37 悪役令嬢は薬草を育てる。
勉強会を始めた三日後、当然のようにカイルもやって来た。エリオットが来る予定の少し前に。
「苗を持ってきたよ」
カイルは本当にジタリギスの苗持ってきてくれた。苗はわざわざ庭園に運んで置いてくれたそうだ。
「ありがとうございます」
嬉しくて笑みが溢れる。あとでスコップとか用意してもらわないと。
「エリオットはまだ来てないのかな?」
カイルは辺りをキョロキョロと見ている。二人共なんだかんだ仲が良いみたいだし、来てなくて寂しいのかな?
「はい、約束の時間よりもまだ早いですから」
「そっか、じゃあそれまで二人だね」
カイルが爽やかに笑う。
「いえ、僕もいるので三人です」
セシルがやって来た。どうやら今日は稽古も授業もお休みらしい。
「セシルはアリシアのところに行きなよ」
「アリシアはエリーゼと約束があるみたいなんで」
そういえば、ここ最近は私はエリオットと、アリシアはエリーゼと一緒にいてセシルは退屈していたのかな?
「エリオットが来るまで、セシルも一緒にお茶しましょう」
「うん、行こう姉さん」
セシルは嬉しそうに私の手を引く。しっかりしてる子だけど、こういう一面を見るとまだ子供だなと思う。
「パトリシアは婚約者の私がエスコートするから義弟君は手を離していいよ」
「エスコートなんて必要ありません」
私達は、エリオットが来るまで応接室でお茶をしている。
「姉さんは、エリオット様と何をしているの?」
そういえば、カイルにしか話してなかったな。
「エリオットから勉強を教わっているの」
「姉さんが!?」
「ええ、エリオットの方が詳しい分野だから」
「私も一緒に勉強しているんだよ」
カイルがニコニコと笑う。
「そうなんですね。姉さん、僕も一緒に勉強したいんだけど」
そっか、セシルはここのところ一人で寂しかったんだ。
「良いわよ」
私がそう言うとセシルは嬉しそうに
「ありがとう姉さん」
と言った。私はつい、アリシアと同じ感覚でセシルの頭を撫でる。怒られるかな?と思ったけど、そういった様子はなく大人しく撫でられている。
やっぱり、相当寂しかったのか素直に甘えてくれている。そうだ!!
「ねぇ今度、エレノアも呼んでみんなでお茶会をしましょう」
セシルとエレノアの仲も取り持てるし。
「…うん?別に良いよ」
あれ?あんまり乗り気では無さそうな反応。
「もちろん私も招待してくれるんだよね」
向かいに座っていた、カイルは乗り気みたい。まあいっか。そんな事を話していたら、扉がノックされる。
「どうぞ」
私が返事をすると、エリオットが入ってきた。
「あれ?ごめん俺遅かった?」
エリオットが時計を見てオロオロとしている。私は立ち上がりエリオットに駆け寄る。
「大丈夫、時間通りよ」
「良かった、ところで今日はセシルも一緒?」
「はい、お願いします」
「じゃあ始めようか」
エリオットが持ってきた本をテーブルに置いた。
「エリオット、カイル様が先日話していた苗を持ってきてくれたの」
ワクワクが隠しきれず、顔が緩んでしまった。
「そっか、今日はそれを植えに行こうか」
エリオットが子供をあやすように私の頭を撫でる。
「パトリシア、私が持ってきた苗を植えに行こう」
カイルが立ち上がり、ツカツカと私とエリオットの間に入ってきた。
私達は庭園に着いた。庭園に向かう前にアンナにスコップを頼んでおいた。
「ジタリギスは日陰でも育つから、この辺りで良いと思うよ」
パトリシアが育てていたルピナスの花壇の近くだ。私はエリオットの指示に従い、苗をプランターに移し替えた。
「水やりは二日に一回ぐらいで大丈夫、それと今は大丈夫だけど蕾がついたら触らないこと」
「勉強会の度に様子を見に来るから」
エリオットは植物を育てたことがあるかのように手際が良かった。
「ありがとうエリオット」
これから育つのが楽しみだな。そうしたら、薬の作り方も勉強しないと。
「パトリシアは、顔に土がついているよ」
カイルが私の頬に手を伸ばしてきた。
「姉さんは仕方ないな。ほら取れたよ」
セシルがハンカチで土を落としてくれた。
「ありがとう」
「セシル?私が取ってあげようとしていたんだけど」
「カイル様のお手を煩わせるわけにはいかないので」
セシルとカイルも本当に仲良くなったな。
「そうだ、エリオット今度は勉強会ではなくてみんなでお茶会をしましょう」
「うん、エリーゼも喜ぶよ」
よし、エレノアに手紙を出さないと。




