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情報屋との密談

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グラン・ドレイクとの話は、予想通り、胸糞の悪い結末だった。奴がヴァルトール伯爵の裏切りを本気で裁く気があるのか、それすらも怪しい。国家の安寧のためには必要悪を容認する、か。その犠牲になる兵士や民衆の顔を思い浮かべたこともないのだろう。


(……騎士団に任せてはおけないな)


俺は、ドレイクの執務室を出ると、その足で兵舎には戻らず、首都エルドラードの薄汚れた裏路地へと向かった。人目を避け、フードを目深に被る。目的地は一つしかない。


錆びて傾きかけた黒猫の看板。固く閉ざされた黒い扉。俺は、慣れた手つきで扉を三度叩いた。


ギィ……と音を立てて扉が開く。埃と、黴と、得体の知れない香料の匂いが混じり合った空間。カウンターの奥で、フードを目深に被った店主が、顔も上げずに言った。

「おや、これはこれは。噂の『双炎の厄災』様のおなりとはね。また面倒事を持ち込んできた顔をしているじゃないか、リオン坊」


「アンタにしか頼めない、厄介な代物だ」

俺は、そう言って、カウンターの上に、先日の任務で密かに回収しておいた、あの禍々しい紫色の薬瓶を置いた。


ギデオンは、その薬瓶を一瞥すると、顔を上げた。フードの奥の目が、鋭く光る。

「……なるほどねぇ。こいつは確かに、厄介物の匂いがプンプンする」


「敵国の工作部隊が、これを使ってきた。これを飲むと、連中は理性を失い、自らの身体を内側から焼きながら、俺の『深紅の炎』に酷似した、しかし制御不能な炎を放って突っ込んできたんだ」


「ほう、お前の炎に酷似した、だと?」

ギデオンの表情から、いつもの飄々とした笑みが消えた。


「ああ。だから、あんたに調べてほしい」俺は、ギデオンの目を真っ直ぐに見据えた。「この薬の正確な成分、製造元、そして……こいつと、俺の炎との関連性を、徹底的に調べてくれ」


俺のその言葉の重みを、ギデオンは正確に理解しただろう。これは、単なる敵の兵器の分析依頼ではない。俺自身の力の根源に関わる、極めて重要な調査依頼だ。


彼は、薬瓶を指先で弾きながら、やれやれといった口調で言った。

「生命力を魔力に強制変換する禁術の類か……。しかも、特定の個人の魔力パターンを模倣する機能付きとはな。実に悪趣味で、金のかかる代物だ。……いいだろう、引き受けた」


ギデオンは、薬瓶を慎重に懐にしまった。

「だが、リオン坊。お前も分かっているだろうが、これは高くつくぜ? 俺の持つ情報網を総動員しなきゃならん。それに、お前さんの力の秘密にこれ以上首を突っ込むってことは、俺の命も、安くはなくなるんでね」


「構わん。必要なものは、全て用意する」


「へっ、威勢がいいねぇ」ギデオンは、そこでようやく、いつもの皮肉な笑みを浮かべた。「まあ、いいだろう。お前さんの師匠への『貸し』も、まだ山ほど残っていることだしな。これも、その一部ってことにしておいてやるよ」


彼の言葉に、俺は少しだけ救われたような気がした。


「ただし、結果が出るまでには、しばらく時間がかかる。それまで、お前さんは、下手に動くんじゃないぞ? 」


ギデオンの忠告に、俺は黙って頷いた。彼にこの薬瓶を託した以上、俺は、彼の調査結果を待つしかない。


俺は、ギデオンに礼を言うと、再び、首都の薄暗い裏路地へと、その姿を消した。

自分の力の紛い物が、兵器として利用されている。その事実は、俺の心に、深い怒りの炎を灯していた。

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