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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
あとがきと登場人物紹介

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あとがき(執筆経緯、インスパイアされた書籍、新作について)


『辻沢のアルゴノーツ』~傀儡子クグツエニシは地獄逝き~を読んで頂きありがとうございました。クロエ、ミヤミユ、フジミユはじめ、ユウ、夜野まひる、鞠野先生、紫子さんら、傀儡子さんたちの冒険に最後までお付き合いくださり感謝します。


●執筆経緯

(この作品は、他サイトにて1年間にわたって連載したものを大幅に加筆修正したものです。以下で述べるのは初稿の状況ですので、ご了承ください)

 『辻沢のアルゴノーツ』を書き始めたのは2017年1月です。それから2018年6月に第一部を書き上げますが、第二部を書き出して2か月経った8月で1年間中断します。ミヤミユが傀儡子神社の調査を開始する場面で筆が停まってしまったのです。傀儡子神社を実測するって一人でどうやるの? ということが解決できなかったです。はじめは鞠野フスキとフジミユに手伝わせようとしたのですが、なんか違ったのです。それで筆がすすまなくなっての放置でした。

 そして一年後の2019年11月に再開します。傀儡子神社の調査をユウに手伝わせるというアイディアが降って来たためでした。やっぱり困ったときは主人公(語り手であるクロエ、ミヤミユ、フジミユの三人は各部の主人公ですが、物語全体を通しての主人公はユウです。ユウが夕霧になるまでの物語なのです)だなって思った瞬間でした。

 そしてその時、具体的な実測方法も思いつきます。とにかく自分が好きなもの全部ぶっこんじゃえと思ったのがよかったです。それが作中でも言及した『建築と庭』西澤文隆「実測図」集(建築資料研究社)です。こんな美しい本はないという思いを作品に反映させるため、ミヤミユに手書きで実測してもらうことにしました。ただ、小説を書いているとキャラが作者を超えてゆくことがあります。ミヤミユの変態図面はこっちの思惑そっちのけで出来上がったものでした。

 こうして執筆は再開されたのですが、やはり遅々としてすすまない。こうなったらもう無理くりでも執筆の時間を持つようにしよう。という思いでWEB公開に踏み切りました。それが2020年11月24日でした。3月末までは既存の箇所を予約公開していればよかったので苦労はなかったのですが、それが無くなり書き足したストックも尽きた6月ころからは毎日が書き下ろしでした。今から思うとほんとよく物語が破綻しないですんだと思っています。プロットを作ってから書く人には信じられないかもしれないですが、毎日アイディアを絞り出して2000字を目途に書き続けていました。そんなで仕上がった第二部でしたが、自分で言うのもなんですが、奇跡的なラストになったと思います。

 第三部に入って一番苦労したのは、どうやってけちんぼ池に行くかという方法でした。地獄への道なんて分からないですから。サノクミという人物を登場させ、サキのおばさんとの交換日記、そして五芒星のアイディアを思いつかなければフジミユは今でも辻沢をさ迷い歩いてたんじゃないでしょうか。

 そしてこの作品を完結させられた一番の要因はフジミユの「場所の記憶を読む能力」でした。これ冷静に考えると、一人称小説という、パースペクティブに限界がある設定での反則技と言ってもいいかもしれない。だって、話者が知らないことが糸を読むことで分かってしまう。いわば神の視点ですから。でも、これのおかげで、第三部のテーマである「探査と問題の解決」が可能になったと言えます。だからオッケーとしましょう。

 最後の青墓でも停滞しました。ミヤミユがどこにいてどうしているのかが分からなかったからです。最初の想定は、ひだる様になっていて戦っているうちに出会うというものだったのですが、青墓に着いてみると、どうも違う。そうじゃないという思いが消せなくなってしまいました。それで、必要以上にフジミユたちは青墓をさ迷うのですが、あー、これってバトロワ(ゲームジャンルのバトルロワイヤルシューターのことです)なんだなって思ったとき、「人生は連続する最適解の結果だ」(人生の選択肢はたくさんあるけれど人が選べるのは一つだけ、ならばそれがどんな結果になっていようとも、いつだって最適解だったのだ)という思いとともに解決策を思いつきました。結果は読んでいただいたとおりです。今振り返っても綱渡り続きの連載期間でした。


●インスパイアされた二つの書籍(長くなりますので興味ある方だけどうぞ)

★上間陽子氏『裸足で逃げる』(太田出版 2017)

 皆様も記憶されていると思いますが、数年前読書界では生活史ブームというのがあって、岸政彦氏の著作を筆頭にフィールドワークの面白い書籍がたくさん出版されていました。そのブームに乗って何冊かの本を読んで一番興味深かったのが『裸足で逃げる』でした。この本は沖縄に生まれた上間氏が自分が成長する中で、否応なしに風俗のような劣悪な環境に身を置かざるをえなくなる仲間を見て来た経験を原点に、そういった女性たちの生きざまを活写した素晴らしいエスノグラフィーです。

 その書籍の前書きに上間氏自身が体験したことが述べてあります。そしてそれは「atプラス」(28号)という雑誌で岸氏が執筆した「タバコとココア」というエッセーの中のインタビューと同じ内容でした。その二つの文章には、前者は著者としてエスノグラファーとして理性的な文言で、後者は沖縄の女性としてインタビュイーとして口語的な言い回しという違いがありました。それら二つの文章を読み比べて、インタビューされる側がインタビューする側になるエスノグラファーの誕生を見た気になったのでした。そしてそれは一人のフィールドワーカーが自分の目の前に出現し、クロエというキャラクターが結実した瞬間でした。(クロエのモデルが上間氏だとは言っていません。念のため)

 その頃、『ラストゲーム・オブ・辻女ヴァンパイアーズ』という辻沢を舞台にしたヴァンパイア小説を書き上げたばかりでした。舞台として突然目の前に広がった辻沢は作者にとってもまだまだ未知の世界でした。青墓の杜で主人公のレイカが聞いた「わがちをふふめくぐつらや」という問いかけの謎が未解決のままだったりしていたのです。それは執筆時に突然頭に思い浮かんだ言葉を記しただけだったので「くぐつ」って何? という疑問として残りました。

 それで次の作品は辻沢の「くぐつ」についての話にしようと思っていた矢先に、上間氏の著書です。フィールドワーカーこそ「くぐつ」が息づく辻沢を探求するにうってつけの語り手だと思ったのでした。カフカの『城』の測量士みたいじゃんって思いました。こうしで最初の語り手がフィールドワーカーを目指す女子大生のクロエに決定しました。

★今福龍太氏『クレオール主義』(ちくま学芸文庫) 

「ワイエスの村―場所論2」で今福氏はこう語ります。

「ドライビング・シートに体を沈めて車を運転しながら都市のうえに描くトランジットの軌跡そのものが、わたしたちにとっての都市経験を語るエクリチュールへと近づいてゆく。あるいはまた、景勝の地をバスやレンタカーを利用して周遊しながら見て回る観光行為そのものが、一種の「土地の記憶」の新しいモードとして成立してゆくこととなる」

 何を言ってるのか分からんという方のために翻訳しますと、「エスノグラフィーというのはこれまではエスノグラファーが対象世界を『書く』ものだったけれど、ドライブや観光といった行為そのものが、()()()()()すでにエスノグラフィーなんだよ」と言っています。これを受けて、今福氏は「オート・ライティング」という言葉で、「現代社会が自己言及を行ってゆく無意識のシステムのこと」と定義します。

 これを読んだとき「何を言ってるの?」と混乱しました。なぜなら自分がエスノグラフィーとして理解していたものとはまったく違ったからです。だって、誰かが書かなければ、そのオート・ライティングされたものは、その人の記憶の中だけのものでしかないじゃないですか。心の中にしかないものをどうやって他人は「読む」ことが出来るの? って思ったからです。

 フジミユの「場所の記憶を読む能力」とは、この今福氏のポストモダンな言説に対して、たけりゅぬが精いっぱい頭をひねって出したファンタジー寄りなアンサーでした。そのため、第三部のタイトルは「書かれた辻沢」なのです。今福氏のこのエッセーで引用されているジョン・ドースト『書かれた校外』を真似ています。この著書自体は翻訳がないのでまだ読めていないのですが…。

 このようにたけりゅぬが小説を書くことは、日々の読書の疑問や感動のアンサーとしての側面もあります。それが論文やレポートでなくファンタジー小説になるのは、専門家や研究者のように体系的に考えたり先行論文をトレースすることに情熱を感じられない性格だからかもしれません。

 最後に申し上げなければいけないのは、鞠野先生がフィールドワークについて言っていることは鵜呑みにしないでほしいということです。彼には傀儡子さんたちを地獄に送る役目があるから、ああいう物言いになっています。特に「俎板の鯉になれ」は絶対にダメです。

 この作品でフィールドワークに興味を持たれた方は、ご自分で図書館や本屋さんの社会学や文化人類学のコナーにある書籍に当たって勉強して欲しいと思います。実践の本も面白い(岸氏の本は若い優秀なフィールドワーカーの著作を紹介してくれています)ですが、本気でフィールドワークしたい方は、入門レベルの概説書から読まれるのがいいかと思います。


●新作について

 ●公募用作品

 現在、辻沢もの(シリーズ名「辻沢オープンワールド」)で培ってきた世界観を別の場所に拡張しての新作に取り組んでいます。

 タイトルとロケーションはまだ秘密です。

時代は平安・昭和・未来を縦断し、最後はある土地を宇宙と繋げるお話になります。

 詳しいことはまだ話せませんが、6月下旬完成を目標に取り組んでいます。

『辻沢のアルゴノーツ』の続編『ボクらは庭師になりたかった』や、『少女がやらないゲーム実況』などで突き詰めた小説創作の方法が、この作品で完成すると思いますのでどうかご期待ください。

 

 ●なろう投稿用作品

 来週9日21:00から学園異能バトルファンタジー

『すたうろらいと・でぃすくーる』を連載します。

【異能力JK達の終わりなき5次元バトル】

 私立希望の時学園。七夕の朝、幼馴染きららの教室が爆発した。手つなぎっ子の〆子を残し、俺はきららの救出へ走る――そこで見たのは、時間の揺り戻しと、五次元生命体Gの異様な姿だった。

“エントロピーの種”を巡り、学園では少女たちがストライパーとボーダーに分かれ戦いが繰り返されている。十字石スタウロライトを鍵に、終わらないループの裂け目へ踏み込むダーク寄り学園ファンタジー。

 毎日21:10更新です。

 お楽しみに。 


 以上、改めまして『辻沢のアルゴノーツ』~傀儡子クグツエニシは地獄逝き~を読んでくださり本当にありがとうございました。


それでは皆様、また辻沢のどこかでお会いしましょう。


たけりゅぬでした。


(毎日2エピソード更新)

このあと21:10に「登場人物紹介」を公開します


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


★/いいねしてくれた方、ありがとうございます

とても励みになってます


たけりゅぬ

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