36 悪役令嬢と勉強会
今日からエリオットと毒性学を勉強する。ブライス家の馬車が到着した。エリオットが降りてくると、後ろからエリオットの手を借りてエリーゼも降りてきた。アリシアと遊びたいからとエリーゼもついてきたようだ。
私は、毒について勉強をしているのをバレるの恐れ、自室に案内した。
エリオットが座った隣に腰を下ろす。
「な…何で隣に?」
エリオットが慌てた様子で後ろにのけぞる。
「だって正面より隣の方が教えやすいでしょ?」
そんなに隣に座られるのが嫌だったのかな?
「それはそうだけど…」
「ごめんなさい、嫌なら向かいに座るわ」
私は立ち上がり移動しようとした。すると腕を引かれ、ソファに座らさせられた。
「嫌じゃないから。ほら始めるよ」
エリオットの教え方は分かりやすく、毒のある植物の特徴や、見分け方など細かく教えてくれた。
「少し休憩しよう」
私はうーんと声を出し伸びをした。
「伸びるのは良いけど、俺には当てないでよ」
エリオットが眉を下げて笑う。そういえば、エリオットと出会ったとき伸びをした私の拳がエリオットに当たったんだったな。
「ふふっ、気をつけるわ」
そんな話しをしていると、扉が開いた。
「パトリシア、エリオットと二人で何をしているのかな?」
カイルが黒い笑みを浮かべながら、部屋に入ってきた。私は言い訳を考えるのにオロオロしているとエリオットが
「婚約者とはいえ、ノックをするべきでは?」
と言って。さっと本を閉じ、表紙を手で隠した。
「君こそ、婚約者のいる女の子と二人きりでいるのはどうなのかな?」
カイルは相変わらず笑顔のままだ。エリオットも流石にたじろいでいる。元はといえば、私がエリオットに毒について勉強したいと言ったのが悪い。
「カイル様、エリオットには勉強を教えてもらっていたんです。」
「パトリシアは優秀だと聞いていたけど、エリオットに教わることなんてあるのかな?」
怖い、ニコニコ笑っているのにここまで威圧を感じるとは。
「…その、薬草について教えてもらっているんです」
エリオットは私の袖を少し引いた。バレるのも時間の問題だし、仕方ない。けど、勉強をやめろと言われるのは嫌だから。
「何で?」
「…カイル様に頂いた薬が貴重な薬草が使われていると聞いて、薬草に興味が湧いたんです」
薬草に興味が湧いた経緯は違うけど。
「そっか」
カイルの笑顔から黒さが消えた。ホッとしたのもつかの間、カイルは私の隣に座ってきた。
「私も一緒に教わろうかな?」
カイルも一緒にとなると毒について勉強できなくなる。私が困っていると
「俺なんかがカイル様に教えるなんて恐れ多いんだけど」
とエリオットが言った。カイルはそんな事もお構いなしに、エリオットが除けていた本を取って読み始めた。
「へぇー、パトリシアはどの薬草に興味がある?」
と私に本を見せてくる。それにしても、カイルは何故家に?
「あの、カイル様は何か用事があって家に来たのではないんですか?」
「ん?君に会いたくて来たんだよ」
カイルはそう言って、私の手を握ってきた。
「はぁ…そうなんですね」
暇なのかな?まあいっか。
「私が真ん中だと、教えにくいでしょ。エリオットが真ん中に座って」
私が立ち上がろうとするとまた腕を引かれる。
「え?絶対やだ」
エリオットが首をブンブンと振っている。分かる、怖いもんね
「私もエリオットの隣はちょっと」
「でも、本は一冊しかないから」
「「良いからパトリシアはそこにいて」」
二人の声が揃った。
「ふふっ」
「何を笑っているのかな?」
カイルに頬を突かれる。
「パトリシアに構ってないで、勉強するんじゃないんですか?」
「はいはい」
カイルが加わったことで、薬草について勉強する事になった。
私は前にエリオットが持ってきてくれた本に載っていた植物を思い出した。薬にも毒にもなる。
「…ジタリギス」
「あぁ、その植物はね…葉っぱには滋養強壮の作用があるんだけど、花は毒があって触れると触れた箇所が痺れるんだ」
エリオットが説明をしてくれた。
「育ててみたいな」
どうやら痺れだけで、死にはしない毒のようだし。
「え?危ないからだめだよ」
「でも、エリオットと一緒なら大丈夫じゃない?」
「信頼してくれてるのは嬉しいけど…」
エリオットがモゴモゴと言っていると
「私が苗を用意するよ」
とカイルが言ってくれた。
「良いんですか?カイル様ありがとうございます」
育てるの楽しみだな。でも、アリシア達が間違えて触るといけないから育てる場所には気をつけないと。
「カイル様、危ないから」
「良いんじゃない?君は、パトリシアに信頼されているみたいだし」
「信頼されてるって、あぁ、もしかして嫉妬してるとか?」
「本当にブライス兄妹は、言葉を慎むことを知らないのかな?」
二人が言い合いを始めたので私は一人で本を読むことにした。
結局、毒についてはあまり勉強出来なかった。




