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ミシェルの想い人

私はレジーナ、ガーネット伯爵家の三女だ。私の下にはミシェルという弟がいる。

そのミシェルは最近おかしい、具体的にいうとフローレス公爵家のご令嬢が来てから変わった。

前までは食事の時間以外は部屋にこもっている、ジメジメウジウジしている子だった。

母様は後継者になるのだからと厳しく育てている。私達も甘やかすなと言われていたため、転ぼうが、怪我をしようが決して手を貸したことはない。心が痛むこともあったが、伯爵家のためだから仕方ないと自分に言い聞かせていた。でも、そのせいであんな性格になってしまったのかもしれない。

そんなウジウジしていたミシェルが、剣の稽古を始めた。


「あの子急にどうしたのかしら」

剣の稽古をしているミシェルを横目に長女のカミーユ姉さんは扇で扇いでいる。

「さぁ、どうせ怪我でもしてすぐに部屋に籠るんじゃない」

次女のモニカ姉さんは、頬杖をつきながらお菓子を食べている。

カミーユ姉さんはともかく、モニカ姉さんは結構性格がキツイため少し苦手だ。すぐに手が出るし…

「私の勘違いじゃなければ、エリオットとパトリシア様が来られた日から変わった気がするの」

私がそう言うと、二人は顔を見合わせニヤリと笑った。

「何?それってパトリシア様に惚れて変わろうとしてる感じ?」

「パトリシア様ってどんな子なの?レジーナ、前に王太子殿下が主催したお茶会に参加してたわよね」

そんな数年前の事を言われても…

「確か、金髪に青い瞳の…可愛いというより綺麗な子だったような」

「へぇ、ミシェルの想い人か…見てみたいな」

「そういえば父様はエリオットも変わったって言っていたわね」

「もしかしたら、エリオットもパトリシア様と出会って変わったんじゃない?」

姉さん達は盛り上がっている。私は余計なことを言ってしまったと後悔している。

「エリオットもミシェルと同じでジメジメしていたわね」

「確かにキノコが生えるんじゃないかって感じだったね」

今のエリオットを知らないが、長い前髪にどこか怯えたような顔をしていた気がする。

「でも、あの子が変わろうとしてるのだからそっと見守りましょう」

カミーユ姉さんはミシェルを見てそう言った。


それから、ミシェルはよく出かけるようになった。行き先はもちろんフローレス公爵家だ。


「お家に呼ばれるなんて、結構良い感じなんじゃない?」

「いや、それがね勉強をしに言っているみたいなのよ。しかもエリオット以外にも、コーデリア侯爵家の令嬢もいるみたいだし」

二人はミシェルに直接聞けないからか、父様から情報を得ている。

「ミシェルの性格じゃあ、ぐいぐい行けないだろうし相手にされてないかもね」

モニカ姉さんは楽しそうにケタケタ笑っている。


ある日の事だ、私達姉妹でお茶をしているとミシェルがやって来た。相変わらずビクビクしながら

「…あの、姉さん達に相談があって」

「へぇ、相談ねぇ…私達に?」

モニカ姉さんはニヤニヤと笑いながらミシェルを見ている。ミシェルはビクッと肩を揺らす。

「まあまあモニカ、ミシェルが私達に相談なんて初めてよ。聞いてあげましょうか」

カミーユ姉さんは穏やかな笑みを浮かべているが、楽しそうだ。

「…で相談って?」

「その…女の子に何をプレゼントをしたら喜んでもらえるか、聞きたくて」

ミシェルは俯きながらそう言った。

「女の子にね…それってどういう相手かにもよるわね」

「その子の特徴を教えなさいよ」

姉さん達は真剣な顔をしている様に見えるが、口元を隠しているため笑いを堪えているのだろう。

「…えっと、優しくて頭が良くて、可愛い子」

「あれ?パトリシア様って綺麗な子って言ってなかったっけ。ね、レジーナ」

モニカ姉さんは本当に…もう

「な、なんでトリシャちゃんのこと」

ミシェルが顔を真っ赤にしてアワアワしている。

「あら、愛称で呼ぶぐらい親しいのね」

カミーユ姉さんも良い性格しているな。

「プレゼントの話でしょ。パトリシア様の好きな物とかは知らないの?」

私が無理矢理話を戻すと姉さん達からじとーっと見られる。

「…薬草」

「は?仮にパトリシア様が薬草を好きだとしてもプレゼントにそれはないでしょ」

モニカ姉さんは急に冷静になった。

「アクセサリーとかが良いんじゃない?」

私もとりあえず、自分が貰ったら嬉しい物を言う。

「でも、トリシャちゃんはアクセサリーをあまりつけないから」

「…それなら扇は?カミーユ姉さんが持ってるみたいなの」

私がカミーユ姉さんの扇を指差す。ミシェルとモニカ姉さんもそちらを向く。

「あら、良いんじゃない?パトリシア様にお似合いのデザインをミシェルが選んでオーダーメイドで作ってもらいましょう」

「決まりね、早速職人に手紙を出しましょう」

こうして、パトリシア様のプレゼントは決まった。

一週間後、ミシェルはまたやって来た

「何か用事?」

「扇が出来たので見せに…」

「見たい見たい」

ミシェルが言い終える前にモニカ姉さんが話し出した。

ミシェルはまだ包装されていない細長い箱をテーブルに乗せ、そっと箱を開ける。

「広げて見せなさいよ」

流石のモニカ姉さんもプレゼントを手に取って見ようとはしないようだ。

ミシェルは箱からそっと扇を取り広げた。

「なかなか素敵なデザインね。パトリシア様の髪色と瞳の色に合わせたのね」

「どうせなら、自分の髪色と瞳の色にすれば良かったのに」

「喜んでもらえると良いね」

私はそう言って、ミシェルを見るとコクンと頷いた。


喜んでもらえたかは、パトリシア様の誕生日会から帰ってきたミシェルを見て一目瞭然だった。


「ミシェルが私達に相談をしに来たのも、パトリシア様がミシェルを変えてくれたおかげかもしれないわね」

「私達を見てビクビクしているのは変わらいけどね」

私は、それはモニカ姉さんが怖いからじゃ…と言うのを我慢した。



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