14/20
二番唄⑤
寝つきは良いはずだった。
だが、また目が覚めた。携帯電話で時刻を確かめると、午前二時だった。草木の眠る丑三つ時だ。何故か屋敷に泊ると、夜中に目を覚ましてしまう。
しかも、喉が渇く。
ミネラルウォーターを持って来ておけば良かった。明日からはそうする。そう言えば志功の部屋には冷蔵庫があった。志功も夜中に目が覚めた時、台所まで降りて行くのが面倒だったのだろう。
仕方ない。ベッドから起き上がった。その瞬間、
――ミシミシッ・・・ミシミシッ!
と階下から音がした。まただ。また一階の廊下を誰かが歩いている音がする。経兄の亡霊が今晩も一階の廊下を歩き回っている。
そんなはずない。この屋敷には、今、俺しかいない。誰もいないのだ。
俺はベッドの上で耳を澄ませた。
屋敷は静まり返っている。何の物音もしない。
(気のせいだ)
そう思って、ベッドから降りた途端、
――トントン、トントントン。
と今度は小さな音がした。人というより、小型の動物の足音に聞こえた。一階の廊下から聞こえる。何処からか猫が入って来たのだ。その足音だ。そう思った。
だが、間髪入れずに、
――ダンダンダンダン!
と一階の廊下を誰かが走る足音がはっきりと聞こえて来た。まるで、猫を追いかけるかのように・・・




