18.何か
「フンフンフン。キーッキッキー!」
何かは、上下に揺れ動きながら鼻をすするような音を発したあとに奇声のような音を強く立てた。未だに錯乱な俺は、心臓が破れそうな中で何かを凝視する。
何かは、人型の生物のようだ。背中側を俺に向けているように見える。所持品は、頭部にボロボロでくたびれ過ぎた薄汚く色褪せている茶系色の魔法使いをイメージさせるような大きな三角帽子、背中に同様な状態の大きなマント、恐らく存在するであろう右手に身の丈よりも長い杖。頭部を左右に素早く振り始める横顔から、時折イボのある大きな鷲鼻が窺える。
(ゴブリンウィザード?! いや魔女か?! どっちも、いきなり会っていい奴じゃないはずだ!)
戦慄な俺は、所持品を確認する中で徐々に冷静を取り戻して身構えながら強く思考した。体を静かに右回りで半身にして顔を急遽に後方に振り向ける。洞窟内を見回す。
(逃げれない!)
愕然な俺は、思わず表情を悲痛にしかめながら宝箱を切実に見つめて狭い洞窟内だったと強く思考していた。
(そうだ扉!)
混乱な俺は、思わず湧き立つ体を扉へと勢い良く駆け出すようにすると同時に左足を前方へと大きく運びながら歓喜な顔を鋭く扉に向けて流石俺と強く思考した。そして、
(あっ! 無いんだった~…)
うっかりした。
(まずい!!)
危機な俺は、急遽に右手を右側の壁に掴むように突いて音を出してはいけないと激しく思考した。壁の凹凸を掴むようにしながら支えにして体の勢いを殺し、体全体をスローモーションのようにしつつ左足を地面に静かに着地させる。沸々と感情がこみ上がる。歯を食いしばりながら目を閉じる。
(ちくしょう!!!)
残念な俺は、思わず前屈みになると同時にいつも大切な場面でうっかりすることが悔しいと力の限りに思考していた。顔を左右に振る。目を開いて顔を上げる。洞窟内を冷静に見回す。テーブルの奥側の空間を発見する。
(あそこだ!)
渇望な俺は、思わず表情を緩めて強く思考していた。体の向きを何かに戻す。全身から冷や汗が流れ落ちる中で物音を立てないように慎重に後退りする。テーブルの奥側の空間に身を潜める。輝く出入り口に影のように映し出されている何かを注視する。
(どういうことだ?! スライムしか居ないんじゃなかったのか?!)
恐怖な俺は、全身が震える中で女神に現状を問いただすように疑問に強く思考した。頭部を傾けている何かは、頭部を戻して再び左右に素早く振り始める。
(どうする?! こっ、これで殴るか?!)
混迷な俺は、何かを注視しながらテーブル上の宝箱を瞥見しつつ疑問に強く思考した。汗ばむ両手を宝箱の左右に伸ばして掴む。息を殺し、何かを注視し続ける。しばし経過する。何かは右側の岩陰へと移動する。再びしばし経過する。
(………、いっ、行ったか?)
未だに恐怖な俺は、全身の震えが収まらない中で何者も存在しない輝く出入り口を見つめて疑問に弱々しく思考した。
(確認…、しないとな…)
不安な俺は、震える両手を宝箱からぎこちなく離しながら更に弱々しく思考した。震える両手をテーブルの端に置く。端を掴み、両腕を支えにしつつ勇気を振り絞るようにして立ち上がる。泳ぐ視線を宝箱に向ける。
(蓋…、開けた方がいいな…)
慎重な俺は、宝箱の上蓋を震える両手で開ける。
(中身が邪魔だ!)
不安定な俺は、思わず声を荒らげるように思考していた。不満を抑える。注意を輝く出入り口に払いながら宝箱の中身の全てをテーブル上に音立てないようにして置く。左腕を宝箱内に入れて持ち上げる。強張る顔を輝く出入り口に向ける。
(右に、隠れてるかもしれない)
緊張な俺は、輝く出入り口の右側を注視して思考した。視線をその位置に固定し、宝箱を盾のようにしながら短い通路の左側へと向かう。徐々に露わになる景色は、何かが出現する以前と同様。
(また上から来たら…)
不安な俺は、短い通路の手前で思考した。視線が泳ぎ始めて立ち止まる。不快な汗が右頬に伝わる。
(怖がるな! 自分の勘を信じろ!)
苦悩な俺は、集中して視線を再び出入り口の右側に固定して強く思考した。宝箱を構え直す。腰を落として短い通路内に前進する。宝箱を前方に維持して背中を左壁に突ける。
(あと少し…)
必死な俺は、集中力を切らさないようにと思考した。そのままでじわりじわりと横歩きに前進する。出入り口の手前で立ち止まる。
『ゴクン』
極限な俺は、思わず全身がこわばる中で息を大きく飲み込むと同時に喉を鳴らしていた。右側の岩陰を覗き込むようにながら洞窟外に慎重に前進する。
「いっ…、居ないな」
『ガサガサガサ』
「んんっ?!」
安堵な俺は、思わず脱力して呟いていた。直後、左後方から葉の擦れ合うような音が届いた。戦慄な俺は、思わず全身を強張らせると同時に声を疑問に強く漏らしていた。直ちに宝箱と体を左後方に振り向けると同時に身構える。一輪のたんぽぽが揺れている。
「風…、だよな?」
『ヒューン!』
不安な俺は、思わず疑問にか細く呟いていた。唐突な強風は、暖かな空気を運びながら奥行きの狭い草原を賑やかに揺らしつつ元気な音を立てた。
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