいいだろう。私などよりよほど上手に言葉を操る。その意味でも、可愛さの面でも、シルベストレが跡取りになればいいと常々思っていた。当主自身が腕っぷしの強い必要はない。まとめ役と考えるなら、頭の回転が速いのは利点だろう。
やはり私の弟は最高だな。
「いろいろ指摘したい部分はあるが、大体は合っている」
セシリオは苦笑いしながら頷いた。嘘はないので、訂正する気はないのだろう。
「殿下、本当に彼女達で大丈夫ですか?」
「フリアン、心配するな。我らはウルティア一族の総領家だぞ」
にやりと笑って返す。懸念するのは自由だが、ウルティア一族の能力を疑う言葉は聞き捨てならない。隠した意味に気づいたのか、フリアンは静かに一礼した。驕ることはないが遜る必要もないぞ。変人は多い分だけ優秀なのが、ウルティアだからな。
そこからは詳細を詰めていく。これから王家と対等の契約を結ぶ辺境の一族の令嬢を、王太子が見初めた。一目惚れで口説き、王宮で逢瀬を始めたばかり。婚約前の見極め段階なので、それぞれの側近や兄が付き添う。
「私は兄役を務める」
「では、外へ出たらお兄様とお呼びします」
いい子だと頭を撫でた。灰銀の髪は柔らかく、手触りが最高だ。勝手に撫でないよう、セシリオに言い含めておかないと。微笑み合って決めた内容に、セシリオから反対はなかった。
「王家と対等という表現は曖昧だが……どの程度か」
跡取り二人で王宮に乗り込み、王太子の敵を排除する。王妃や側妃との軋轢は生じないだろう。王は政に関しては問題ないので、これも無視して構わなかった。貴族との格や地位をはっきりさせたい。父上の言い分はもっともだった。
もし、アルダ王国と同じ辺境伯であるなら侯爵位相当となり、公爵家とは遣り合えない。父上の懸念に、セシリオが答えた。
「王家と対等の契約だ。他国の王族扱いになる」
一つの国の中に、二つの頭が生まれる。その弊害を彼は見落としているようだ。友人や側近なら忠告するが、いまの私の立場では何も言わずに呑んだほうが美味しい。ちらりと視線を寄こしたセシリオは、ゆっくり目を伏せて開いた。その仕草に、やれやれと首を振った。
こちらの思惑を知っていて、なお……抑えこむ気でいるらしい。




