魔晶石の守護者、試される覚悟
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ミリア・ヴァレンタイン、そしてセレスティア先輩とレナード先輩を大書庫に残し、俺たち――リオン、エリアーナ、ロイ、フィン、そして引率のアストリッド教官――の五名は、ロイが先行調査で発見した、遺跡の心臓部と思われる巨大な魔晶石が安置された広間へと、覚悟を決めて向かっていた。星図盤が示した通路は、これまでのどの通路よりも厳粛な雰囲気に包まれ、古代の魔力が色濃く漂っている。
ロイが先行して道を切り開き、その後にフィンとエリアーナ、そして俺が続き、最後尾をアストリッド教官が固めるという陣形だ。ロイの報告によれば、この通路自体には目立った罠はなかったという。彼が既に解除したのか、あるいは元々存在しなかったのかは定かではないが、そのおかげで俺たちは比較的スムーズに、しかし最大限の警戒を払いながら進むことができた。だが、奥へ進むにつれて、肌を刺すような不気味なプレッシャーが、徐々に増していくのを感じていた。
「……この先だ」
ロイが、短い言葉と共に足を止めた。彼の視線の先には、巨大なアーチ状の入り口があり、その奥から、強烈な魔力の光が漏れ出ている。間違いない、あそこが魔晶石の間だ。
俺たちは、息を呑み、慎重にその入り口をくぐった。
そこは、ドーム状の天井を持つ、広大な円形の広間だった。壁や床は、磨き上げられた白亜の石材でできており、そこには精緻な幾何学模様が刻まれ、淡い光を放っている。そして、広間の中央。そこには、天を突くかのような巨大な、青白い光を放つ魔晶石が、まるで浮遊するように鎮座していた。その魔晶石からは、遺跡全体に魔力を供給しているであろう、圧倒的なエネルギーが放出されており、肌がピリピリとするのを感じるほどだった。その神々しいまでの光景に、俺たちは一瞬、言葉を失った。
だが、その感動は、すぐに戦慄へと変わった。
魔晶石を守護するように、広間の四隅に、四体の白銀の影が静かに佇んでいたのだ。それは、先ほど俺たちが戦った石像兵とは明らかに異なる、より洗練され、そして比較にならないほど強力な気配を放つ存在だった。全身を流麗な白銀の金属鎧で覆い、その手にはそれぞれ異なる形状の武器――鋭く研ぎ澄まされた長剣、恐ろしいほどの重量感を放つ戦斧、魔力を帯びた矢を番えた大弓、そして先端に輝く宝珠を嵌め込んだ魔法の杖――を構えている。その姿は、まるで古代エルヴンの伝説に謳われる、精鋭の魔法騎士の霊体が、実体を持って現れたかのようだった。その兜の奥で、紅蓮の魔力光が、静かに、しかし確かな敵意をもって俺たちを捉えていた。
「……間違いない。あれが、この魔晶石の守護者たちだわ」
エリアーナが、息を呑んで呟く。その声は、わずかに震えていた。
「一体一体の魔力量が、先ほど書庫前で戦った指揮官機のゴーレムすら凌駕している……! しかも、四体……!」
アストリッド教官でさえ、その表情には驚愕と、そして極度の緊張の色が浮かんでいる。
その時、四体の守護者の兜の奥の紅蓮の光が一斉に強まり、彼らは、まるで示し合わせたかのように、同時に動き始めたのだ。その動きは、石像兵のようなぎこちなさは一切なく、滑らかで、力強く、そして一切の無駄がない、熟練の戦士のそれだった。
「――来るぞ! 全員、戦闘態勢!!」
アストリッド教官の鋭い号令が、広間に響き渡る。彼女は、自ら長剣を抜き放ち、俺たちの前に立ちはだかるように構えた。その背中からは、王国最強と謳われた魔法剣士の覚悟が、ひしひしと伝わってくる。
「フィン、ロイ、私と共に前衛を固める! エリアーナ、中距離から魔法支援と回復を! リオン・アッシュフォード、君は最後尾から全体の戦況を見つつ、炎魔法で前衛の援護と敵の攪乱を行え。ただし、くれぐれも無闇に力を振るうな。私の指示の範囲内で動け!」
アストリッドの指示は的確で、迅速だった。俺も、頷き、右手に意識を集中させる。革手袋の中で、深紅の炎の魔力が、静かに、しかし力強く脈打ち始めた。
フィンとロイが、アストリッドと共に前衛を固め、迫りくる白銀の守護者たちに果敢に挑みかかる。戦斧を持った守護者が、地響きを立てながら突進し、アストリッドにその巨斧を叩きつける! アストリッドは、それを長剣で受け流し、強烈な火花を散らす! 剣士タイプの守護者は、フィンの脇をすり抜け、エリアーナを狙って高速の突きを繰り出す!
「させません!」
フィンが、身を挺してエリアーナを庇い、その剣を盾で受け止めるが、あまりの威力に体勢を崩される。ロイは、弓兵タイプの守護者が放つ魔力の矢を、俊敏な動きで回避しながら、その懐に潜り込もうとするが、弓兵は巧みに距離を取り、正確無比な射撃を続けてくる。そして、魔法使いタイプの守護者は、杖の先端に強大な魔力を集束させ、広範囲を薙ぎ払うような破壊魔法を詠唱し始めていた!
俺は、後方から戦況を見極め、威力を抑えた炎の矢を数発放ち、フィンの盾をすり抜けようとする守護者の剣の軌道をわずかに逸らし、また、魔法使いタイプの守護者の詠唱を妨害するように、その足元に小さな爆炎を発生させた。俺の介入は、あくまで「援護」の範囲内に留め、目立たないように細心の注意を払っていた。
だが、守護者たちの力は、俺たちの予想を遥かに超えていた。彼らの連携は完璧で、個々の戦闘能力も、アストリッド教官に匹敵する、あるいはそれ以上かもしれない。
フィンは、剣士タイプの守護者の猛攻を受け、その盾はボロボロになり、肩からは血が流れている。ロイも、弓兵の放つ追尾性能のある魔力の矢に苦戦し、回避するだけで精一杯だ。エリアーナの放つ水の魔法も、守護者たちが展開する不可視の魔法障壁によって、その多くが無効化されてしまう。
「くそっ……! 強すぎる……! これでは……!」
アストリッドが、戦斧の守護者と魔法使いの守護者の二人を同時に相手にしながら、苦悶の声を上げる。彼女の額にも汗が滲み、その動きにわずかな焦りが見え始めていた。
俺は、戦況を冷静に分析していた。アストリッド教官でさえ、この状況を打開するのは難しいだろう。彼女の指示の範囲内での「援護」では、もはや戦局を好転させることはできない。このままでは、本当に全滅する。
エリアーナが、フィンを庇おうとして、魔法使いタイプの守護者が放った強力な闇属性の束縛魔法に捉えられ、動きを封じられてしまった! そこへ、剣士タイプの守護者が、無慈悲に止めを刺そうと長剣を振りかぶる!
「エリアーナ!!」
俺は、思わず叫んでいた。
アストリッドが、その危機を察知し、エリアーナを助けようと無理な体勢で動こうとしたが、彼女自身も二体の守護者に足止めされ、身動きが取れない。
「――アッシュフォードッ!!」
アストリッド教官の、切羽詰まった叫び声が広間に響いた。それは、もはや指示ではなく、懇願に近い響きだった。
俺は、深く息を吸い込んだ。もはや、選択の余地はない。
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