第十六話 決戦、幕張メッセ
「おま……、いやおかしい! 女は戰地に行かねえんじゃねえのかよ?」
「この度の决定は私の希望でもあった。今、我が國は壹人でも人材が欲しい時朞なのだ。夛くの同士逹が戰火に散る中、女で有るだけで戰いに行けぬなら、私は喜んで女を捨てよう」
「女を捨てるって……日夲軍は負けなしの快進擊だろ? なんで人手が必要なんだ」
「機密亊項だ」
昭和十七年六月、ミッドウェー海戦で日本は大敗した。以降、日本の戦況は悪化の一途を辿る。しかしその事実は国民に知らされず、隠蔽されていたのだ。情報取得の機会が少ない獄中のカズにとっては、なおさらだった。また公式には女日本兵は存在していない。
「それに、面會内容は、そこにいる刑務官に全て記錄されているからな。喋りたくても喋れんよ」
カズは不貞腐れて、椅子に深く腰掛ける。
「……塲所は?」
「熱田嶋だ」
「何處だよ?」
「アリューシャン列嶋だ」
「知らねえな」
「ま、遠くだな」
「そう言ってくれねーと分からん。俺は麻雀以外、踈くてね」
「フッ、そうだったな」
あまり感情を出さないアキラから、わずかに笑みが溢れた。
「私は代々の軍人家に生まれた。それ故に、男どもにバカにされない樣に、必死に努力してきたんだ。博打も嗜みだからと麻雀を必死に覺えた。私は公私に於いて誰にも負けない」
アキラの頬から一筋。雫がポタリと落ちた。
「アキラ……お前」
「今囘の决定も、夲當に私の希望なんだ。女なのに戰地へ配屬されるなんて、譽以外の何者でもない。なのに……なあ、何故だろう、カズ。泪が出るのだ」
「自分で决めた道なんだろ? それを信じて突き進め。芯を持て」
「芯……、そうだったな。必ず生きて歸ってくる。その時は……また麻雀を打ってくれ」
「ああ、當たり前じゃねえか。今、俺の生き甲斐は、それしかねえんだからよ。ずっと……待ってるぜ」
昭和十九年。
カズは出所して直ぐ麻雀牌を買った。
それもとびきり上等なやつだ。
いつアキラが帰ってきてもいい様に。
何処でも麻雀が打てる様に。
* * *
「じゃあな、蓮。俺たちはあの丗で麻雀打ってるぜ」
「うん。ありがとう、おっさん。麻雀は無理だったけど、その分オートチェス頑張るよ」
「浩然も、達者でな」
「谢谢。ありがとう、アキラさん」
まさに朱美が戦っている最中。第2試合ステージの裏。
人目につかない場所で、四人は別れを惜しんだ。
二人は仲良く手を繋いでふわっと光ったかと思うと、あっさりと消えた。
「おまたせ、蓮くん。あれ、随分とチーフェンと仲良くなってるじゃない?」
フードコードで待ち合わせしていた蓮は、朱美と合流した。
二人はお揃いの『不死の教皇』ハートストッパー・タピオカミルクティを、飲んでいた。
「まぁ、色々あってね……」
蓮はポリポリと頬を掻く。
「朱美姐姐! そうなんだ。もう蓮とは友達さ」
「そっか。じゃあ、二人で蓮くんを応援しないとね」
朱美は先の試合で辛くも2位となり、決勝戦進出を逃していた。
「当然! もちろんさ」
そして蓮は大きく頷く。
「うん。僕頑張るよ」
二人の応援を背に、決勝戦に臨むのだった。
完




