魔晶石の守護者、試される覚悟
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エリアーナが闇属性の束縛魔法に捉えられ、剣士タイプの白銀の守護者が無慈悲に長剣を振りかぶる。その切っ先が、彼女の白い首筋に触れようとした、まさにその瞬間。
「――アッシュフォードッ!!」
アストリッド教官の、切羽詰まった叫び声が広間に響いた。それは、もはや指示ではなく、懇願に近い響きだった。
俺は、その声に、そして目の前の絶望的な光景に、もはや一瞬の逡巡もなかった。アストリッドの「指示の範囲内で動け」という言葉も、ミリアがいないこの状況でどこまで力を出すべきかという計算も、全て頭から消し飛んでいた。ただ、エリアーナを助けなければならない、という強い衝動だけが、俺の全身を貫いた。
「――舐めるなよ、ガラクタがァッ!!」
俺の口から、自分でも驚くほどの獰猛な咆哮が迸った。次の瞬間、俺の右手に宿っていた深紅の炎が、これまでとは比較にならないほど激しく燃え上がり、凝縮され、まるで生きているかのように脈動する。そして、足元で連続的に小規模な爆裂を発生させた。
ゴォン! ババババッ!!
爆裂魔法による推進力は、俺の身体を不可視の弾丸へと変えた。アストリッドの指示の範囲など、とうに超えている。革手袋による魔力隠蔽も、これほどの出力の前では意味をなさないだろう。だが、今はそんなことはどうでもよかった。
俺は、エリアーナと剣士型守護者の間に、文字通り瞬時に割り込んだ。振り下ろされる長剣を、右手に纏った深紅の炎――高密度に圧縮され、まるで溶岩のような輝きを放つ――で直接受け止める!
キィィィィィン!!
金属と炎が激しく衝突し、甲高い音と共に、眩い火花が散る。石造りの剣が、俺の炎に触れた部分から赤熱し、ボロボロと溶解していくのが見えた。
剣士型守護者の兜の奥の紅蓮の目が、激しく明滅した。その機械的な動きが一瞬、不自然に硬直し、まるで理解不能な事態に遭遇したかのようにターゲットを見失った。 俺は、その隙を見逃さず、左拳に炎を纏わせ、守護者の胸部――おそらくコアがあるであろう場所――に、渾身の一撃を叩き込んだ!
ドゴォォォォォン!!!
凄まじい衝撃音と共に、剣士型守護者の胸部装甲が内側から爆ぜるように砕け散り、その巨体はくの字に折れ曲がって、後方へと吹き飛んだ。壁に激突し、完全に動かなくなる。
「……間に合ったか」
俺は、小さく息をつき、エリアーナを振り返った。彼女は、まだ束縛魔法にかかったままだったが、俺の突然の乱入と、その圧倒的な力に、ただ呆然と目を見開いている。
「リオン君………」
「話は後だ。まずは、その鬱陶しい呪いを解くぞ」
俺は、エリアーナの身体にまとわりつく闇属性の魔力の奔流に、右手の深紅の炎をそっと触れさせた。破壊の炎は、その性質を反転させたかのように、優しく、しかし確実に、闇の呪いを焼き尽くし、浄化していく。数秒後、エリアーナの身体を縛っていた魔力の枷は、完全に消え失せた。
「あ……ありがとう……リオン君……」
エリアーナは、まだ震えながらも、俺に感謝の言葉を述べた。その瞳には、畏怖と、そしてより一層強い信頼の色が浮かんでいる。
だが、戦いはまだ終わっていない。残りの三体の守護者が、俺の存在を最大の脅威と認識したのか、一斉にこちらに向かってきたのだ。
「アッシュフォード!」アストリッド教官が鋭く叫んだ。「私が戦斧タイプを引き受ける! 君は残りの二体――弓兵と魔法使いタイプを頼む! エリアーナ、フィン、ロイは私の援護に回れ!」
アストリッドは、戦斧を持った最も巨大な守護者へと単身突撃していく。その剣捌きは流麗かつ力強く、守護者の重い一撃を巧みにいなし、反撃を加えている。さすがは元騎士団最強の一角だ。
「了解!」
俺は、アストリッドの意図を即座に理解し、弓兵タイプと魔法使いタイプの守護者へと意識を集中させた。この二人を同時に相手にするのは骨が折れるが、やるしかない。
「エリアーナ、フィン、ロイ、アストリッド教官の援護を頼む! 後衛の防御は、俺がなんとかする!」
俺は、そう叫ぶと、再び足元で爆裂を起こし、二体の守護者たちの群れへと突っ込んでいった。深紅の炎が、俺の軌跡に沿って、まるで流星のように尾を引く。
「紅蓮の……爪!」
俺の指先から放たれた炎の爪が、弓兵の守護者が放つ魔力の矢を切り裂き、その勢いのまま守護者の腕を薙ぎ払う。
「爆炎閃!」
魔法使いタイプの守護者が詠唱していた広範囲魔法の発動直前に、爆裂加速による高速移動でその死角に回り込み、炎を纏った蹴りを、その胴体に叩き込んだ。守護者は詠唱を中断され、大きくよろめく。
アストリッド教官は、戦斧の守護者と激しい攻防を繰り広げながらも、時折、俺の戦いぶりに鋭い視線を送っていた。その表情は、驚愕と、警戒と、そしてほんのわずかな……興奮のようなものが入り混じっているように見えた。彼女は、俺の力の底を、そしてその使い方を、この極限状況で見極めようとしているのだ。
俺の深紅の炎が、古代遺跡の広間を縦横無尽に駆け巡る。それは、まるで破壊の化身が舞い降りたかのような、圧倒的な光景だった。弓兵と魔法使いタイプの守護者は、俺の変幻自在の攻撃に翻弄され、その白銀の装甲には、徐々に焦げ跡や亀裂が増えていく。
だが、魔法使いタイプの守護者が、最後の力を振り絞るかのように、杖の先端に広間全体を飲み込まんばかりの、禍々しい闇のエネルギーを収束させ始めた。あれは、先ほどエリアーナを捉えた束縛魔法とは比較にならない、純粋な破壊魔法だ。
「まずい……! あれを食らったら、全員無事では済まないぞ!」
アストリッドが叫ぶ。彼女も、戦斧の守護者を抑え込むのに手一杯で、こちらにまで手が回らない。
(……あれは発動させるわけにはいかないっ!)
俺は、魔法使いタイプの守護者を睨みつけ、全身の魔力をさらに高めようとした。その時
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