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新たな旅立ち 1

 地球の遥か上空から昴くんは再生を果たすためにリセットされて白く輝く地上を見下ろしながら何年後になったら本来の緑豊かな状態に戻るのだろうと思い心を痛めていた。

 今も尚、ドライアイスメテオの影響でその姿を刻々と変化させている地球より9隻の移民船に乗って脱出できた避難民は7万4千人になっている。

 避難所で声を掛けた殆どの人が乗船拒否をしたからだった、

 ともあれ今は各地区から飛び立った移民船を行先毎の人数に合わせて編成している最中なので乗船している避難民の人々は待機せざるを得ない。

 臨時に設けられた休憩所で食料や寝具を受け取り束の間の休息に入っている。

 移民船の編成が終わりドッキングが完了した後は、それぞれの希望する行き先毎に与えられた船へ乗り換えて目的地へと向かう。

 自然環境を取り戻した後の地球へ帰還して原始生活を始める事を希望した1万6千5百人は地球上空400㎞の衛星軌道上でトルコ、アララト山の移民船とモンゴルのゴビ砂漠から飛び立った移民船を連結させた船の中で50年のコールドスリープに入る。

 エジプトサハラ砂漠の地下で眠っていた10万人乗りの移民船は火星と木星間にあるアステロイドベルトに新造される人工惑星に移り住んで宇宙人と一緒に生活するのを希望した2万2千5百人の避難民を船内でコールドスリープさせ、ゆっくりとした速度で目的地へ向かう。

 水縄の移民船8千人乗りは中国洛陽の黄河河川敷より飛び立った1万人乗りとメキシコマヤ遺跡の8千人乗りの移民船で地球と金星の間で太陽の公転軌道に入り、そこで再連結してどこにも行きたくないを選択した1万5百人で船内生活を営む。

 翔と宣子さんは移民船水縄の船長と副船長になっているので必然的に船内生活を営む羽目になっのだけど2人とも気にした様子は見せていない。

 新月さんは支部の仲間がいる水縄の移民船に残るだろうと思っていたけど以外にもアイリーンと行動を共にする道を選んだ。

 ピエロはスターキッド専属記者のまま搭乗してコラム形式で記事を発信し続けたいと言ってスターキッドの中に居を構えたままでいるのだけど…本音は別のところにあると思う。

 そういう訳でスターキッドのメンバーは変わらないまま移民船同士がドッキングする前にその軌道上から離脱していた。

「ねえ、愛鈴はこれからどうするの」

 昴くんが操縦席に座っているアイリーンの肩に手を置いて揉む様にしながら尋ねてくる。

 少し前まではキャプテンと呼び掛けていたけど、アイリーンから拒絶の言葉がかかったので止めるようにした。

 アイリーンにしてみればスターキッドのキャプテンはやっぱり光兄ちゃんだけなのかも知れない。

「昴くんは本当に宣子さんたちと一緒に水縄の移民船に残らなくて良かったの?」

「僕が側に居たら2人とも気を遣うと思うんだ、それに僕もスターキッドの仲間だと思っていいんだよね」

「当たり前じゃない、うちが連れ出したんだから最後まで面倒を見るわよ」

「やったー、こういうのを世間では逆玉って言うんたよね」

『プップッ…』

 何処からか誰のかも分からない笑い声が複数聞こえた。

 昴くんはやっぱりだと思いながら自分に与えられた副操縦席に着く。

(こんなところで『愛鈴と一緒に居たいからだよ』なんて冗談でも言おうものなら何て言って冷やかされるか分かったもんじゃない)

 アイリーンは昴くんが水縄の移民船に残ると言っていたら、水縄の移民船を拠点にして行動してもいいかなと思っていたし、まだやり残したことが沢山ありそうな気がしている。

 アイリーンのお母さんたちが人工惑星組の移民船に乗っているとの情報が先ほど届いて、会いに行こうとしたのだけどコールドスリープに入るタイミングだと聞かされて諦めていた。

(本当は太陽系外の新天地を求め天の川銀河の中心部いて座を目指して出航した2万4千5百人と一緒に行きたかったなぁ、船団も一番大きいし、クレタ島がそのまま10万人乗りの移民船だったのには驚いたよ、サハラ砂漠の移民船が10万人乗りと聞いたときにはそんなもんかと思ったけどさ、何でも1000キロメートルの直線通路があるんだって、1000キロメートル先に立っている人が見えるって地球上では絶対あり得ないものなのよね…見たかったなあ…ドナウ川の人魚姫宇宙船とバベルの塔宇宙船、マヤ遺跡移民船は名前にロマンを感じるしノアの方舟なんか神話じゃないの、造りはみんな同じって聞いてるけど、やっぱりそうよネーミングって大事だと思うわ、それにしてもいて座行きは全員がコールドスリープして4百年から2千年位まで宇宙の旅をするんだって言うんじゃ諦めるしかないよな~、皆でミイラになってたりしてって…こんな事を思ったりしたら不謹慎かしら)

「アイリーン何をボーッとしている、最近おかしくなってないか」

 九論が近寄って来て右肩に手を置く。

「あー半分寝てたかも、ごめんなさい」

「居眠り運転はどんなに広い宇宙でも、危ないからダメですよ」

 新月さんに注意された。

「うん分かってる、急加速して星にでもぶつかったら終わりだものね、ごめんなさい」

〈よだれ…落としてないでしょうね〉

 スターキッドAIがじゃれてくる。

 Aちゃん通信ロボットは昇降口にある宇宙服の内ポケットを定位置にした。

「もうー、夢見る年頃の可憐な乙女に何てことを言うのよ」

 袖口でよだれを拭きながら答える。

《枯れんな乙女にならなければいいけど》

 スターキッドAIは言葉を何も考えずに発してはいけないことを学んでいた。

 アイリーンの宇宙服に保管されている九論から貰ったスターキッドAIの通信ロボットには、ぼろ布が巻かれている。

『この子に服を繕ってあげましょう』と言ってアイリーンはしばらく裁縫していてのだけど、出来上がったのは傷だらけの指先と、カラフルな色糸でツギハギされた1枚の布だった。

 それでも悪びれることもなくその布をAIロボットのボディへ巻き付けて『どうよ、インディアンポンチョみたいで格好いいでしょ』と自慢している。

〈そろそろ通常宇宙航行へ移行したいのですけど… アイリーン行き先を決めて下さいよ。それともクリオネみたいにここら辺で漂ってますか〉

「クリオネはイヤよねぇ~、ねえAちゃん連盟艦隊が救助した避難民はどうなったのかなあ、どこの移民船にも移してないよね、総指揮官は戦艦マリンのアリオン艦長って言ってたわね、会ってみたいけど面識ないと思うのよね、それに忙しいだろうし、噛みつかれても嫌だし…会わない方がいいかもね、でも連盟艦隊が助けた人たちの安全を確認したいのだけどな…しかしどうして人類を絶滅させようとしている連盟艦隊が救助活動を行ったのかなぁー、どう思うピエロ」

 いきなり指名されてピエロはびっくっとした。

 今まさにガラスのコップに入れた泡だった飲み物、誰かに聞かれたら泡立つお茶だと言おうと思ってた飲み物を飲もうとしていたところだったので更に慌てている。

「どう、と言われましてもですね…アイリーンさんはオビス司令官に可愛がってもらってたんでしょう、アリオン艦長とオビス司令官は親友同士と聞いていますので会いに行っても危害を加えたりしないと思いますよ、それとアイリーンさんは『宇宙連盟は地球人類を絶滅させようとしている』と表現してますけど、正確には『地球上から自然破壊している人類を排除する』ですよ、だから既に宇宙に出ている地球人や避難民については安全を保証してるでしょう、最後の質問、何で連盟艦隊が救助活動を行ったかについては私の推測になりますけど、ここに来ている連盟艦隊の任務はドライアイスメテオを地球に衝突させることだけだったと思いますよ、本来であれば3個のドライアイスメテオが地球に衝突するのをルナターミナル辺りから確認すれば任務完了だった筈です。そこへアイリーンがスターキッドに乗って現れましたよね『戦わない』と宣言しているけど『邪魔しない』とは言ってませんから、連盟艦隊としては任務完遂のために何をしようとしているのか分からないアイリーンから目を離せなくなった訳で、ドライアイスメテオを地球に衝突させるまで護衛することになったのでしょう、それでも1個目と3個目は破壊され2個目だけが衝突した。この時点で任務失敗のカードを持って帰投するのがセオリーですが追加任務があったのだと思われます。例えばドライアイスメテオの威力が予想より低かった場合は戦艦の重火器攻撃によって補うとかでしょうね、だから大気圏内まで下りて追加攻撃をしなくてはいけなくなった。その時にその場にいた地球人を先に回収したのでしょう、アリオン艦長は殺戮には反対してたと聞いていますから、しかし、その場にいた地球人は救助ではなくて一方的に説明もなく回収された訳ですから捕らわれたキツネリスのように気が立ってたでしょうね」

 ピエロは手にコップを持ったまま話をしていたが、話が終わる頃にはコップは空になってた。

(ピエロはなんかいつもお酒を飲んでいる姿しか目に入らないのだけど気のせいよね)

「それって、会いに行った方がいいって言ってるのよね、回収じゃなくて無理やり連れ去られたわけよね」

 アイリーンがチラッと昴くんを見た。

「そうだね多分何の説明もないまま宇宙船に乗せられたんだから本人達は誘拐されたと思ってるかも知れないよね、僕だったら凄く怖くてたまらないと思うよ」

「そうよ、絶体直接会って説明とお詫びをしないといけないと思うのよ、そうでしょう」

 アイリーンは皆を見渡す。

「決めるのはキャプテンです。私は何か面白い事が起きないかなと期待してるだけのフリーライターですから。フリープラネットペ~パーに不定期コラム書いてるの知っているでしょう」

 ピエロがいかにも楽しそうに話している。

(まさかとも思いたくないけど…酔っぱらったりしていないわよね)

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