11.草原
「あ~緊張したな~。手の平が汗でびっしょりだ」
安堵な俺は、視線を右の手の平に移しながら呟いた。
「あれがモンスターなのか?」
汗かきな俺は、宝箱を地面に置いて両の手の平の汗をパンツで拭いながら疑問に呟いた。視線を木々に移す。合間を隈無く観察する。
「奴は…、行ったみたいだな…」
不安な俺は、静かに呟いた。視線を草原に何気なく移す。一輪の花が揺れていない。
「今は、まだ危ないな」
慎重な俺は、虫の知らせかのように何かが未だ付近に存在する可能性があると呟いた。宝箱を拾い上げる。洞窟内のテーブルに向けて歩き始める。
「顔ははっきり見えなかったが、大きな鷲鼻に三角帽子で長い杖を持ってたな。やっぱりゴブリンウィザードみたいな奴か?」
平静な俺は、額の汗を右腕で拭いながら疑問に呟いた。テーブルの前に到着する。
「女神の言うことは、当てにならないのかもな~」
平穏な俺は、宝箱をテーブル上に戻しながら緩く呟いた。宝箱を見つめて物思う。
「すぐに出られないなら…、どうするか?」
手持無沙汰な俺は、疑問に呟いた。物欲しげに周囲を見回す。テーブル上のスーツなどを発見する。
「フッ、これでもやるか」
閃きな俺は、不敵に呟いた。思わず頬を緩めながら両手を胸の前で蠅のように擦り合わせてしまう。
「時間を潰さないといけないからな~」
貪欲な俺は、思わず言い訳のように呟いていた。両手をスーツに伸ばす。
「さっきはここまで頭が回らなかったな~」
リラックスな俺は、スーツをテーブル上に広げながら何故か再び言い訳のように呟いていた。鼻歌交じりでスーツの皺を入念に伸ばす。スーツを丁寧に折り畳む。できた皺を奇麗に伸ばす。靴などを宝箱に仕舞い、スーツをその上に仕舞う。角度を変えながら鋭く観察する。できた皺を入念に奇麗に伸ばす。
「よし! この感じだな~」
強欲な俺は、スーツを宝箱から取り出しながら本番を開始すると声を上げた。同様にして再び仕舞う。
「ふう~。このぐらいにしとくか。止まらなくなるからな」
満足な俺は、額の汗を右腕で拭いながら凝り性は程々にと呟いた。宝箱の上蓋を静かに閉じる。
「じゃあ行くか!」
一新な俺は、明るい未来と希望を自分に詰め込みながら景気良く声を上げた。出入り口に紳士な足取りで向かい、手前で立ち止まる。
「やっぱり怖いな」
不安な俺は、思わず心拍数を上げながら呟いていた。前方の目視可能な範囲を確認する。怪しいものは存在しない。
「さすがに二回は続かないと思うが、上とか見えないところに何かが隠れてたら、どうにもならないよな…」
心配な俺は、腕組しながら呟いた。首を傾けつつ出入り口の上側を覗き込むようにして物思う。
「考えても仕方ないか。男も度胸だ!」
勇敢な俺は、首を戻して前方を力強く見つめながら語気を強めて呟いた。左手を左岩壁に突く。顔を洞窟外に出すと同時に素早く左右の岩陰と上方を確認する。
「大丈夫そうだな」
安堵な俺は、顔を洞窟内に戻しながら呟いた。
「あ~緊張した~。予想外な事は意外と起こるからな~」
脱力な俺は、背中を左岩壁に突けながら呟いた。
「そう言えば、洞窟は結界で気付かれないようにしてあるとか言ってたが、さっきはその効果があったんだよな?」
疲労な俺は、出入り口をぐるりと見回しながら呟いた。背中を岩壁から離す。
「女神様様だな。感謝しとかないと」
『パンパン』
「御利益、御利益」
「ハックシュン」
「ん? また風か? 今度のは嫌な音だったが…」
ミーハーな俺は、信仰心を一切持たないがここぞとばかりに心にもないことを呟いた。出入り口に対して二拍手して音を鳴らし、一礼と共に無作法と知りながらも欲望を呟いた。微かなくしゃみのような音を耳にした。姿勢を戻して顔を洞窟外に出すと同時に素早く周囲と上方も確認して耳障りと呟いた。顔を洞窟内に戻す。
「出発だ!」
奮起な俺は、気合を入れて声を上げた。右足を洞窟外に力強く踏み出す。大地から優しさを、日差しから勇ましさを覚える。狭い草原の中央に移動し、澄んだ青空を見上げながら両腕を左右に広げつつ息を大きく吸い込む。
「ん~いい天気だ~」
幸福な俺は、思わず息を大きく吐き出しながら声を漏らしていた。再び息を大きく吸い込む。
「空気も美味いな」
爽快な俺は、姿勢を戻しながら両手を腰に当てつつ呟いた。周囲を改めて見回す。
「ここは森じゃなくて林な感じだな」
平穏な俺は、自然を満喫するように呟いた。体を右側に向ける。
「さっきの奴は、あっちに行ったんだったな…」
不安な俺は、木々の合間を可能な限り奥まで注視しながら呟いた。視界に色濃い木々と鮮やかな草花を捉える。
「大丈夫そうだな」
冷静な俺は、静かに呟いた。右側を気に掛ける。体を右側に向けながら上方を見上げ始める。
「でっかいな~。灰色の岩山って珍しいのか? 日本の山は、ほとんど緑で覆われてるし…」
感動な俺は、上半身を仰け反らせながらモニュメント・バレーの岩山と日本の山を思い出しながら呟いた。
「今となっては確認できないか…」
哀愁な俺は、洞窟内に光をもたらしている目の届かない山頂もそれとなくイメージしながら呟いた。上半身は限界まで仰け反る。
「それより。奥に草原が見えたな」
限界な俺は、上半身を戻して背後に振り向きながら呟いた。木々の向こう側の草原を興味深く見つめる。
「あの真っすぐ先に街道があのか?」
陽気な俺は、女神の様子と話の内容を思い出しながら疑問に呟いた。得意気な女神は左手を腰に当てて右の腕と人差し指を真っすぐ伸ばしている。
「ここでまた真っ直ぐかよってツッコミを入れる奴は、負けだろうな~。女神の思う壺だ。真っ直ぐは、確か道の話の時しか言ってなかったしな。マツだけならいいが………。真ッだけ、マッだ…、発音が難しいな~。まつ、まっ、ま真っ痛!」
「クスクス」
「さっきから耳障りな風だな~」
冷静な俺は、皮肉のように呟いて舌を噛んだ。微かな嘲笑のような音を耳にした。眉間に皺を寄せ、周囲を確認しながら不服と呟いた。
「くだらない。また舌を噛むから止めよう」
無念な俺は、不服な顔を俯き加減で左右に振り、前向きな顔を上げながら呟いた。木々の向こう側の草原を見つめる。
「前に進もう」
『ヒュン』
勇敢な俺は、果敢に呟いた。耳元で微かな頷くかのような音を耳にした。真っ直ぐ歩き始める。草原を窺うようにしながら木々を颯爽と躱す度に心を躍らせる。暖かな青い香りを覚えて足取りを軽くする。広がりいく草原を視界に収めつつ全ての木々を足早に抜ける。全貌が顕わな草原を見渡して思わず足を止めてしまう。草原は、果てしなく続くかのように壮大かつ全てを受け入れるかのごとく優雅にそよいでいる。
「これは凄い!」
『ヒュルン』
感動な俺は、思わず声を上げていた。前方に吹く風は、壮大な青と自由に戯れながら楽し気な音を立てた。朗らかな俺は、壮大な青に誘われるかのように歩き始める。
「こんな草原は、日本に無いだろうな~」
『ヒュルルン』
爽快な俺は、草原を見渡しながら歩き続けて絶賛と呟いた。前方の風は、方向をこちらに変化させながら得意気な音を立てた。俺にダイブする。
「うわっ」
『ヒュルルーン』
不意な俺は、思わず歩きを止めて声を漏らしていた。通り過ぎる風は、元気溌溂な音を立てた。舞い戻り、俺の体を柔らかく包み込みながら両腕を押し上げようとする。
「ハハ。ここは最高だー!」
『ヒュルルルーン!』
感激な俺は、両拳を空高く突き上げながら叫ぶように声を上げた。柔らかい風は、両拳と共に上空に舞い昇りつつ爽快な音を立てた。
「高原みたいに感じるけど、違うんだろうな~」
『ヒュン』
幸福な俺は、遠方を見渡しながら両拳を下ろしつつ高原好きと呟いた。遠方の正面左方向に地平線が続き、右方向に背の高い峰が連なる。舞い戻る風は、俺の体を再び柔らかく包み込みながら耳元で優しい音を立てた。
「空気も美味いし、のんびりしたくなるが、ここは異世界だ。まずは街に行って、宿を探そう」
『ヒュルン』
平穏な俺は、優しい風に話し掛けるかのように呟いた。壮大な青の中を更に真っ直ぐ歩き始める。優しい風は、耳元で頷くかのような音を立てた。道を示すかのように前方に向けて駆け出した。
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