123.兄妹ではなく姉妹として?
リエラ侯爵はある程度の事情を知っているらしい。彼のほうから、王城への招待を提案された。
師匠で執事のバシリオと交渉した王子は、キロス王国の第三王子だった。武術に長けており、一人で他国へ赴いても無事に帰れると判断され送り出されたのだ。当初は騎士団長でもあるリエラ侯爵が代理を申し出た。ところが、王は「一国と肩を並べる一族と交渉するのに怖気づいてどうする」と王子の派遣を決めた。
このくだりを聞いたとき、口元が緩むのを抑えきれなかった。我が一族を認める発言と配慮に、直に感謝を伝えたい。その思いも手伝い、王城への招待を素直に受け入れた。あとは事前に衣装を用意する必要があるか。
「二人ともドレスでいいのか?」
「私が、ドレス?」
リエラ侯爵の言葉に、首を傾げた。自分の姿を確認するように一度俯き、顔を上げて疑問を口にする。
「女性なのだから、一般的にはドレスだろう」
当たり前のように言い切られ、一般常識ではそうなるかと納得する。だがドレスは断った。隣でベスが頬を膨らませて抗議する。
「一緒にドレスがいいわ」
「ベス、エスコート役がいないぞ」
ここでリエラ侯爵が割り込む。
「エスコートなら私と弟が担当する。問題ない」
決定事項だと笑い、ドレスの手配をしなければと言い出した。少し揉めたが、最終的に私が折れる形で決着する。代わりにルカの同行が許された。ドレスにもスリットを入れ、動きやすくすることを認めさせる。互いに妥協した結果、ドレスで姉妹を装う形になった。
「宿はわかっているから、後で連絡させよう。有意義なお茶だった。感謝する」
引き際も綺麗に去る背中を見送り、私達も宿へ引き上げた。昼間注文した服は明日届く予定なので、今日の用事はない。部屋のベッドに寝転がり、目を閉じて大きく息を吐いた。少し休んだら、ルカやモニカ達の様子を見てこよう。
「お嬢様! 若様!!」
どんどんどん、激しく扉を叩く音で目を開ける。休みを邪魔されるのは腹立たしいが、声の主に心当たりがあった。商隊主だったソサ商会の会長だろう。この街は彼の店舗があり、耳も目も行き届いているはず。リエラ侯爵との接触が伝わったのだ。
「どうぞ」
扉を開けてやる気はないので、促すだけに留めた。まだ厩舎へ出かけるつもりだったので、内鍵は掛けていない。遠慮がちに扉が開き、ソファーに座るベスに一礼した男が入室した。
「私を通さず、交渉されては困りますぞ! 若様」
「リエラ侯爵側からの接触だ。不可抗力というやつだぞ」
やっぱりこの件だったか。呆れながら彼の苦情を聞き、数日後に王城へ呼ばれる話を伝えた。この男に伝えれば、父上達にも連絡が届くはずだ。そのための同行者なのだから。




