27.森の宿
(安宿なのに、大通りの建物と同じ造りで見た目も奇麗だ。この造りは、町おこしかなんかで安いのか?)
冷静な俺は、森の宿の建物を見回しながら街並を思い出しつつ疑問に思考した。
建物は、妻側を見せる二階建て。外観は、外壁がベージュ色かつ木製と思われる柱や梁や筋交いが外部に露出するデザイン。一階の正面中央に開いている片開きの玄関が一か所、その左右の1メートルほど離れている位置に横幅が2メートルほどの腰窓が一か所ずつ、二階のほぼ等間隔の配置に木製と観音開きと思われる小窓が五か所。窓等の配置より、建物の幅は10メートルと推測される。全体としてアットホームな印象を受ける。
(二階は部屋だと思うが、あの窓は割り振りから一つの部屋に二か所? それなら六畳ぐらいの広さはあるだろうから、どうとでもなるな)
楽観な俺は、二階の小窓を人差し指で数えて自分の部屋を思い出しながら頬を緩めて思考した。店内を玄関から窺う。
(中も明るくて奇麗だ。これなら入ってみるか)
陽気な俺は、思わず笑みを浮かべて思考していた。店内に進む。
店内は、食堂の様子。内観は、壁が外壁に合わせているかのようなベージュ色かつ柱や梁や筋交いが同様。テーブル席が全体に、カウンター席が左手奥側の厨房を見渡せる位置に、食器棚が壁際に配置される。花瓶入りの花も用意され、全体として外観と同様にアットホームな印象を受ける。
「いらっしゃいませ!」
掃き掃除を行う小学校の中学年ほどの少女が、俺に気付いて明るい笑顔で声を元気に上げた。少女は俺に小走りして足下で立ち止まる。可愛らしい小顔の笑顔を俺に向ける。
「お食事ですか? お泊りですか? そっ…、それとも………」
笑顔の少女は、明るく二度尋ねたあと、言葉を詰まらせながら俯いてもじもじし始めつつ話しを中断した。表情を真っ赤に染め上げる。
「なっ、なっ、なっ、何が起きてる!? おっ、俺は、いつの間にか異世界にでも転生したのか??!」
仰天な俺は、思わず目を見張りながら言葉を詰まらせつつ声を激しく疑問に強く上げていた。直ちに顔を左右に素早く振り、周囲を見回す。アットホームな店内を確認する。
「ふう~、ここはさっき確認した森の宿。だから現実世界で大丈夫だ」
安堵は俺は、思わず額の汗を拭い、顔を正面に戻しながら呟いていた。視界の下側にもじもじする少女を捉える。
「って違う! 誰だ、子どもにこんな事を言わせる奴は?!」
憤怒な俺は、再び顔を左右に素早く振り、犯人は誰だと声を上げた。周囲に人は存在しない。思わず歯ぎしりしてしまう。
(子供は大人を見て育つ! 大人になってこういうことを言うのは自己責任だが、子供が言うのは怖ろし過ぎる! しかも、変なところで話を止めたし!!)
正義な俺は、思わず両拳をきつく固めて激しく思考していた。視線を少女に戻す。頬を赤く染める少女は、口を開き掛けて何かを話そうとしている。
(この子の話の続きはたぶんあれだ。だが、今の俺の目的は宿を決めること。ここは強引に話を進めよう!)
慎重な俺は、この問題は一旦保留にしようと思考した。緩める右拳を口元に運ぶ。
「オホン。ああ、泊りだ。まずは一泊の値段を教えてくれるか?」
紳士な俺は、咳払いしたあとに疑問に尋ねた。口を開き掛けている少女は、ぱっと明るい表情を見せる。
「え、えっと、一泊は、朝と夜の食事付きで、銀貨1枚と銅貨5枚になります。お酒と追加の注文は、別料金です」
「ふっ」
明るい表情の少女は、一度視線を逸らして再び明るい表情を俺に見せて話した。迂闊な俺は、思わず顔を右側に俯き加減で逸らすと同時に声を漏らした。優雅な金髪サラサラヘアーの前髪が目元に掛かる。
(相場が全く分からん)
優雅な俺は、金髪サラサラヘアーの前髪を右手で鮮やかに跳ね上げながら思考した。首を小さく傾ける少女は、不思議に俺を見つめる。
「とっ、とりあえず、一泊で頼むよ」
「かしこまりました!」
不安な俺は、言葉を詰まらせながらも活舌よく話した。瞳を輝かせる少女は、再びぱっと明るい表情を見せて話した。続けて、俺のちっぽけな不安を消し去るほどの気持ちの良い笑顔をプレゼントしてくれる。
(このタイミングで…。これは癒されるな~)
平穏な俺は、子供の無邪気な笑顔には計り知れないパワーがあると思考した。
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