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4つの選択肢 1

 いつもは青く見える地球が今は真っ白にキラキラと輝いていた。

 スターキッドで地球の空を飛んでる時になぎ倒された瓦礫の中で泣き叫んでいる人を見て昴くんはこれ以上見ると精神が持たないと思った頃に宇宙へ行くことになる。

 連盟艦隊のアリオン達はまだ救助の最中だけど水縄山地の移民船が既に宇宙へ出てるから合流するとアイリーンが言い出したからだ。

「今の高度は100kmなのよね、うちが思うに宇宙の中に漂っていると実感できる最低の高さなんじゃないかしら。ねえ昴くんは地上で何もできなかった事を後悔してる?」

「当然だよ、翔兄さんと宣子さんが必死になって救助してるのを見てるだけしか出来なかったのは辛かった。地上を離れる時にしても、まだたくさんの人が残っているのが見えたよ、あの人たちは助からないんだよね」

 昴くんは何もできなかった自分に腹立たしさを感じてる。

「昴くん、私たちに出来ることは精一杯やって悔いは残ってないはずよ、後ろめたいことは何もないわ」

 新月さんが言葉を掛けるがあまり慰めになってないように思う。

「そうだな、後悔することがあれば些細なことでも何でもいいから言ってごらん」

 九論が優しく聞く。

「今は何も思い付きません。もっと後になって落ち着いた頃にいろいろ思い出すんでしょう。あの時ああすれば良かったとかいろいろです。だから今はもっと他に何か出来ることがないか考えたいんです」

 アイリーンは昴くんがゆっくりと底無し沼に沈んで行ってるような気分になった。

〈僕は多くの人を乗せることが出来ないんだ、それにアイリーンは戦わないって宣言してるし、ドライアイスメテオを2個も破壊したでしょう、これ以上僕たちに出来ることはなかったと思うよ〉

 スターキッドAIが昴くんに妥協点を提示してくる。

 アイリーンはまだ自分の上に座っている昴くんを宇宙服越しにきつく抱きしめてささやくように話す。

「昴くんもう止めようよ何も出来なかったって後悔するより、これから何をしたら一番いいのかを考えよう、いつまでも暗い顔して落ち込んでいては駄目だと思うの、だから今は無理してでも明るく振る舞いましょうよ」

 抱きしめている昴くんのこわばった身体から緊張が取れないかと願う。

「アイリーンの言う通りかも知れない、僕がここでいろいろ考えても何も好転しないのは確かだし地球で亡くなった多くの人々にはお祈りするしか出来ないのだから、だったら暗い顔していつまでもダークサイドにいてはいけないと思う、僕が笑顔で善行をして地球人は素晴らしい人種なんだって宇宙人に教えなくては何も知らずに亡くなっていった人たちに申し訳ないね」

 昴くんはまだ思い詰めたように話す。

「あまり自分を追い詰めたらいけないと思うの」

 アイリーンは出来るだけ軽く返した。

(善行が復讐に置き換わらないといいけど)

 アイリーンは少し不安になってしまう。

「キャプテンアイリーン、水縄の移民船に連絡取っても宜しいでしょうか」

 新月さんが神妙に聞いてくる。

(ああそうか、うちがキャプテンだったのだわね、重い空気に包まれていたから忘れてしまってたわ)

「新月さん連絡内容について教えて頂戴」

(そうよ、うちがしっかりしてないから昴くんが責任を感じちゃうんだわ)

「私はまだ支部員の身分を剥奪されてないでしょうから、こちらの状況を報告する義務があります。また移民船の状況を聞くことが出来ます。それらを私たちの行動予定に加味すれば動きやすくなると考えられます」

(新月さんは何で固い口調で喋っているのかしら)

「新月さんOKよ連絡してみて、でもヤバいと感じたら直ぐに中断して逃げるわよ、いいわね、そして…ガラじゃないことは止めましょう。今まで通りざっくばらんに話して皆で楽しく可笑しくやっていくわよ。昴くん、君が胸の中に持っているモヤモヤはうちにぶちまけていいからね、このスターキッドで起こっていることは全部うちが責任取るから大船に乗った気分になりなさいな。なんてったってキャプテンアイリーンなんだからね」

 昴くんがアイリーンの膝からするりと下りて正面から抱きつく。

「ありがとう、もう大丈夫だから」

「うん、これからも宜しくね」

(照れるわね、九ちゃんとAちゃんが冷やかしてくる前に離れてよね…あれ?)

 アイリーンは昴くんに抱きつかれて違和感を抱いた。

「昴くんスーちゃんはどこに行ったの?最後に見た時はヘッドフォンの形を取ったまま首に絡まってたよね」

「あれ本当だ、気付かなかったけど…身体のどこかにくっついていないかなぁ」

 昴くんがあちこち体をさわり回してる。

 アイリーンも手伝うつもりで手を伸ばす。

「うわっ!」

 悲鳴みたいな声を上げ、思わず手を引っ込める。

 昴くんの首を触ろうとした手に首の皮膚が盛り上がり絡み付くように伸びてきた。

「び、びっくりしたなぁもう…もしかしてスーちゃんなの?」

 伸びてきた皮膚の先端が笑った顔を書いた親指みたいになっていて、くねくねとお辞儀して皮膚の中に戻っていく。

「どういう事なの?昴くんは何ともないの、痛いとかない」

「僕は何ともないよ痛くも痒くもないけど、さっき首の所が少しだけ熱くなった気がしたよ、何なんだろうね」

 昴くんは自分の首を触ってみたけど、いつもと変わった感じはしない。

 アイリーンも改めて触ってみる。

「固くも何ともないね」

 ピエロも触ってきたけど感想はなかった。

「スライムが同化したんだ。地球人皆殺し計画なんかのストレスで昴くんの心と肉体が疲れてきたので同化して癒そうとしたんだろうと思うぞ。これまでもメガネやヘッドホンになって身体補助をしていたからな、かなり馴染んできたんじゃないかな」

 九論が考え込むようにして言う。

「スライムって他の人にも同化するのかなあ、愛鈴も後でやってみる?」

「うちはどうかなぁ、リボンにはなった事があったよね、それより九論に聞くけどこんな事ってよくあるの、昴くんがスーちゃんになったりしないよね」

「うわっ、愛鈴そんな怖いことを言うのはやめようよ、ちゃんと僕の意識がハッキリあるから大丈夫だよ」

 昴くんが青い顔をすると首からスライムが出てきてブンブンと首を振る仕草をした。

「スーちゃんも『そんなことはしない』って言ってるね」

「アイリーンさっきの話だが、スライムでと言う話は聞いたことがない。ただ寄生動物と同化していた人の記録が残っていてな、彼は戦士だったのだが戦闘中に右腕を完全に失ったのに…」

「もういいわ聞きたくない、まさかとは思うけどその記録ってイノマンのじゃないでしょうね」

 今度はアイリーンが青い顔をしてる。

「そうだが、よく分かったな?」

「あーあー、何も知らない聞かなかったもう終わりよ」

(何よマンガではよくある設定じゃない現実だとちょっとキモイなだけよ)

「まあ、ここにいるスライム自体が珍しく希少なものだと思うぞ、AIにも調べてもらったが記録が無い…それと同化したのなら昴くんは不死身になってたりしてな」

 九論の目が怪しく光だす。

「九論あなた顔つきが怖いわよ、イノマンの真似事なんかしないでよね」

 アイリーンが負けじと睨み返した。

「不死身って嫌だよ、死なない死ねないって事だよね、僕は百歳まで生きて老衰で安らかに死んでいくのが望みなんだからね」

 昴くんが更に青い顔になっていく。

 だけどさっきまでの様に思い詰めている感じはしない。

「歳を取ったらさ、誰か他に理想の人を見つけて引っ越してもらうようにスーちゃんに頼んでいたらいいと思うよ」

 アイリーンは無責任なことを言い出す。

「キャプテン連絡取れました。問題ありませんが大変驚く事があります。何だと思います」

 新月さんが珍しく興奮気味になっている。

「分かるわけないじゃない、何よ勿体ぶらずにさっさと言いなさいよね」

「移民船水縄の船長が昴くんのお兄さん翔さんなのですよ、今は艦橋にご不在で直接お話は出来ませんでしたけど通信士は親しくしていた支部員の弥永さんでしたから詳しく教えてもらえました」

「ええーっっ!!どこをどうしたらそうなるのよ」

 アイリーンが大声で叫んだものだから新月さんと昴くんは耳を押さえた。

「翔さんも私たちスターキッドの仲間と認められてのことらしいです。私も否定しなかったけど良かったでしょう。そういう意味で宣子さんが副船長になっていました」

(どういう意味なのよ)

 とアイリーンは思わずにはいられない。

「2人とも仲間でいいんだけど、うち達って指名手配されてるんでしょう仲間と思われてるなら拘束されてもおかしくないのに何で船長なのよ意味不明だわ」

 アイリーンは訳が分からないといった表情をして皆の顔をを見渡す。

 ピエロが先生に指された生徒の様に片手を上げる。

「アイリーンさん英雄と罪人は紙一重なんですよ、勝てば英雄負ければ罪人とは良くいうでしょう。それに最初から連盟で罪人として指名手配されていても地球支部からすれば英雄じゃなかったんですかね、何せ東域宇宙和平維持連盟ですからね、連盟と言う集合体からして皆考えていることなんかバラバラなんですよ」

 的を射た答えが帰ってきた。

「そうなのね、でも地球人のスパイってのが元々濡れ衣なのよ、そこのところをハッキリしてもらわないと納得出来ないわ」

 アイリーンが事ここに至ってはもうどうでもいいことなんじゃないかと思っているけど言わずにはいられない。

 新月さんがかしこまってアイリーンと昴くんに少しだけお話させて下さいねと言って話し出した。

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